粗末な暮らし12
中に入っていたのは、一冊のノートと小さなペンライトだけだった。ノートの表紙には『日記』と書かれているだけで、表紙の隅っこに小さく日付が書かれているだけだった。入江田はページを開いていくと、そこにはこんな事が書かれていた。
九月八日(木)
ここに来て三日目の夜になる。今日は妙なことがあった。俺が住んでいる部屋に、見知らぬ女が現れたのだ。そいつは白いTシャツを着ていて、顔は見えなかった。ただ長いブロンドの髪だけが印象的だった。彼女は、部屋の真ん中に立っていて「お前は誰だ? 」と俺は彼女に訊いた。すると、彼女は何も言わずに出て行った。
九月十日(金)
朝起きると、またあの女がいた。今度は、部屋の入り口に立っていた。彼女の体は透けていて、向こう側の壁が見えるほどだった。「お前は誰なんだ」俺は再びそう言った。しかし、返事はなかった。
「おい。無視するんじゃねえよ」そう言って、俺は彼女を掴もうとしたが、すり抜けてしまった。彼女は幽霊のような存在なのかもしれない。
九月十一日(土)
深夜に目が覚めると、誰かがドアの前に立っている気配がした。恐ろしくなったので、ベッドの中で震えていると、しばらくして、足音が遠ざかっていくのが聞こえた。しかし、それから数時間後、再びあの女の気配を感じた。今回は他の人間の話し声も聞こえてきた。
「そこが今回の双児宮計画の男の部屋だよ。アンバー」若い男の声でそう言うと、女の声がそれに答えた。「そうみたいね」と。
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一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!