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音楽的プロ意識私観

【3170文字】

20代半ば

の頃
音楽が仕事になる直前の頃です
先輩ミュージシャンに
「プロ意識をもっと持て」とザックリ言われ
僕はそのことについて
今もなお考えを更新し続けてきています
プロとは何ぞやと

当時

先ず単純に思ったのが
お金です
1円でも頂いたなら
それはもうプロとして
手抜きなくキッチリやらねばならない
と言うような分かりやすい考え方です
こういうシンプルな考え方は
理解もしやすいせいか
プロ意識の指標としている人も
結構多いと思います
実はこの考え方は
アマチュアの人に多いような気がします

ところが

実際にプロになってみると
お金が発生しない仕事が
結構あることに気づきます
それはコンペだったり
実質のオーディションだったり
駆け出しのころは特に
名指しの仕事なんてありませんから
チャンスは自ら引き寄せなければ
仕事は勝手にやって来ませんし
チャンスは貯蓄できませんからね
お金になろうがなるまいが
全身全霊で持ち得る力を尽くします
それはちろんプロの作業としてです
無料でも力の限りできるというのは
プロ意識が成せる技のひとつでしょう

全身全霊

と言いましたが
実はここにも落とし穴があります
僕はそういうタイプではなかったのですが
体育会系の人や若い人に多い
熱いタイプがやりがちな事です
今できる事を力の限り無我夢中に
完全燃焼でやりきってしまうという
すべてをこの一点突破で特攻しちゃう人
アマチュアなら別にいいと思います
カラオケで歌うとかもむしろ
そうやった方が楽しいかも知れません
しかしプロの現場ではどうでしょうね
「全身全霊」と紙一重なのが「自己満足」です
一人でやった気になるというやつですね
自己満足が悪いのではないのです
自己満足で終わるのが良くないのです
本当の意味で自分を満足させるのは
簡単な様でなかなか難しい上に
他己をも満足させねばならないのです
自己満足だけに終始していると
これはプロの現場ではなかなかな勢いで
周りをシラけさせてしまいます
道徳から外れてるとか犯罪とか
そういう事ではないので
特に誰からも注意されないので
本人は気付きにくいのかもしれません
下手すると「まっすぐな自分イケてる!」
くらい思ってるかもしれません
でも正直言ってそういうのは
仕事の邪魔です
売れてるアーティストさんなら
そういうのがあっても
まぁ仕方ないのでしょうけど
着実に進めていく仕事の現場では
個人の自己満足は不要です
熱い気持ちは秘めてこそですから
冷静で客観的な仕事が出来るといいですね

僕の話

仕事がそこそこ来るようになってくると
「プロ意識」より「自分らしさ」とかを
追求したくなる時期に突入します
「これが俺のスタイルだぜ」と
己の個性のようなものを振りかざすのですね
プロ意識は自分なりに持っていて
更にその奥の自分らしさとか個性に着手
な~んて甘っちょろい事を考えるわけです
当時はまだ聴く量も技術も甘いくせに
これが好きだと思っている方向が
自分の個性だとも思い込んでいたし
他人がほめてくれた部分を
これが自分らしさなんだ
と安易に理解しようとしてました

ところが

これは思った以上に恐ろしい事だと
後日気付いて震えました
実は「自分らしさ」のようなものを
本人が勝手に特定してしまうとその時点で
自ら音楽の幅を極端に狭めるという
実に悲しい状態になっちゃうのです
親しみのないジャンルや技術への
新たなチャレンジをしなくても構わない
と判断してしまうのですから
自ら成長を止めてしまうという事です
恐ろしい事だと思いませんか?
それに実は仕事を依頼する側に
「これしかしない人」または
「これしかできない人」と断定されてしまうと
とても使いずらい人になってしまい
依頼候補にも上がりにくくなる訳です
これはもう職を失いかねない事態です
そもそも
自分らしさって何でしょうね
僕は正直言って未だに分かりません
自分らしさや個性というのは
本人が確定するものじゃないのかなと・・
僕の音楽を聴いてくれた時に
本人以外がそれぞれ何か思ってくれれば
これほど有難い事はないだろう
今はそう思ようにしてます

「プロ意識」

に戻ります
いい音楽をやっていさえすれば
少々のルール違反をしてもいいし
社会人として外れていても
ちょっと破天荒な方がいい
なんてまさか誰も思っていないでしょう
そりゃ例えば
1曲書けば必ず1億円ほど動かせる
という大先生やドル箱アーティストなら
少々の事なら周りが何とか
辻褄を合わせてくれるでしょうけど
ほぼ無名のどこにでもいるミュージシャンは
少なくても常識人であり
出来れば「いいヤツ」であろうとするべきです
かと言っていいヤツを演じてもいけません
人として社会人として
決して調子ブッこかず
相手の気持ちをしっかり汲んで
身軽且つご機嫌よくしている必要があります
仕事は依頼されなければありませんから
「どうせならアイツに頼もう」
となる人間の方がいいのです
音楽とは関係ないようですが
音楽する機会を増やす方法でもあるのです
そして相乗的にいいヤツの周りには
いいミュージシャンもたくさん集まります
いいミュージシャンはいい音を出します
影響し合い必然自分の音も良くなるのです
その為に
とにかくいいヤツになって下さい

プロ意識を持っていないと

なかなか出来ない事があります
それは「勉強」です
世の中には知らない音楽や技術が
それこそ星の数ほどあります
例えばジャンルに分類されている
ジャズやプログレやフォルクローレ
タンゴ ワルツ シャンソン デキシー‥
全て数え上げるのは不可能ですが
それらの勉強
というより
それらの良さを感じられる様に
せめてなりたいものです
それらには必ず良いと思って作った人と
これが良いのだと思うリスナーがいます
出来ればその感覚を
少しでも身に付けられるといいですね
作曲やアレンジ 演奏や歌唱でも
知らない音楽をほんの少しだけ
深掘りして分析してみると
そこには必ず発見があるんですね
感覚的にそぐわないと言っていたら
一生そういった発見は出来ません
正直言ってそれらの発見は
「どうなってるのか分からない」とか
「真似できるとは思えない」という
残念な発見がほとんどです
ところがそれでも続けていると
バババッとそれらの点がつながる瞬間があり
このつながった時の気持ち良さったら
最高なんですよねー
いやそれが言いたいのではなく
このようにして音楽的理解が深まることで
次の作品や演奏に大きく関わって来るのです
だって知った事はやってみたくなるでしょ
未知のジャンルをとにかくたくさん聴くのは
知らず知らず勉強になるんです
俺はロックだから関係ねー!じゃなく
ある程度の楽典や楽譜実技
もし可能ならコードスケール理論なども
暇を見て勉強できれば最高です
思わぬ自分の才能に気付く事も
案外あると思いますよ
勿論アマチュアはこんな事する必要はありません
プロ意識が必要な人に限ってです

とは言え

音楽のジャンルにしても理論にしても
技術的チップスを身につけるにしても
全てを理解習得することは不可能です
それだけ音楽という世界は深淵なのです
鼻歌から荘厳なフルオーケストラ
はたまたデスメタルやモダンジャズ
それらを聞く人や場所 シチュエーション
作品を作ってそのお手伝いをする人
または自分自身が音楽で目立つにしても
音楽とはいろんな付き合い方が出来ます
しかしもし「プロ意識」を持って
音楽と対峙したいと思っているのなら
多分生活から人生哲学まで
全部を変える勢いが必要かもしれません
最初からそう思って身構える必要もないですが
舐めていてはその時点で終わりです

プロ意識を知る

または植え付ける前に
分かりやすく出来る第1歩があります
それはアマチュアとの決別です
そのために先ずアマチュアとは何かを
考えてみてください
そんな事だけでも
プロ意識の一端が見えてくるものです
「プロ意識」と言っても
全世界が納得する決定稿など恐らくなく
その時の己の立場や時代でも
大きく変容していくもののように思えます
とにかく凝り固まらずに柔軟に構えられると
音楽も人としても成長できるのかなと
今現在では思っています
かく言う僕のこの考えも
また少しずつ変わるでしょうけどね

何度も言いますが

アマチュアの人に
こうしなきゃダメだと
言っているのではありません
むしろ逆です
プロでもないのに
プロ意識なんて持つ必要は全くありません
せっかくのアマチュアリズムが
ホント台無しになりますからね
アマチュアの人はぜひ
これらのことを知っているとしても
考えないでいて欲しいです
アマチュアにはアマチュアの
良いところがたーくさんありますから
でもそれはまたの機会に
ちなみに
僕は現在アマチュアです