見出し画像

嫌なことを思い出しそうな時は、太ももを叩け


嫌な記憶を打ち消す?太もも叩き効果

「嫌なことを思い出しそうになった時は、太ももを5回くらい叩くと、記憶を思い出す脳機能が下がって落ち着く」まるで都市伝説のような話を耳にした。半信半疑で試してみたところ、驚くほど効果があった。

一体なぜこのようなことが起こるのだろうか? 調べてみると、この現象にはしっかりとした心理学的根拠が存在していた。

記憶と五感の作用に関係がある

人間の記憶は、五感をはじめとする様々な感覚情報と結びついて脳に保存されている。そして、特定の記憶を思い出す際には、その記憶と関連付けられた感覚情報がトリガーとなるのだ。例えば、懐かしい音楽を聴くと、当時の情景や感情が鮮明に蘇ってくるといった経験は誰にでもあるのではないだろうか。

これは、音楽という聴覚情報が、過去の記憶を呼び覚ますトリガーとして作用したためである。逆に言えば、記憶を呼び覚ますトリガーを意図的に操作することで、特定の記憶を抑制したり、想起しにくくしたりすることが可能になるのだ。

太ももたたき

さて、ここで登場するのが「太もも叩き」である。太ももを叩くという行為は、脳に今まさに新たな触覚刺激を与えることになる。この刺激が、嫌な記憶を思い出すトリガーとして作用していた他の感覚情報よりも優位に働き、嫌な記憶の想起を回避する新しい回路になると考えられる。

さらに、太ももを叩くという行為は、一種の「自己刺激行動」と捉えることもできる。ちなみに自己刺激行動とは、不安や緊張を感じた際に、体を揺らしたり、髪を触ったりするなど、自分自身に刺激を与える行動のことである。

俗にいう「貧乏揺すり」もここに紐付けされるだろう。すこし話が逸れるが、私が学生の頃にペン回し(指で持ったペンをグルグル回す手遊び)がはやったが、授業中よりも圧倒的に試験中の方がグルグル回している生徒が多かったように覚えている。

自己刺激行動には、過剰な興奮を抑え、心を落ち着かせる効果があると言われている。太ももを叩くという行為も、同様の効果を発揮することで、嫌な記憶による精神的な動揺を軽減していると考えられる。

タッピングによる不安軽減効果

実際に、身体へのタッピングが不安軽減に効果があるという研究結果も報告されている。2012年に発表された研究では、試験前に不安を感じている学生を対象に、「タッピング療法」と呼ばれる、身体の特定の部位を軽く叩くセラピーを実施した。

その結果、タッピング療法を受けた学生は、そうでない学生に比べて、試験に対する不安感が減少したという結果が得られている。

まとめ

「太ももを叩くと嫌な記憶を思い出しにくくなる」という一見不思議な現象は、感覚情報の操作、自己刺激行動による精神安定効果といった心理学的メカニズムによって説明することができる。

日常生活で嫌な記憶に悩まされる場合は、ぜひ一度試してみてほしい。ただし、あくまで一時的な対処法であることを忘れずに、自身のメンタルヘルス状況に応じて専門家の支援を受けるようにしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?