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私の人生を変えたローマ皇帝との出会いを語らせて

きっと多くの人に、“人生を変える出会い”があるだろう。

否、私の知る限り真実はこうだ。

“人生を変えるのは、人との出会いしかない”

ある人にとってそれは友達や恋人であり、学校の先生や会社の上司であり、はたまた芸能人かもしれない。

ふと人生を振り返ってみた時に「今の自分があるのは◯◯さんと出会ったおかげだなァ」と思い浮かぶ存在、それが“人生を変える出会い”だったのだ。

当然ながらそこに良いも悪いもなく、他人がとやかく言う権利もないだろう。たとえそれが、2000年前に生きていたローマ皇帝だったとしても。

さて、今から私は“人生を変えたローマ皇帝との出会い”について、徒然なるままに記していこうと思っている。

私は38歳(2021年現在)なのだが、その出会いは22年前の16歳(高校2年生)まで遡る。そして22年前の出会いを語るためには、さらに昔の小学生時代から始める必要がある。

映画やドラマが感動的なのは、“山場”シーンの前に“フリ”のシーンがあるからであり、その“山場”の出来事自体というよりも“フリ”からのギャップがとても重要なのだ。

そんな訳で、私という人生ドラマの“山場”であるローマ皇帝との出会い以前の“フリ”にもお付き合い願おう。真面目な性格ゆえ、前提が長くなってしまったことは全力でお詫びしたい。

小学校時代〜哲学少女だった私〜

小学生の私は、一言で言うと「哲学少女」だった。家では「なんで人は掃除をするの?」学校では「なんで毎日みんな学校に来て、同じ方向を向いて勉強するの?」など、大人たちを困らせていたらしい。

こんな作文を書いたりもした。

今作文で何を書こうかと考えているのは脳みそだ。でも人ごとのように「考えているのは脳みそだ」と考えているから、自分のことを脳みそだと自覚していない。だから脳みそってバカなんだと思う。こうして自分のことを「脳みそはバカだ」と言っていることも分かっていないなんて、脳みそは本当にバカだ。

我ながら、なかなかユニークな子だと思う。先生からの「◯◯ちゃんは、とっても難しいことを考えているんですね!」という苦肉の赤ペンコメントを鮮明に覚えている。

誰しもが「生きてるって何だろう」「宇宙ってどれくらい広いんだろう」などと考えたことが少なからずあると思う。それが私の場合、一人っ子&鍵っ子という環境も相まって、四六時中“この世の真理”みたいなことを考えながら生きていた。

いわゆる常識や多数派の意見とかを気にしたことがなく、日々さまざまな疑問や矛盾を感じるとともに「これは意味がないんじゃないか」「もっとこうだったら良いんじゃないか」と思うことも多かったし、それを人にぶつけたりもしていた。

しかし学年が上がるにつれて、先生も同級生もそんな私を「変な子」という目で見るようになった。さすがの私も空気を察知して、自分の考えを口に出さないようになっていった。

中学校時代〜魂が抜けたような暗黒期〜

そして中学生になってからも、基本的に「こう言ったら変だと思われるだろう」ということは言わない日々を過ごすことになる。

一度、生徒に人気の先生に「この人なら分かってくれるかもしれない」と淡い期待を抱いて授業中に発言してみたことがある。しかし“ウケ狙い”と一蹴されて、恥ずかしいやら悲しいやらでさらに殻に閉じこもってしまった。その先生とは二度と口をきかなくなった。

みんなが好きな流行り物に興味が持てなくて、でも変だと思われたくないから必死にチェックして話に混ざったり。恋愛話も正直どうでも良かったけど、みんなとキャーキャー盛り上がってみたり。

そんなこんなしていると、自分の意思が見えなくなる。勉強も部活も遊びも、何もやる気が起きない。気付けばクラス替えの度にラクな部活に変え、夕方のNHK教育番組が唯一の楽しみという無気力人間になっていた。

表向きは卒業文集で「クラスの面白い人1位」になるくらい明るかった。でも心の中はいつも曇り空のような状態で、何も思考していなかったと思う。それゆえ、悲しいかな中学時代の記憶がほとんどない。

高校時代〜いよいよ訪れる運命の出会い〜

そして特にこだわりがなく「家から近くて校舎がキレイ」というだけの理由で選んだ公立高校へ進学した。そこで“その人”と運命の出会いを果たすことになる訳だが…もちろん当時の私はそんな事1ミリも想像していない。

その名はアウグストゥス。古代ローマ帝国の初代皇帝である。

端正な顔立ちの色男だが、私の運命ポイントはそこではない。(もちろんイケメンはいつの時代も尊い。)

私は彼の全てを知るために史学科進学を決めたストーカー女なので、ここでその魅力を書き始めるとキリがない。それは今後少しずつ、じっくり書いていきたいと思う。

今回お伝えしたいのは、16歳のJKにとって彼の何が“人生を変える”ほどの衝撃だったのかということである。

大前提、古代ローマに限らず今も昔も基本的には「出る杭は打たれる」のが世の常だ。

アウグストゥス以前、ローマには多くのヒーロー的偉人たちが登場した。しかし、ことごとく変化を嫌う“保守派”の元老院(国会議員のようなもの)によって邪魔をされたり暗殺されたりする。そしてたいてい"改革"の道半ばでこの世を去ってしまう。

古代ローマで言うと、一番有名なのが地中海世界の統一を夢見たユリウス・カエサル(英語名ジュリアス・シーザー)だが、彼も例にもれず「独裁者になりそうだー!」とあっさり暗殺された。そのカリスマ性のあるキャラクター&混沌とした時代に生まれたことで、圧倒的英雄として現代まで名前が残っている。イメージとしては、日本でいう坂本龍馬とポジションが近しいように思う。

とにもかくにも熱い志で表舞台に出ると保守派に潰され、かといって誰かが手を挙げて舵を取らないと何も進まない。というニッチもサッチもいかない状況が長く続いたのが、ローマ帝国の前身“共和政ローマ”だった。(「あれ、何かうちの会社みたい…」って思った人〜?)

そんな中で義父カエサルの意思を継ぎ、保守派も納得させた上でさまざまな改革を実行して、地中海世界初の“世界帝国”と言われるローマ帝国を完成させたのが初代皇帝アウグストゥスなのである。

さて、16歳のJKまっちーがこのストーリーの何に胸を熱くさせたかご想像頂けるだろうか。第一に、表に出て意見することで周りから潰されてきた歴代の偉人たちと(おこがましくも)自分を重ねたのである。

その一方で、一般的には偉人たちほど名前が知られていない地味な存在でありながら、彼らとは真逆とも言えるスタイルで念願の“新しいローマ”を実現させたアウグストゥス。
そんなアウグストゥスに強い興味と憧れを抱き、同時に自分の未来に希望を見出したのだ。

一体アウグストゥスはどうやって、カエサルさえ成し得なかった偉業を達成できたんだろうか?ただ自分の考えを口に出せば良いって訳じゃないんだ。私も自分の望む世界を実現するために、彼のことをもっと知りたい!!

こうしてアウグストゥスのことが気になって仕方がなくなってしまい、恩師である世界史の先生に勧められて史学科への進学を決意したのである。

そして今の私になった

しばらく封印していた知的好奇心の泉が湧き出し、明確な目標を見つけた私の世界はすっかりピーカンの青空になっていた。(死語かな?)

それ以降の私は、それまでのぼーっとした生き方とは違い、アウグストゥスのごとく全てを「目的からの逆算」で計画的に行動していた。中の下だった成績は学年トップになり、全国出場クラスの吹奏楽部で3年間朝から晩まで意欲的に活動した。もはや別人だった。

そうして充実した日々を過ごすうちに、何と「学校の先生になろう」なんてことも考えるようになった。私にとって学校の先生は心を開くことができなかった、ぶっちゃけ良い思い出がない存在である。

でも、だからこそ、「同じように自分が受け入れられないと感じる子が居るかもしれない」「私みたいな先生が居て、一人でも救われる子が居たら良いんじゃないか」と考えるようになったのだ。かつての自分からは想像できないほど、確固たる意志を持つようになっていた。

大学卒業後は、一度会社員になって、学校教員になって、また会社員に戻って…と、それなりに色々と経験した。その全てに意志があり、目的があったと言える。その辺りの話も機会があれば記録していきたいと思う。

いずれにしても、今の私が持つ「意志の強さ」や「目的からの逆算思考」はやはり高校時代アウグストゥスに興味を持ったことがスタート地点だったと言える。

時空を超えて新たな生き方を見せてくれたアウグストゥスとの出会いは、紛れもなく私にとって“人生を変える出会い”なのである。

【妄想】もしも彼と話せるとしたら・・・

私の密かな夢の一つに「タイムマシンが出来たら、古代ローマに飛んでアウグストゥスと話す」というものがある。

もし叶ったとしたら、周りの人たちに対する彼の本音が聞いてみたい!義父カエサル、宿敵アントニウス、元老院、妻ユリア、2代目皇帝ティベリウス、ローマ市民について、ぶっちゃけどう思ってるのかなーと。

なぜなら彼は、決して本音を漏らすことなく"初代ローマ皇帝"という大役に徹したままこの世を去ったのだから…。

「拍手を送ってくれ、人生という喜劇を演じ終えた私に。」
〜アウグストゥスが最期の日に言ったとされる言葉〜

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