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2023年8月│3000円ワインまとめ

8月は怒涛のように過ぎてゆきました。

いや~、暑かった。そして、長かった。なんだか月初が遠い昔のことに思えるのは、それだけ密度が高かったんだと思います。いろんなところで、いろんなワインを飲みました。懐かしくてエモい再会もあったし、新しく刺激的な出会いもありました。

途中、実家の広島に帰って台風に巻き込まれたりしたので、物理的な移動時間も長かったんですよね。そんなこんなでいつの間にか疲れてしまったのか、後半は息も絶え絶えでした…ダメージがなかなかリカバリできない、これも36歳の現実。ともに生きよう。

でも、そんなヘロヘロのなか、というか、だからこそいったん立ち止まれたおかげで、少しずつ新しい将来像が見えてきたところもありました。

わたしの見ている、ささやかな夢。
それは「ひとが繋がる場をつくる」ということ。

誰かがふらりと立ち寄れる場所。そこでほんの少しだけ、けずれた心が回復できる場所。片手には、もちろん、ワイン。そんな場所を、つくりたい。

思えば心理士として仕事をしていたときも、畑で働きたいと思ったときにも、ワインの活動をしているときでさえも、背景にはいつもこの願いがありました。

たぶんずっと、寂しいんですよね、わたし。満たされたくて仕方がない。

10代の頃、心理士として誰かの孤独を支えたいと思ったのは、身を切るような孤独がわたしにも(決して誰ともおなじではないけれど)「わかった」から。あれからざっと20年、心理の世界はわたしにとっての、間違いなく大切な”ヴィークル(乗り物)”でした。

・・・そう。わたしにとっては、仕事も趣味も、あくまで”ヴィークル”に過ぎません。どの乗り物にのって、日々を生きていくか。永遠の孤独と、ほそぼそ付き合っていくか。かつてはそれが「心理士として生きていくこと」だったし、今はたまたま「ワインを使って仕事をすること」になっています。

だからこそこれが、永遠に続くとも思っていない。刹那的だけれど、たぶん、これが真実、いや、わたしの生きる現実です。

あるとき醸造家から、こんな質問をされました。
「まいちゃん(※わたし)は将来、どんなことがしたいんだろう?」

そのとき咄嗟に出て来た答えが、『今』のすべてだと思いました。
「今、いちばん楽しいのは、お客さんと会って話すことです」

きっと「ひと」を愛することは、わたしが神様に託された業。どんなに傷ついても、満たされなくても、思っていた期待とは違っても、やっぱりひとのことを求めてしまうんだから、もうこれは仕方ないんですよ。もはや特技みたいなものです、たぶん。

というわけで、どんな形になるかわからないし、そもそも趣味なのか事業なのかもわからないけれど、真っ暗な道のすごく向こうにかすかな光が見えている気がするので、ここから目を離さないようにしておこうと思います。

いろんなひとから話を聞きたいです。個人事業主のかた、お店を開いているかた、もちろんサラリーマンとしてやっていくと決めている方。ワイン業界のひと、ワイン業界ではないひと。仕事が楽しいひと、楽しくないひと。もっともっと、みんなの人生を、幸福を、聞きたい。

なにより今、勤務しているワイナリーでのわたしの役目は、間違いなく今わたしがやりたいと思っていることなんです。結果論だけど、すごいめぐり合わせだと思っています。栽培から醸造、そして販売までのすべの工程を、この目で、この心で感じることができて本当に得難い毎日です。しかも心から気持ちのいいひとたちに囲まれて、ねぇこんな人生ってある?やっぱりバッカスってば、あたしのこと、好きなんでしょ…

ワインのある場所でひとが出会うこと。ワインを使って日常の「しあわせ」に寄与すること。そして、それらをきちんと事業として、資本主義社会に乗せていくこと。これがどれもめちゃくちゃ楽しくて、まずはここの場所でできることを引き続き追及していきたい所存です!押忍!

というわけで、なんのこっちゃだけど夢の宣言でした。

いやはや疲れました。あまりに疲れたので、9月からはなるべく週2日やすむことにしました。さすがにこのペースで生きてて週1やすみは無理だった。元気なんだけど燃費が悪い、それがますたやのジャスティス……!(うるせぇ…!)


深夜にワインを飲みたい夜もある。

カヴィット/アルテマージ ブリュット・ミレジマート 2018[¥3300]

終業後のワイナリーで、ワインを飲みながらワイン談義に花を咲かせる夜。うちの畑にはシュナン・ブランが植わってるんですが、勉強のためにシュナン・ブランを飲みながら、シュナンの品種特性についてとかどんなスタイルで造りたいかとか、そんな話を交わす時間は幸福の色。

いつのまにか時間は過ぎ、家に帰ると時刻はもう深夜0:00。しかし、ここであきらめないのが、ますたやです。眠い。でも、ワインは飲みたい。といっても深夜だし、ご飯はコンビニのお惣菜だし、あんまり考えて飲むのもしんどいし、できれば疲れない陽気なワインを…!そんな葛藤のなか目に入ったのが、このイタリアの泡でした。もう寝ろ。

これが、ひとくち飲んでびっくりしました。期待してた「陽気なイタリア感」とは違った、エレガントかつクールな表情…!フレッシュなリンゴの香りと、それに混ざる香ばしい蜜の香り。驚くほどシャープな酸と、細やかな泡。そして後半に伸びていく、柔らかな苦み………え、高貴?

まるでフレッシュなブラン・ド・ブラン・シャンパーニュな雰囲気に、舌を巻きました。なんか最近安易に「まるでシャンパーニュみたい」とか言いすぎててダサいから、今度こそ控えたいと思ってるんですが、これはまるで………(ここで日記は途切れている)

深夜ワイン。たまにはいいよね。

完全に、推し確だわこれ。

フィリップ・ヴァンデル/クレマン・デュ・ジュラ・ブリュットN.V.[¥3400(鈴木酒販:税込¥3100)]

先日2連続で飲んだ「クレマン・ド・ジュラ」がやたらと美味しかったので、ダメ押しで3本め、飲んでみました。購入は、三ノ輪にあります鈴木酒販さん。わたしがTwitterのタイムラインで「ジュラジュラ!!」言うてたら、気を利かせた店長が「うむ、ならば、良かろう」と仕入れてくれた1本でした。(たぶん)

シャルドネ100%のクレマンですが、これがやっぱり美味いのよ…!いわゆるブラン・ド・ブラン系のすっきりとした香り高さと、ほんのりとした熟成香。直近で飲んだ3本とも、この熟成香が出てるのが本当に不思議です。

もしかしてヴァン・ジョーヌと同じ樽使ってないよねぇ…?!なんて冗談で思っちゃいますが、とにもかくにもやや熟スパークリングが好きなわたし、完全に推しが確定しました。クレマン・ド・ジュラ、君に決めた…!!

ちなみに鈴木酒販の店長からは「あんまこういう言い方は、ダサいからしたくはないんだけど……」という前置きつきで、とある言葉を承っております。言いたくない…言いたくないけど…これはやはり………シャンパ(ここで日記は途切れている)

「これ、あたしも醸造したんだよ!」のパワーワード感。

 葡蔵人〜book road〜/カベルネロゼ 2022[¥3000(税抜)]

普段、土日も関係なく勤労しているわたしですが、たまたまお盆にお休みが取れ、弾丸で帰ってきました。地元に帰るのは今年の3月ぶり。前回はワイナリーで働く直前だったので「ワインのひと」になってからは初の帰省でした。あれですよ。これはいわゆるひとつの、凱旋👑(言っとけ!)

ホットプレートで焼かれるお肉の香りとともに、第三のビールからはじまった宴。その後、父は日本酒、母と妹は私に付き合ってワインへ。「見てみぃ。冷で飲みてゃあけぇ、ワインのボトルに日本酒入れとるんよ。えかろ?」と、父がドヤ顔しながら冷蔵庫から出してくる日本酒は、でっかい紙パックから注がれた、「ふつうに美味い」酒でした。

そうそう、これこれ、と思い出します。うちの家、全部のお酒を「ふつうに」楽しく飲むんだよな。

わたしの「ワイン好き」の原点には、たぶんこの、「ふつうのお酒」感があります。毎日食卓に並ぶ母の美味しい手料理と、ビールや日本酒や焼酎。その並びに「ワイン」がある。こうしてふつうにお酒を楽しむ両親のもとで、私はすくすくと育ったんだよなぁ…!

ブックロードのカベルネロゼは、フレッシュな青みを感じるファーストアタックがあります。その後、ほんのりとホイップのような香りが漂い、柔らかな飲み心地へと変化していきます。一般的な「ロゼ」のイメージよりも味わいの骨格があり、色の付いたお魚料理や、軽やかなお肉にも合わせやすい。そのまま飲んでも美味しくて、ただいま絶賛アタシの「推し」ワインとなっております。

「これ、アタシも醸造手伝ったんだよ!」それは自由人すぎていまいち安心してもらえないアタシからの、せめてもの親孝行…のつもり。

「それなら、うちの畑にブドウ植えたらええのに」おっと、しまったしまった。また今回も実家に帰ってくるよう、じわじわと勧められる娘だったのでした。うーん、じゃあまずは、クーラーをつけるところからお願いしたいんですけど?!(暑…)

ごめんね、アタシ、濃いブルゴーニュ好きなんです…

ロベール・シュヴィヨン/ブルゴーニュ・パストゥグラン 2019[¥3500(税抜)]

美味い!のひとことでした、これは。ガメイ×ピノ・ノワールというアッサンブラージュのパストゥグラン。そもそもガメイがいるのがいいよね。親しみやすい味わい、親しみやすいお値段。

でも、最初はどちらかというと、もっとライトなイメージで抜栓したんですね。ところが。グラスに注いだ瞬間から立ち上る、あきらかに華やかな香り。飲んでみるとこれまた「いやいやいやw」と笑いが出るくらいの、凝縮した濃い果実味。でも、決して「濃いだけ」にならない、美しく気高い酸。

なるほどブルゴーニュやっぱり好きだーーーー!と、ひとくち飲んで宣言していました。ますたや、ブルゴーニュ、好き(みんな)

もしかするとここまで濃いと「ブルゴーニュらしくない」のかもしれません。そもそもガメイの比率が高いこともありますが、なんならモルゴンとかムーラン・ナ・ヴァンくらいは濃かったんですよ。でも、わたしの舌は何を隠そう「こども舌」。わかりやすく美味しいワインなんて、一生大歓迎なんですよ!

というわけで、世界中の「濃いブル苦手」な民のみなさん、ぜひますたやにお持ちのそのワイン、送りつけてください。仕方ないから、飲んで差し上げますよ!(親切心)

ところでおなじ生産者の2020は、上代が¥5000台に跳ねてました。だから割引してくれてたのかな、渋谷の THE WINE さん…「いい年だった」といわれるブルゴーニュ2019、市場から刻々と姿を消しています。切ない、でも好き…(恋)

エレガントで重心の低い、マスカットベーリーA。瀬戸内、推せる…!

大三島みんなのワイナリー/島紅(しまんか) 2022 マスカットベーリーA 100%[¥3273(税抜)]

広島への帰省の際、せっかくだからと足を伸ばしたのが「大三島みんなのワイナリー」さん。愛媛県の島の中ではもっとも大きいこちらの島には、しまなみ海道を途中下車する形で立ち寄りました・・・というと計画的に聞こえますが、実際は別件で今治に向かうバスの中で「はっ!そういえば、ワイナリーがあった!」と思い出して急に下車したのが本当のところ。

でもね、ほとんど思いつきの訪問ですが、本当に本当によかったです。ご夫婦のあたたかい雰囲気。島ののんびりした空気。そしてすぐそこに広がる、穏やかできらめく海。販売所と醸造所はすこし離れているのですが、ご厚意で醸造所も見せていただき、これまたありがたいオブザありがたい経験でした。

ちなみにせめてもの恩返しにちょこっとだけお手伝いしましたが、あれ、これ昨日までとやってること、変わらないんじゃないですかね…?🍇😂

さて、このとき購入したのが、こちらのマスカットベーリーAでした。香りはやや控えめなキャンディ香り。いわゆる「あたし、マスカットベーリーAです!🍓」という香りを想像していると、もっと優しい香りに感じます。

そしてひとくち飲んでみると、これがなんというか…「あれ?南仏のワインだったっけ…?」みたいな、ちょうどいいふくよかさと綺麗な酸味が感じられるんですよ。

そもそもわたしはマスカットベーリーAのことは好きで、最近は樽熟系のベーリーAを好むようになっています。しかしこちらはいい意味で、「いわゆるキュート♡なベーリーAらしくない」重心の低さとエレガントさを感じるワインでした。

きっと瀬戸内、果物がすくすく育っちゃうんですね🍊醸造家の川田さんも「酸味をどのように表現するかが難しい」とおっしゃっておられました。それでもこんなに綺麗でシックで穏やかなワインが造れるだなんて、これはもう栽培家であり醸造家の手腕にほかならない、となんだか感じ入ってしまいます。

「この島には、必要最低限のもの以上はなにもないんです。でも、それが、畑と向き合えていいんですよ」言葉ひとつひとつがきらきら輝いているように感じて、胸を突かれます。そして帰る道すがら、は〜〜また推しワインが増えちゃったよ…と、嬉しいため息をつくますたやなのでした。

これ「も」ブルゴーニュで間違いない!北の産地のシュペートブルグンダー風ピノ・ノワール。

ドメーヌ・コルボワ/ブルゴーニュ・シトリー・ルージュ レ・ダーム 2020[¥3600(税抜)]

我が家が最初に名前を覚えたインポーターが「株式会社 稲葉」さんでした。どれを飲んでも美味しい。しかも初心者にもわかりやすい濃い味わい。業界内では「稲葉味」とも呼ばれ、親しまれる稲葉さんのワインには、これまで長らくお世話になり、そしてこれからもお世話になる気まんまんです。

そんな我が家が今回近所だったワイン屋にリクエストしたのは「フランスのマイナー産地送って」!そして送られて来たのが、今回の「稲葉セット」だった、というわけ。さすが稲葉さん網羅してらっしゃる……ッ!

今夜いただいたのは、ブルゴーニュ・シトリーのピノ・ノワールです。シトリー・・・・どこ?!?(好き)

ブルゴーニュ・シトリーは、シャブリからほどちかい「いちおうブルゴーニュ」に位置しています。この「いちおう」が大事でして、コート・ドールからはずれているので優しいんですよ、お財布に…ワインには、北の産地らしい綺麗な酸味と、どことなくシックな赤い果実の雰囲気を感じます。時間が立つほどジューシーな果実味があらわれて、どんどん美味しくなるタイプ。

そしてこれ、なんていうか、そこはかとない「シュペートブルグンダー」みがあるんですよね。ドイツのピノ・ノワールであるところのシュペートブルグンダーって、いつも似通った雰囲気を感じるんです。夫はこれを「遺跡や煉瓦が見える」と表現していて、我が家ではそれで通じるんですが、これまでどうもうまく一般的に言い表せなかったんです。

たとえば、わたしの生まれ育った実家では「ウニはテレビの味がする」で通じるんですが、これってたぶん、うちだけの文化ですよね…なんか、そういうやつ。

で、今回、ヒントが見つかりました。

「シュペートブルグンダーみのこと、なんて言ったらいい?」ってTwitterのタイムラインでぼやいてたら、今治のワインバー・ブルーノの青野さんから「シュペートブルグンダーには、透明感と土っぽさを感じます」とお話をいただきまして、土っぽさ!それだーーー!と、完全にコメントをパクる…じゃなくて、リスペクトして参考にさせていただくことにしました♡

というわけで、土感を感じるシックな香りと、赤系ベリーに溶け込むあわい樽香、北らしい透明な酸味を感じる冷涼系ピノ、3000円台で美味しく頂きました🍷は〜、やっぱり(いちおう)ブルゴーニュ、美味いんだよなぁ…アタシゃ一体どうすりゃいいんだ…

というわけで、今月は6本の #3000円ワイン を飲みました。どれもこれも美味しかった!

また9月も、美味しいワインとそれを囲むみなさんと、たくさん出会えますように🍷なんか夫がまた日本を飛び出していくそうなので、わたしはわたしで日本を楽しみます!!!!(なんなんだあの意志を持ったひつじは…!🐑)

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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワイン好きが高じて、2023年3月から都内のワイナリーで働きはじめました。
2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得/2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得し、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中。

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