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今さらアドラー、新年に改めて「他者信頼」「他者貢献」「自己受容」

テキストの整理をしていて、メモを見つけました。多分、アドラーの本を読んでピックアップしたことが主に書かれています。アドラーといえば、「他者信頼」「他者貢献」「自己受容」がキーワード。いまさらアドラーですが、新年にメモを読み返してみて、今の課題「謎の自信のなさ、他者信頼の回復」に通じるところもあったので、こちらに転記しておきます。とりとめのないメモで、オチなしです。

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幼少期に母親に良い感情を持っていなかったアドラー。アドラーは教育による人類の救済を目指した。育児・教育はアドラー心理学の中心的位置付けになっている。最初は教育の話から。

親や教師は、子供と接する際、自分の行いが子どもの適切な信念を形成する援助となっているか常に点検しなければならない。そうすれば、おのずと何をすればいいか、してはいけないかが明らかになる。目先の対応に終始しないために、「子どもを適切に教育するためには、子どもを育て、結局どのような大人になってもらうかについてはっきり意識する」こと。

育児の行動面の目標は、
・自立する
・社会と調和して暮らせる
ということ。

これを支える心理面の目標は、
・私は能力がある
・人々は私の仲間である

ということ。

人が成長の過程において仲間と出会うことの重要性をアドラーは繰り返し述べている。子どもにとって最初の仲間は母親だが、母親はその関係をさらに周りに広げさせなければならない。また、アドラー心理学の特徴として、母親との関係がうまくいかなかったとしてもそれは致命的ではなく、後に父親と、それがうまくいかなくとも友人らとの関係がうまくいくならそれでいい。
フロイトはエディプスコンプレックスとして、男の子が母親を慕うのは当然としているが、アドラーはそれは普遍的な事実ではなく、甘やかされ、母親との関係を超えない子どものみの問題と指摘している。

アドラーの「目的論」

目的論は、人は原因によって押されるのではなく、目標を設定してそれを追求するという考え。対比されるのは原因論。こちらは感情で例える。
原因論だと、「ついかっとなって子どもを叩いてしまった」、感情が原因で行動が結果。目的論だと、「相手に言うことを聞かせるために怒り、叩いた」という解釈になる。感情は、ある目的のために表出するもの。
例えば、怒りは相手に言うことを聞かせるために、悲しみは相手からの同情を引くために創り出す。腹が立ったから怒鳴った、が原因論怒鳴るために腹を立てた――というのが目的論。

愛情不足が問題行動の原因になると言われることはよくある。しかし、愛情が極端に不足している家庭ではなくても問題行動が起こることはある。つまり、愛情だけでは不十分。親は多くの場合、子どもを愛しているが、それだけで子どもとの関係が良くなるわけではない。愛があるからコミュニケーションが成立するのではなく、むしろいいコミュニケーションがあるところに愛の感情は生まれる。愛の感情は結果なので、これを目的にしたければ、いいコミュニケーションをしなければならない。そして、コミュニケーションは技術なので、学ぶことができる。

原因論は過去や外的な要因に原因を求めるが、変えることは事実上不可能。問題行動を起こした子どもの親に、幼い頃に愛情が足りなかったとか、育児の仕方が間違っていたと言うようなこのを指摘しても、それが正しくても変えられない。
目的論で考えることのメリットは、対処の仕方が分かること。目的は過去ではなく未来にあるから。アドラーは「私たちに関心があるのは過去ではなく未来である」と言っている。


アドラーは罰したり叱ることを否定する。罰したり叱ったりすることは、例えば注目してほしい子どものそうした行動に注目を与えることになり、叱られたり罰せられたりしてもそのようにしていれば親や教師に見捨てられずに済むと考えるので、その行動をやめない。罰することで子どもを奮起しようとする人がいるが、子どもの勇気をくじくだけ。なにより関係が悪くなる。また、罰の効果は一時的で、罰する人がいなければ不適切な行動をしたり、不適切な行動はしないまでも積極的に適切な行動をしなくなる。罰せられると自分には能力がないと考え、居場所のなさを感じる。人々は私の仲間ではないと感じるようになる。自分の居場所があると感じられることは、人がなにより求めるもの。
大人が子どもの権力争いに勝つと、正面から反抗するのではなく、非行に走るような形で大人への復讐をする。この段階までくると、当事者だけで問題解決するのが難しくなってしまう。だから、不適切な行動で注目をひこうとする段階でら不適切な行動には注目せず、適切な行動に注目する。そうすれば、ことさら不適切な行動をして注目される必要がなくなるので減る。ただし、適切な行動への注目とは、褒めることではない。ほめる、は能力の高い人が低い人を「よい」と判断して評価することなので、褒められた人は愉快ではない。褒められている間は、子どもは親を自分の仲間だと感じるかもしれないが、親が期待するようないい結果が得られなければたちまち親は自分の仲間ではなくなるし、失敗したら自分には能力がないと考えるようになる。

普通であることの勇気

普通である勇気がないと最初は特別よくなろうとし、これが果たせないときは特別わるくなることで、安易に周りの注目を得ることに成功する。勇気をくじかれると、根底に自分は劣っていると感じたり、ふつうにしていてはいけないと思ったりする。勉強において優秀であろう、負けないぞという不純な動機で取り組んでいると、必要以上に勉強をして自分が優秀であることを周囲に印象付けようとする。
勇気をくじかれている子を勇気づけるには、ほめたり叱ったりするのではなく、自分には課題を達成できる能力があるという自信を持つよう援助する必要がある。例えば、喜びを共有すること。当たり前と思って見逃してしまいそうな行為をありがとう、嬉しい、助かったと言ってみる。ただし、ここでありがとうと言っておけば次回も適切な行動をしてくれるのではないかと期待して言葉をかける、下心がある状態では勇気づけにはならない。次を期待してはいけない。存在そのものに注目し、何をしたからではなく、存在自体が喜びであることを伝える。

誰の課題か、を考える。勉強は子どもの課題なので、親がいきなり「勉強しなさい」というのは子どもの課題に踏み込んだことになり、衝突は避けられない。また、子どもが勉強しないことが気になるなら、それは親の課題。自分の課題を人に解決してもらうことはできないので、イライラするからといって子どもに宿題しろとは言えない。課題はきちんと分離する。
その上で、自分の問題を全て1人で解決するのは無理。他人に援助してもらったり、する必要がある。自分だけで解決できないことは共同の課題を話し合ってつくる。
黙って素ぶりから読み取り手助けするのではなく、「なにかしてほしいことはない?」と聞く。力で押さえず、根気よく話し合う。優しさとはこういうこと。叩いたり罰したりすると、問題を解決するには力によるしかないことを学ぶ。

子どもや若者と対等の横の関係を築くことの大切さ

対等の横の関係になって初めて援助し、協力し、勇気づけることが可能になる。頼まれもしないのに口出し手出しをすることは、自分の優越感を満足させることで、相手を対等とは見ていない。

ありのままの私を好きにならずに、幸福になることはできない。

「醜くても、美しくても、妬んでいても、嫉妬していても、いつもありのままの君でいて、それを理解する。しかし、ありのままでいることはとても困難です。なぜなら君は、ありのままは卑劣だし、ありのままを高尚なものに変えられさえしたならばすばらしい、と、考えるからです。そうではなく、実際のありのままを見つめて理解するなら、まさにその理解の中に変革があるのです」(クリシュナムルティ)

性格を変えるのは難しい。控えめな人が、一夜で能天気な根明になるのは難しい。ただ、「暗い」→「人を傷つけないよう人の気持ちをいつも考えているという意味で優しい」と見出しを変えれば、性格の中身が変わる。

他者信頼、自己受容、他者貢献

周りの人はすきあらば自分を陥れようとしている敵である、と考えていたのでは、自分のことを好きでも健康的ではない。自分の周りの人は敵ではなく、自分を援助しようとしている。
一方、周りの人はいい人だけど、自分はまったくの役立たず、と思っていると幸福になることはできない。人から受けるだけでなく、他人に返さないといけない。幼少期、自分だけでなく仲間へと関心を広げるのが母親の役目。でも自己犠牲は「社会に過度に適応した人」になってしまい、やりすぎ。

他者信頼、自己受容、他者貢献が揃うのが大事。私は能力がある、という自己受容。その能力は自分のためだけでなく人に役立つ能力でなければいけない。信頼できない他者に貢献しようとは思わない。どれが欠けても人は幸福になれない。


協力の名の下に、貢献や信頼を強制するのはファシズム。「だって他人は誰も私に関心を示さないではないか」という問いに対するアドラーの答えは、「誰かが始めなければならない。他の人は協力的でないとしても、それはあなたには関係がない。あなたが始めるべきだ。他人が協力的かどうかなど考えることなく」。そもそも相手を理解することは不可能なので、言葉を使うコミュニケーションが重要。


私は他人の期待を満たすために生きているのではない。他人は私の期待を満たすために生きているのではない。

察しと思いやりの世界は、うまくいくと最上の世界になるが、歯車が少し食い違うと収拾がつかない憎悪とひがみの世界を作り上げてしまう(会田雄次)


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