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【サイケ映画の系譜③】【新品未開封】「ラスベガスをやっつけろ('98米)」

「サイケデリック映画の系譜」第3弾はテリー・ギリアム「ラスベガスをやっつけろ!」であります。ゴンゾー(ならず者・常軌を逸した)ジャーナリストと呼ばれたノンフィクション作家のハンター・S・トンプソンが書いたドラッグ小説を原作に、1971年に取材と称して赴いたラスベガスで自分をモデルにした作家が送るドラッグ三昧の日々を、テリー・ギリアムが「リアルに」映画化しました。

主人公の作家を演じるのはジョニー・デップ。話の筋は…というより、主人公が観ている「幻覚」をいかにリアルに再現するかがこの映画の目的です。

幻覚描写にはCGが使われていますが、もしかすると、これはCGの最も得意とする描写かもしれません。この流れは近年話題になったホラー「ミッドサマー」の異常にリアルな幻覚シーンに通じるものがあります。「ミッドサマー」の主題はそこには無いので、今回のサイケ映画の系譜からは外しました。

こういうリアルな幻覚シーンが作れるのも、CGの発達以上に重要なのはテリー・ギリアムがまさに60年代のヒッピーカルチャーの洗礼を受けた世代だからだと思います。実際に体験もしてるでしょう。あの時代、世の中の価値観に疑問を抱いた若者のたしなみみたいなものでしたから。

「白昼の幻想」や「アルタード・ステーツ」の時代にCGがあったら、多分「ラスベガスをやっつけろ!」や「ミッドサマー」みたいな幻覚描写になったはずです。

ところで私はドラッグを肯定しているのではありません。肯定するも否定するも、かつてそうしたものを体験した人間が大量に出た時代があったことは事実で、それは「文化」として受け入れられたことも事実です。それは後世に多大な影響を及ぼしています。

自分は関係ないと思われるなら、アップル創業者のスティーブ・ジョブズはアップルを創業する前はカリフォルニアのヒッピーだったという事実を考えた方がいいです。彼が考案して製品化したパーソナルコンピューターや、iPhoneなどは60年代のヒッピー文化を抜きにして語ることはできません。LS●の教祖とまで言われたティモシー・リアリーは、晩年「ドラッグより凄いものがある」と言ってコンピューターにのめり込んでいました。ジョブズのアップルは、リアリーの影響下に起業したと言えるのです。

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