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組織開発、はじめの一歩 「教科書」を定めて学ぼう(3)

組織開発とは何か?
組織開発は「風呂敷」である

教科書は「組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす」(ダイヤモンド社、2018年、中原 淳×中村 和彦共著)です。

以前もあった組織開発ブーム

人事の業界では、組織開発が一大ブームとなっています。多文化共生のアメリカでは当たり前の組織開発、日本は大きく遅れて取り組み始めた感があります。
ところが、1960年代から70年代に掛けて日本でも空前のブームがあったそうで、実は今は二度目のブームとのこと。

そうなると、なぜブームは去ったのか?
組織開発が日本に定着しなかったのか?
が気になるところです。

組織開発の定義は多種多様

先ずは代表的な組織開発の定義を紹介します。

「(組織開発とは)計画的で、組織全体を対象にした、トップによって管理された、組織の効果性と健全さの向上のための努力であり、行動科学の知識を用いて組織プロセスに計画的に介入することで実現される」(Beckhard, 1969)

「(組織開発とは)組織の問題解決過程や、再生過程を改善するための継続的な努力である。その特徴は、とりわけ行動科学のセオリーやテクノロジーの助けを借りて、組織文化を効果的かつ協働的なものにしていくことを通して、目的を達成することである」(French & Bell, 1973)

さすがに機能的には網羅されているように感じますが、抽象的でつかみ所がないです。

諸説ありますが、「27通りの組織開発の定義の中に、60個も変数が存在している状況」(Egan 2002)とも言われています。

初学者は組織開発の定義でつまづく

Worley & Feyerherm(2003)は、数多くの、組織開発の定義の「共通項」みたいなものを4点ほど抽出しました。
 
1.計画的な変革であるということ。
2.行動科学の知識を用いること。
3.組織の中で起こるプロセスを対象にすること。
4.組織が適応し、革新する力を高めること。

箇条書きになり、項目が絞られましたので、多少、分かりやすくなった気がしますが、受け取り方によって様々な組織開発が存在しそうです。

組織開発のイメージの相違によって、教える側も学ぶ側も意思疎通が難しく、初学者がつまずく一因になっているようです。

組織開発の現場では、いつも「定義」を超えてしまうので、実践者にとっては、定義は窮屈なものに感じられ、定義をすっ飛ばしてしまうことになりがちです。

定義を避けて通ると起こるカタカナ専門用語の跋扈

定義をすっ飛ばすと何が起こるのか?
組織開発の手法に着目することになり、それを習って道具のように使いこなそうと考えます。
アメリカで開発された手法が多いですから、サーベイ・フィードバック、チーム・ビルディング、Tグループ、ホールシステム・アプローチ、アプリシエイティブ・インクアイアリー、フューチャーサーチなどなどのカタカナ専門用語が氾濫することになります。
ますます混乱してきます。
 
手法に走ったばかりに、本質を見失い、流行廃りのあるビジネス手法として、第一次ブームは去ってしまったのです。
 

エイッと思い切って「組織開発は風呂敷」と括ってみる

カタカタ専門用語に溺れることなく前に進むには、何とか「組織開発とは何か?」持論を作り上げる必要があります。

そこで、教科書の著者は「組織開発とは“風呂敷”のようなものである」と一旦、定義することをすすめておられます。以下、引用です。

「本章における、この問いに関する答えは、「組織開発とは“風呂敷”のようなものである」というものです。専門家の方は、怒らずに、もう少しだけ聞いてください。まず、「風呂敷」というのは、花瓶でも、本でも、着物でも、どんなものでも、その布の範囲の許す限り包むことができます。組織開発という言葉も、まさに同じです。組織開発とは、その内部に「類似性の高い物事」を、自由自在に包み込んでしまう「風呂敷」のような言葉なのです。風呂敷は、多くのものをくるむことができますが、「輪郭」や「境界」は曖昧です。中にくるみ込む内容によって、概念の輪郭は、ある程度、自在に形を変えます。組織開発という言葉も、そういう「風呂敷」のようなものだとお考えください。風呂敷の布が破れない範囲において、自由に形を変えつつ、多くのものを包摂する。組織開発という言葉は、比較的に自由に、その内部に存在する多様な概念を包摂してしまうのです。」

さて、私も大風呂敷を広げるつもりで読み継いで行きたいと思います。