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「プロデュースの女神(ミューズ)北条 舞」

 2019-20シーズンの「世界一裕福なリーグ」イングランド🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿サッカー界は、コロナ旋風に巻き込まれたが、新型コロナウイルスと闘いつつ今季を終え、来季につなげることができた。だが、その一方で下部リーグやアマチュア、子供達のサッカーは新型コロナのあおりをもろに受けてクラブが経営難になり、立ち行かなくなる懸念が出ている。一時は中止も噂されたプレミアリーグは6月の再開以降、無観客や徹底した検査態勢などで混乱は見られなかった。来季の開幕は9月12日に決定し、10月頃には観客を一部戻す案まで協議されるようになったのだ。
 だが、イングランド全体を見渡すと明るい話は少ない。プレミアと2部に当たるチャンピオンシップを除いて、下部リーグは今季が打ち切られてしまった。イングランドは4部までがプロで、その裾野の広さが特徴だったが、多くのチームが財政難に陥り、2012年~13年に宮市亮(現ザンクトパウリ)が所属した2部ウィガンは、遂に破産手続きを申請したのだ。

 そんな中、世界中のプロサッカークラブの収益を順位づけした「デロイト・フットボール・マネー・リーグ」の2018・19年シーズン版が発表され、デロイトトーマツによればトップ20のクラブの合計収益は106億米ドル(約1.1兆円)で史上最高額となり、初めて100億米ドルの大台を突破したというのだ。とりわけ、稼ぎ頭は上位5チームで、それらの合計収益は、10~20位のチームの収益を上回ってしまっているのだ。
 プロサッカークラブの主な収益源には、チケット販売やスポンサーからの収入、ライセンス供与によるグッズ販売や広告収入などがあるが、中でも大きいのが放映権料で、収益の平均約44%を占めている。テレビを通じて、プロサッカーが、世界の津々浦々で気軽に観戦できるようになったことが大きい。 とりわけ、FIFA(国際サッカー連盟)の「ワールドカップ」や「オリンピック」は、世界中に放映されるため、プロサッカークラブの収益アップに貢献していると言える。海外のハイレベルのゲームを目の当たりにしたサッカーファンは、海外の選手やチームにも興味を持つようになり、世界トップ級の選手やチームは、グローバルな人気を集めるわけだ。
 収益ランキング上位のクラブには、ワールドカップやオリンピックでも活躍するスター選手が多数所属しているため、彼らの人気が、そのまま所属チームの人気にもつながることになり、欧州のチームにとっては、UEFA(欧州サッカー連盟)の「チャンピオンズリーグ」に進出できるか否かも収益に大きく左右する。
 なお、世界のスポーツ競技人口でもサッカーは指折りであり、ボールがあればいつでもどこでも練習できるし、ちょっとしたスペースがあればゲームができることは、サッカーが世界的に普及している理由の1つと言えるだろう。また、そうした愛好者の裾野の広さが、グローバルなサッカー人気を支えているのだが、FIFAによれば世界人口の過半数である約35億7200万人が、2018年のワールドカップをテレビやインターネット配信などで視聴したという。
 そうなると、サッカー人気を支えるのは離れた場所に居るファン達とも言えるわけだ。その未開拓市場、ネット配信等、積極的コミュニティを拡大することで、サポーターを得ようとするものである。そんな新興勢力が来期、念願のプレミア参戦が決定したLondon United FC だ。前会長ラドワード・グリフが創設した、このクラブは正直、サッカーオタクである会長の趣味的クラブでしかなかった。それが、前会長のボディーガードであった原澤 徹氏が後任を引き継ぐと、企業M&Aを繰り返し世界有数のグループ企業へと成長を遂げることになる。特に、ケイト・ヒューイック社長率いるグリフ製薬会社は、その売上を世界1位へと押上げグループの屋台骨となり、今回のコロナ下においてもワクチン開発で群を抜いている始末だ。そんなマンモス企業が運営しているだけに、高額買収を繰り返すかと思いきや、そうではない。スタジアム🏟周辺の整備事業を行い、地域活性化に尽力し有数の居心地の良い都市、ロンドンを形成しているのだ。得意の建設業、不動産業、交通体制を確立し、自治体と運営協力をしている。そんな地盤がしっかりとしたメーカーに、女傑がいた。London United FC 広報部広報課課長 名誉SD 北条 舞 氏である。現在、2019-20シーズンを終え、圧倒的強さで昇格直後に優勝を決めているのだが、その起点となったエーリッヒ・ラルフマン監督、コーチ首脳陣、キャプテン・ニッキー(ニック・マクダウェル)、サブキャプテン・ジャイアン(アイアン・エルゲラ)、エース・リュウ(坂上 龍樹)、ナンバーテン・レオ(レオナルド・エルバ)、ナンバーナイン・エウセビオ(エウセビオ・デ・マルセリス)、ディフェンスリーダー・D.D.(デニス・ディアーク)、アイスマン(レオン・ロドウェル)、スター(パク・ホシ)など、このあだ名を纏った一戦級のフロント・選手達は、彼女がSD時に扱い獲得してきた者達だ。その後、広報部に異動され、正直、メディアとしては理解に苦しんだ人事異動であった。だが、その懸念は見事に吹き飛んだ。彼女が着任すると、あだ名を纏ったLondon United FC選手達による企業CMが世界各国のTV、YouTube、SNSを耳に残る音楽・ダンスと共に賑わせた。
 更に、今期お披露目されたアリシア・グリフスタジアムがサポーターを歓喜させた。その最大の特長は、観客席からピッチまでの距離の近さと言える。陸上競技場を兼ねたスタジアムの場合は通常観客席からは約35メートル離れてしまうのが定説であったが、一方でこのスタジアムはサッカー専用スタジアムということもあり、観客席からピッチまでの距離は最短で7メートルしかない。
観客席は大きく上層エリアと下層エリアの2つに分かれているが、下層エリアであれば、試合中に選手がボールを蹴る音や選手同士の掛け声も聞こえてくる程だ。サポーターの応援も、陸上競技場を兼ねたスタジアムと比べていっそう響き渡るため、臨場感や一体感が増すことになる。
 加えてトイレの数を通常の1.5倍設置した。
「観客席からピッチまでの距離を縮めて臨場感を演出するのはもちろん重要ですが、トイレの数が少なかったり、汚かったりするとまた来たいとは思ってもらえません。野球と違って試合がはじまるとハーフタイムや試合が終了するまではなかなかトイレにも行きづらいため、トイレの利用はハーフタイムに集中します。そのため、トイレの数を確保することもお客さまの満足度を向上させるためには必要でした。」
と、北条名誉SDは話す。だが、驚愕したのはこれらの事業内容だけではない。イングランド国内のみならず、全世界が注目し始めたプレミアリーグ初昇格の最中、何とグリフ・グループの原澤会長は、破産手続き直前のクラブチームをホワイトナイトとして救済したのだ。それは、PEUリーグ初昇格をプレーオフにて果たしたLengerblitzである。そして、この古豪のSDとして北条名誉SDが任命されたのだ。この目まぐるしい展開は何を意味しているのか?正直、全く読めない展開だ。
我々は、この「プロデュースの女神(ミューズ)」と呼ばれる女性、北条 舞に引き続き注目しようではないか。

2020.8.3.
soj.Times ロンドン支局特派員 ジェリド・メサ

"このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。"

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