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人事労務の課題、何から手を付けますか?

見えない課題を“氷山モデル”であぶり出す

社会保険労務士として長く経営相談をしていると、同じ過ちを繰り返してきた企業が多いことが分かります。
 
 これについては、以前の記事「人事課題への対応はオーダーメイド。回答はひとつではない!」でも述べましたが、その場しのぎの対策を講じて当面の危機を逃れたら、また痛みを忘れて同じことを繰り返す、という負のループに陥っているのです。
 
 「なぜうちの会社は離職率が高いのか?」「どうしてスタッフのスキルが伸びないのか」「お金をかけて人事評価制度を入れたのにうまくいかない」などといった悩みが長く解消されないのであれば、問題と対策に走る前に本当の原因を探すことです。
 
 課題解決への糸口の1つとして、「氷山モデル」というものがあります。
 
 会社が前述のような悩みを抱えている場合、これら表面化した問題に対し、水面下にはもっと様々な原因が存在していることが多いものです。いわゆる「氷山の一角」でその水面下に巨大な質量が隠されているように、職場の問題も見えない部分の方がより大きく複雑です。
 
 見える問題としては、ハラスメントなど職場秩序の乱れや、労働時間・休暇取得に関する問題、待遇面の不満などの現象として現れますが、見えない問題は、今までに会社内で繰り返し起こったこと、その流れをつくりだしている暗黙の了解、隠された価値観など、これらが絡み合った末に職場の雰囲気に悪影響を与えたり、商品力を低下させたりします。解決するには、腰を据えて見えない課題に向き合い、問題を整理し直さなくてはなりません。

負のループを断ち切るために!

問題を整理する際には、【現在→過去→未来→そして現在】の流れで考えることが大切です。大まかに説明すると、問題を抱えた現在の状況を直視する→その発端となったところまで過去をさかのぼり原因を探る→会社がどういう未来を描いているのかを明らかにする→現在に立ち返って、その未来に向かっていくための対策を練る、という流れです。
 
 これに対し、同じ過ちを繰り返している会社は、問題→対策→一時的な効果→問題…というループを繰り返していると言えます。
 
 企業からのヒアリングで、私たちは、過去の問題はどのようなものか、類似のケースはあったか、初めて露呈した問題は何か、といったことを聞きながら、ノウハウに基づいたアドバイスをします。ただし、アドバイスに沿った対策を打ったからといって、会社の状態が瞬時に変わるわけではありません。
 身体の不調に例えるなら、生活習慣を改めて、バランスの取れた食事をとり続けることで健康体に戻していくように、コツコツと地道な作業を続けていくことになります。ただし、その作業の末に企業の体質を変えることができれば、もう同じ過ちを繰り返すことはなくなるでしょう。