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[3000円ワイン]ささやかな卒業を彩る花束。〈フランス(ボルドー)/メルロー主体〉

9年勤めた職場を退職するにあたり、今月はとにもかくにも送られ続けています。

旅先で撮られる写真が基本ひとり遊びのわたし(落ち着きがない)

日々送られすぎて、そろそろ「え、いつまでいるの?」感が出てきた今日この頃ですが、いよいよ明日(3/17)が、泣いても笑っても最終日。
この9年間は、わたしが世界でいちばんカッコいいと思ってる仕事ができた、夢のような時間でした。

なんせ中学生の頃からの夢だったんですよ、この仕事。わたしからすると、サッカー少年がサッカー選手になったみたいなもので、働いていて日々誇らしかった。
職場のみなさんにもしこたま大事にしていただいて、そのまま最後まで幸せに卒業できるなんて、嬉しいですよね。

それにあたり、大小さまざまな卒業イベントが起きているわけなんですが、昨日わたしの「師匠」からの卒業という、ささやかなビッグイベントがありました。

わたしの職種はちょっと特殊で、師弟制度みたいな文化があります。先生や先輩に教えを乞うて、仕事についてアドバイスをもらうのがその最たるものなのですが、我が師匠とは学生時代からのご縁。数えること実に14年、公私ともどもお世話になった偉大な先生でした。

新卒でうっかりブラック企業につとめたとき、わたしの命をつなぎとめてくれたのはこの先生でした。夫がベトナムに渡ったときは、さんざん一緒に泣いてくれました。
もはや仕事の話なんかではなく、ただ人生の話をしていただけなのですが、そんなことはわかりながらも淡々と、付き合い続けてくださった14年間。

別れ際は意外とさらっとしてて、「じゃ、また」とSkypeを閉じて終わりました。おお、これで卒業か。あっさりしたものだな。
でも、「寂しい」ばかりが、別れじゃないんですね。未来を含んだ「またね」で終われるなんて、最高のエンディングじゃないですか。

――と、いうわけで、そんなすがすがしい夜にも、やっぱりわたしはワインを飲むわけです。そんな名前もつかないささやかな記念日に飲んだ、 #3000円ワイン をご紹介します。

人生にはときに、ワインが必要だ。

ジー・バイ・ユリグサ ルージュ 2021[¥3000]

<ワインdata>
国:フランス(ボルドー) 種類:赤 品種:メルロー95%、カベルネ・フラン5% ヴィンテージ:2021 生産者:シャトー・ジンコ インポーター:株式会社都光

<バランス>
酸味★★★☆☆ タンニン:★★★★☆ 香り:★★★★☆

シャトー・ジンコは、ボルドーの日本人女性醸造家である百合草さんが造るワインです。

2022年11月に、シャトー・ジンコをインポートしている都光さんの「生産者来日イベント」にうかがいました。このとき、数種類のワインを試飲させていただきながら、百合草さんご本人ともお話させていただきました。

「このワインを造った方」からお話をうかがいながら、飲むワインの贅沢さ。百合草さんの太陽みたいなスマイル、元気が出たな~!

スパークリングワインや、トップキュベもいただきました
しっかりサインも!大切にします。

さて、そんなワインなのですが、大切に買ったワインって、大切に飲みたいじゃないですか。それで「いつ開けようかな」と思ったまま、なんとなく時がすぎていきました。

そして、昨夜わたしの小さなビッグイベントが終わり、「今日は思い出に残るワインを飲みたい」と思ったときに、そうだ、こんなときこそボルドーだ!というわけで、こちらを手に取ったのでした。

この角度はいつも夫が映り込む

外観は、紫がかった明るいルビーレッドです。若干、むこうがわの指が透けるほんのりとした淡さを感じます。

グラスに鼻をちかづけると、まず青色の香りが感じられます。これ、たぶん「ピラジン」系の香りで、ピラジンってピーマンにたくさん含まれている香り成分なのですが、あの、青く蒸れたような香りが、ふんわりと心地よく漂います。

ところでピラジンって、カベルネ・フランとか、熟度が高くないカベルネ・ソーヴィニョンに出やすい香りと言われています。それで、あれ?このワインって、カベルネ系の比率高かったっけ?とテクニカルデータを見てみると、なんとメルロー95%。

えっ、そうなんだ、とちょっと驚きました。
まさかわたし、5パーセントのカベルネ・フランの香りが取れてる…?(ない

確かに日本で作られるメルローなんかは、熟度があがりにくく青っぽい香りが出やすいと言われています。でも、それともなんかちょっと違っていて、なんというのか、そこはかとなく「左岸っぽい」んですよ。

シャトー・ジンコが位置しているのは、カスティヨン・コート・ド・ボルドーだそうです。それも、お隣の「サンテミリオン」との境界あたりということで、土壌はほぼ「サンテミリオン(=右岸)」なんですって。

だから、決して「左岸っぽさ」がある地域ではないと思うのですが、なんだろうな、力強さと繊細さのバランスというか、エレガントでありながらもある程度の熟成にも耐えうる要素の力強さといいますか、そういう、きりっとした骨格を感じるワインでもあったのでした。
タンニンもけっこうガシッとしててね。美しい女性の持つ男らしさ、みたいな、そんな頼もしさを感じました。

そしてこれが、後半に行くにつれて、どんどん開いていくんですよ。
ブルーベリーやブラックベリーみたいなピュアなフルーツ感のうえに、パ、パ、パ、と、花が咲いていく。白い花、黄色い花、そして最後に、可憐なすみれの花。まるで花束をいただいたような、そんな気持ちになっていきました。

そうか、今日は卒業だから。
そんな考えがよぎります。

ワインを飲んでいるとときどき、こういう偶然に出会うことがあります。たぶん本当のところは、わたしの卒業の気持ちが、勝手にワインに投影されただけ。

でも、それも含めてワインに出会っちゃうんだから、こりゃもう仕方ないですよねぇ、みなさん。

ワインとともに人生がある

というわけで、いつもどおりの日常の延長にある、ちょっとした個人的な記念日を、エレガントな花束で飾っていただいた夜💐

さあ、人生は今日も、明日も続きます。
明日はどんなワインを飲みましょうか…!(本日休肝日)

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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!

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