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#にじGTA は何故こんなにも面白かったのか

6/15-24に開催された、にじさんじGTAサーバーがとても面白かった。
7月に入ってからも切り抜き鑑賞配信が連日盛況なほど、多くの視聴者とライバーの中で今も熱が冷めやらぬ巨大コンテンツだ。

何がこんなにも面白かったかという理由を考えると、その大きなウェートを占めるのは当然
「企画運営、参加者、サポートの全員が頑張ったから」や「面白い人たちがたくさん集まったから」という話になるが、
これらは他の多くの企画で言えることであるため、本記事では深く言及しない。

今回は個々の配信上のエピソードではなく企画自体の構造に目を向け、面白い状況がこんなにたくさん生まれた土台について考えていきたい。
「GTA5 Online (FiveM)」というゲームと「にじ鯖」という企画が合わさり生まれたシナジーについて、
他のにじ鯖企画と比較したGTAの特徴と、他のGTA鯖と比較したにじ鯖の特徴という、二つの比較軸でそれぞれ分析する。

※筆者の視聴歴について。
にじ鯖については2020年のマイクラ夏祭りやARK Extinction編、GTA鯖についてはVCR1回目2回目はリアルタイムで視聴している。
ARKのIsland編やストグラについてはあまり詳しくないためエアプや事実誤認があればご海容願いたい。

GTAの魅力

にじ鯖企画はこれまでマイクラやARKやRUSTなど複数あったが、今回のGTAには他のゲームに無い特徴があり、にじさんじという集団の魅力を最大限に引き出していた。

・プレイヤー同士が(半強制的に)出会うシステム

このゲームは時間経過で腹が減り、腹が減れば餓死する。
死んだ場合は救急隊を呼ばなければ復活できない。
自分の車にダメージが入るとメカニックに修理してもらう必要がある。
犯罪を犯せば警察官が飛んでくる。
一事が万事この調子で、何か行動するたびにプレイヤー同士が出会うことになる。
こうして自然に参加者同士の会話が生まれる。

また、ギャングは大型犯罪を成功させるために人手を必要とし、飲食店やメカニックは仕事で稼ぐために知恵を絞って営業を掛ける。

ARK等でも偶然すれ違ったことから始まる交流は数多くあったが、それをより大量に発生させるようにゲームのシステムが組まれているのだ。

個人的に好きなのは、海岸で救急隊を呼んだ葛葉に魁星が空中から現れるシーンだ。(動画6:34-)


・攻略してもいいし、しなくてもいい世界

にじさんじには、ゲームの上手いライバーも下手なライバーもいる。
それもかなり多様に、プレイスキルの異なるライバーが広く分布している。
今までのにじ鯖は、その層の全てを網羅できるゲームとは言い難かった。

マイクラにはゲーマー的な要求を満たすほどの攻略要素はあまり無く、
逆にARKでは文明の発展やボス攻略といった攻略要素が中心となっていた。

今回のGTAにじ鯖が10日間で参加者総数116人という大規模なものになったのは、ゲーマーにも非ゲーマーにもそれぞれのしかたで楽しむ方法が用意されていたことが大きな要因であることは間違いない。

ゲーマー気質のライバーは大型犯罪などのギャングと警察の対決で火花を散らし、
非ゲーマー気質のライバーは飲食店や独自の企画で大きな見せ場を作った。
そしてそのどちらの遊び方も、このゲームの正当な遊び方だ。

何より素晴らしいのは、この多様な遊び方のおかげで「このゲームでなければ出会わない組み合わせ」の交流が数多く見られたことだ。
警察署長ローレン・イロアスや副署長エクス・アルビオの初心者警官へのチュートリアルだったり、矢車りねを恫喝する葛葉だったり、合コンやキャバクラで繰り広げられる愛憎劇だったり、
そのどれもがゲーマーと非ゲーマーが混在するサーバーだからこそ生まれたものだった。

この素晴らしい混在は、星川サラが振り返り配信でも語っていたように「ゲームが苦手でも楽しめるサーバー」を彼女が目指し労力を割いてきたことで生まれたものだ。
彼女にはこれ以上の無い感謝を伝えたい。

にじ鯖の魅力

FiveMのMODで遊ぶGTAサーバーはこれまでにも配信者たちの間で開催されてきた。
ここではそれらと比較した「にじ鯖」固有の特徴を考えていく。

・全員が共有するコンプライアンス

にじさんじ内外を問わず昨今の配信者たちは、多くの越えちゃいけないラインを意識しながら配信している。
そしてそのラインについては、各企業や個人によってどこまでを許容できるかのスタンスが異なるだろう。

各企業勢や個人勢が参加するサーバーでは、相手側の配信スタンスを厳密に把握していない状態で交流する。
その結果、相手のラインをかなり厳しめに想定して立ち回る傾向になる。
また逆に、自分のラインギリギリを攻めたときに相手のラインが自分より緩かった場合、
相手が自分の発言に乗っかって更に過激に発展するリスクを想定して言動を控えてしまう可能性がある。

にじ鯖にはそれが無かった。

たびたび配信上で発言される通りライバーたちはコンプライアンス研修を定期的に受けており、(恐らく)全員が同じラインを想定して配信している。
また最終日のサーバー終了直前に遊園地で行われたVirtual to LIVEの合唱も、同じ企業所属で権利関係がクリアになっているからこそできたことだろう。

ホスキャバを経営した竜胆尊も、そこで本気のキャバ嬢RPを魅せたエリー・コニファーも、でびでび・でびるのうんちやさんも、卯月コウのローレソ弄りや神殺しも、「相手もライバーである」という信頼感のもと敢行されたことで生まれたであろうコンテンツだ。

・全員が知り合いの世界

他のストリーマーサーバーとの違いとして、ライバーたちは出会った時に自己紹介をしないというのもにじ鯖の大きな特徴だろう。
これの何が素晴らしいことかと言うと、単純に初対面で場が温まらない時間が減るということだけではなく、
何より、「互いが相手のことを知っている」ということを互いが知っているという一段階メタレベルの高い共有があったことだ。

配信上のトークに限らずリアルの人間関係にも言えることだが、思い切った会話ができるのは「自分が相手のことを知っている」ときよりも「相手が自分のことを知っていることを知っている」ときだ。
逆に言えば、初対面で会話が重くなるのは「相手のことを知らない」ことよりも「相手が自分のことを知らないと認識している」ことがより大きな要因となる。

にじ鯖にはそれが無かった。

たとえ初対面同士だとしても、互いの名前と顔くらいは互いに知っているという前提でこのサーバー上で暮らしていた。
長期間配信から離れていた天ヶ瀬むゆも各店舗を回っては各ライバーと交流し、
デビューから日の浅い3SKMも各所属先ですぐに馴染んで活動していた。

花畑チャイカが夢追翔やリゼ・ヘルエスタの名を騙る立ち回りも、「チャイカはそういうやつだ」という認識を他ライバーが持っているとチャイカ自身がわかっているからこそできたことだろう。

思い切った発言や立ち回りは、それが許されるという信頼があるからできることだ。
にじさんじライバーだけで構成されたサーバーというのは、箱推しの視聴者にとって楽しいだけでなく、ライバーたち自身が楽しい気持ちで活動するためにとても大きな要因だったことだろうと思う。

おわりに

今回のにじGTAは、ただこの10日間が最高に楽しかっただけでなく、
その後も大量の切り抜きが投稿され続け、それを鑑賞するライバーの配信が多数行われ、今も新鮮な楽しさを享受できる企画となっている。

リアルタイムで視聴していた時は「10日目が終わったらロスがひどいことになりそう」と思っていたけど、
実際はサーバー終了後も供給が絶え間なく続き、今もまだ企画が続いているような感覚になっている。

運営、サポート、参加者、視聴者、この企画に関わったすべての人に最大級の感謝を捧げたい。

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