ドイツの醸造家Nagiさんと、Nagiさんのワインを飲んだ夜。
ドイツのワイン醸造家Nagiさんが造ったワインを、Nagiさんご本人と語りあいながら、Nagiさんと一緒に飲める会――
そんなとんでもねぇ会が催されましたので、颯爽と行ってまいりました。
・・・否、颯爽と、というのはウソで、緊張で心臓ばくばくしながらなんとかたどり着いた、というのがホントウです。
ばくばくしすぎて渋谷の街なかを彷徨い、山をふたつほど超えました。渋谷って、山あり谷ありなんだなぁ…!(あと、駅の向こうになかなか抜けれないんだなぁ…!)
Nagiさんは、ドイツの「プリンツザルム醸造所」で醸造責任者を務めておられる日本人ワイン醸造家です。ワインにまつわる学問を修めることにおいて世界有数の大学である、ドイツのガイゼンハイム大学で学位を取得されておられます。
と、いう輝かしいご経歴をうかがうにつけ、Nagiさんって「ワイン街道まっしぐら」の方なのだろうなぁと、なんにも疑うことなく思っておりました。疑うことがなさすぎて、そう思っていたことにも気づいていなかったくらい。
ところがNagiさん、実は社会人の最初の頃は東京で「ふつうに」お仕事をされていたんだそうで、えー!わかる!(なにが)などと思い、急に心の距離を縮めるますたや。(※ご本人に無許可で勝手に縮めてます)
Nagiさんのプロフェッショナルの影には、Nagiさんの人生があったのだな~…!と、今日が終わったら、明日が来るのか~!と同じくらいあたり前の感慨を抱きます。当たり前ですが…!
さて、プリンツザルム醸造所は、ドイツの『Nahe(ナーエ)』地区に位置している醸造所です。
その歴史は800年ともそれ以上とも言われているそうで、「文書が残ってるのが1219年ということなので、それより前から造ってたんでしょうね」というNagiさんの軽やかな語り口調と、まったく釣り合ってない歴史の長さがすごい。
1200年代といえばチンギス・カンがモンゴルを統一したばかりで、その後オスマントルコが成立するまでここから100年。日本では絶賛鎌倉幕府が頑張っており、源だれがしが、源なにがしを斬ったり張ったりしていた頃ということで、ちょっと、話のスケールが壮大すぎて意味がわからないですね…
とにかく、日本では戦国時代さえも始まっていない「あの、平べったい肖像画」の時代から、ドイツの、他でもないこの地で、ブドウを育て、ワインを造っていた人々がいただなんて、それこそが「歴史」のすごさですよねぇ…って、これもまたなにか言ってるようで言ってないけど…!(今日は全体的にこんな感じでお送りします)
そんなプリンツザルム醸造所のワインですが、現在日本にはインポートされておらず、なかなか飲める機会が少ないのだそう。
というわけで今回、Nagiさんのご帰国に合わせてこれらのワインを頂けることとなったのでした。ありがたみがすぎる。
ちなみに今回のご帰国の目的は、「働きすぎたので有休消化」、だそうです。・・・・日本でもよく聞くやつですね…!
そんな貴重な、Nagiさんワインあらためプリンツザルム醸造所ワイン。早速、いただいてまいりましょう!
まず1杯目は「カビネット」です。
こちら、まるで駆けつけ一杯的な感じで注がれましたが、駆けつけ一杯で飲み干していいワインじゃないです…!
ひとくち飲んで、「うまぁ♡」が第一声でした。
香り高さと、夢のような甘み。いわゆる甘口ワインなのですが、カワイイ酸も感じて、うっかりするとごくごく飲んでしまいそうになります。あぶないあぶないっ大事に飲んでアタシ…!
山あり谷ありの渋谷探訪(※迷子)のあとだったので、甘みが余計に身に沁みました。夢見心地って、こういうことを、いうのかもしれない。
ちなみに「カビネット」って甘口なんだっけ?と思って調べはじめたら、いちばん上にNagiさんのブログが検索されてきました。
Nagiさんのワインを調べるために、Nagiさんの解説を読む……禅、の精神かな…?(問答)
さて続いてここから、『GG(グローセス・ゲヴェックス)』の3連チャンとなります。
GG(グローセス・ゲヴェックス)とは、ドイツの『VDP(ファウ・デー・ペー)』という(私的)団体が定めた畑の格付けにおいて、もっとも厳しい基準が設けられた畑(グローセ・ラーゲ)で栽培されたブドウによって造られる、辛口ワインにつけられる名称のことです。
――と、いう記事を書きはじめてから、ここまで来るのに、小1時間が経ちました。いやドイツワインほんと分かりにくいな…分かりやすくしようとして逆に分かりにくくなってるの、ほんとすごいなドイツ…!
とにかく、もっとも厳しいルールにしたがった畑から造られる、本数のすくない(ニアリーイコール品質と価格が高くなりやすい)辛口ワインだ、っていうことを、わたしは覚えておこうと思いました。まる。
それってつまり、「えっ!グローセス・ゲヴェックスが飲めるんですか!やったーー!」という反応ができると、おおかた間違っていないということではないかと思います。現場からは以上です。
▶参考:Nagiさんブログ(やはり禅…!)
さて、このくらい理解度が粗く仕上がっているますたやではございますが、ワインを美味しく飲むことに関しては、気合いが入っています。
今回いただいたGGは、次の3種類。
この3つ、並べて飲むと確かに味わいが違うんですねこれが…!
で、先に言い訳というか、あとからはっきり自覚したことなのですが、わたしたぶん、酸度と糖度を分別して捉えるのがかなり苦手です。
ちゃんとした糖度の違いよりも、アルコール度の高さや酸度の低さであまっぽい感じのワインを「甘い」と言いがちですし、同じように果実味が弱いために酸が目立つワインを「酸っぱい」と言いがち。
なのでどういうことが起こるかというと、テクニカルデータに書いてある糖度や酸度と、捉えた味の印象が違う…!ということが起こります。
「みなさん、(2)は糖度の高さに引っ張られて美味しいと感じたのですね」とおっしゃるNagiさんのコメントに、みんなと同じようにほがらかに笑って首肯してましたが、すみませんますたや、実はそんなに違いがわかんないな、って思ってました……………(アウェイ)
こんなんじゃワイン好きの風上にも置けない、いや、風上じゃなくていいのでせめて風下あたりには置いてもらいたい、そんなますたやですが、わたしにとっての大切な味を忘れたくないのでここに書き残しておきます。
猛者のみなさまがご参加されている中はなはだお恥ずかしい限りですが、話半分で、風の歌代わりにでも、聞いてください。
(1)はわたしにとっては、3つのなかでいちばん味わいの”バランス”が取れてるな~と感じたワインでした。輪郭が整っていて、クリアでこなれた印象。ところが残糖度は「Negative(なし)」とのことで、バランスが整ってるって、どの口が言った…!(わたし)
フローラルな香りの高さと繊細な苦味が印象的で、飲み終わったあともぐーっとあとに引く酸味を感じます。あ〜、わたし今、いいワイン飲んでるな〜、と、うっとりしながらもごくりと飲み干しちゃう、そんな親しみやすさがあるおいしいワインでした!
(2)は酸の高さと、果実味の豊かさを感じました。抜群の香り高さからの、生き生きとした酸味。厚みのある口当たりに「うまァい♡」と思わず嬉しくなります。
ちなみにわたしは3つのなかでは、このワインがいちばん好きでした。なぜかというと、酸を強く感じたから………と、思ってましたが、GG3つのなかでもっとも酸度が低かったのが、このワインでした。酸味というより、果実味とのバランスだったのかもしれない。自分に自信がない。
でも、たとえあなたがどんな人だったとしても、アタシの好きな気持ちに変わりはないから…!(こぶしをにぎる)
(3)3つのなかではもっとも、シャープさと厚みを感じるかっこいいワインでした。で、実はわたしはぷちぷちした超微発泡の雰囲気も感じたのですが、そんなこと、誰も言っておられなかったんですよね…アレおかしいな…(周囲をみまわす)もしや、わたしの舌が泡立ってるだけ……?(なにそれ)
メモに「なぎさんちのちかく」って残っていたので、なんか…たぶん、そうなんだろうと思います。
というわけで、「おいしい」3連チャンのGGをいただいた、ハッピータイムでございました。貴重だし美味しいし楽しいしで、もう胸いっぱいです…!
ナーエ地区はほんの100メートルずれるだけで、全然違った土壌になることが特徴のひとつなのだそう。粘板岩の色にも赤、緑、青とあり、それぞれ地熱のこもり方の違いなどで、酸の強さが変わったりするんですって。へー!
そんな、すごくすごく興味深いお話を聞いてめちゃくちゃうなずいていたはずなのに、わたしのメモに残っているのは、「ブドウ畑ダイエット」とか「トラクターがほとんどずり落ちる」とかで、ほんとお勉強に向いてなさすぎて、美味しいワインをただ美味しい美味しいって言いながら飲んだ感がすごい…………ッ!
ちなみに最近のワイン造りの傾向として、辛口の「トロッケン」でも若干糖度を残し気味に造るんだそうです。今回も糖度が最も高いワインが1番の人気を集めておりましたが、いやほんと、なにはともあれ、甘いワインは正義!
一方、現実問題として気候変動のためブドウの糖度があがりやすくなっており、全部の糖をアルコールにしてしまうと「アルコール度数があがりすぎちゃう」というところもあるのだそう。
そのために若干糖が残った段階でも発酵を終える必要があるそうで、なるほど、ワイン造りってそういった「市場の傾向と、ブドウの都合」のバランスを、どこでどう取るか、っていうことが常に考えられてるんだなぁ…とあらためて実感します。おもしろいよなぁ、ワイン飲んでるだけで、市場経済や気候のことを考えることになるんだもんなぁ…ワインってすごいなぁ…!
さて、そんな風にひとり感慨深く思っておりますと、ここから「ブラインド」でワインが提供されはじめます。お、ブラインド?
この赤ワインの品種を当てよというのが、我々に与えられた使命というわけです。よっしゃ!(腕まくり)
色はかなり濃いめで、香りにはかなりしっかりとした樽香を感じます。え、ドイツで樽香…?と、ここでまずひと混乱。ドイツってもっと、シャープな感じの印象があったけど…?!
しっとりした果実味と、おそらくアルコール度数の高さからくるボリューム感。そして、この酸の強さはなんだろう?あなたは、一体、だれなの…?
「正解は………メルローです!」
え〜〜〜〜!!当てた〜〜〜〜!!やった〜〜〜〜〜!!
「ますたやさん、どうしてわかったんですか?」
えぇっと……それは、メルローの味がしたから、です!(※それをまぐれという)
ちなみに最近のドイツでは、「樽をばちばちにきかせた赤」が結構流行っているのですって。これ、意外じゃないですか?
ドイツの赤といえばまず思い浮かぶのが、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)のイメージ。なので、ドイツでは冷涼系の酸味を感じる軽やかな赤が人気なのかと思ってました。
どうやら、もともと黒ブドウがあまり造られていなかったドイツでは、赤ワインを飲むとなると「輸入してきた国際品種のワイン」が飲まれがちだったんだそう。これがいわゆる「樽のきいた赤ワイン」だったりしたそうなんですが、ここに来て、有無を言わさぬ気候変動によって「樽をきかせても大丈夫」なほど自国のブドウの熟度があがっているドイツ。
結果、赤ワインにも樽を「きかせられるようになってきた」んだそうで、こうして樽のきいた赤ワインが生まれるようになったんですって。
こうなると、ワインを飲んだ消費者のみなさんが「これよ、これこれ!これが、いつも飲んでる美味しいやつよ!」と認識。そうして「樽のきいた赤ワイン」が売れがちになる、というお話に、な、なるほど~~~~と首がもげるほどうなずきました。
わかる。わたしもそれ、よくやります。いつものっぽいやつ美味しいって、わかるよ、ドイツのみんな…!
ちなみに、「ドイツの料理はバターで炒めただけ、みたいなものが多く、案外味にパンチがあります」とはNagiさん談。このため、こういった樽のきいた赤ワインが、ある意味ではよく合うんだそうです。
ここで「そもそも、ドイツに”料理”なんかないんですよ」などという斬新な発言が、あったとかなかったとか…………ともかく、市場のニーズに合わせた醸造が(当然ながら)大切で、そうなるとご自身の好み如何に関わらず、もっと樽をきかせることが求められがち、というお話は醸造現場のリアルを感じて大変に面白かったです!
最後に、これまた夢見心地のうっとりするシュペートレーゼをいただき、美味しさに身震いしながら1次会は終了しました。
は〜、いつまでも飲んでいたい。ワインボトルの底から、こんこんとワインが湧いてくればいいのにな…!
さて、ここから会は2次会に流れ込みます。ワインのご提供は、ワインマーケットパーティーの店長沼田さん。
まさか、みなさんここからまだ飲むんですか?
そうなんです、そのまさかの、飲むんですよ。
ここまで来ると会場のあちこちで、それぞれの盛り上がりが繰り広げられておりました。
わたしはといえば、Twitterでお見かけしていたゆうこりンファンデル(a.k.a.もふもふ)さん(相変わらずお名前長いな…!)と初めてお会いしてとにかくキャッキャしてみたり、初めてワイン会にご参加されたざぎんさんとニッチな広島の江田島話で盛り上がったり、ロシア界隈&ジョージアワイン界隈でご活躍のエミさんのまさかのお名前誕生秘話をうかがったり、美女の趣味が意外過ぎるジオラマ作成で面白すぎて膝から崩れ落ちたり、自作小説を手売りされている素敵なレディのエモエモのエモな萌え話に性癖の一致を感じたりと、とにかく非常に忙しく楽しい時間をすごしました。ああ、耳と口が足りない…!
なによりも、いつもブログやYou Tubeで拝見していたナギさん(本物)に、「いつ頃降った雨が、どんなふうにブドウに影響するんですか?」「醸造チームって何人くらいいるんですか?」などと、直接ご質問をさせていただけるという、めちゃくちゃ貴重な時間を過ごすことができました。
ちなみに雨が降ると収穫ができなくてブドウが腐敗してしまうそうですし、醸造チームはまさかの醸造長ひとりらしいですし、「ドイツに料理なんかない」なんて、そんなこと誰が言ったんですか……ッ!(目をそらす)
あ〜、本当に楽しかった。まだ思い出すとふわふわします。わたしがワイン界隈で会うかた、ほんとに全員が面白くて可愛くて優しくて、こんなに幸せでいいのかな?って毎回思います。
美味しいワインの周りには温かい輪が広がりがち…この現象に誰か名前つけて欲しい…!
というわけで、舌もおなかも心も満たされた、素敵な夜となったのでした。
お会いできたみなさん、ありがとうございました!
なにより、幹事を務められたヒマワインさんのスーパー細やかな心遣いと、厳密には現在の本業ではないのにも関わらずスマートに繰り出される沼田さんのスーパーナチュラルなサーヴィス、そしてなによりNagiさんのスーパー実直でスーパー誠実なお人柄の温かさと、そんなNagiさんが造るスーパー美味しいワイン、そのすべてにありがとうございました!わたし、また、ワインが、飲みたいです!(本音)
▶Nagiさんとヒマワインさんの、ためになって面白いYou Tubeはこちらです
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■ ますたやとは:
関東在住の30代、3000円ワインの民(たみ)。ワインは週に約5本(休肝日2日)、夫婦で1本を分けあって飲みます。2021年J.S.A.認定ワインエキスパート取得、2022年コムラードオブチーズ認定。夫もワインエキスパートを取得、現在はWSETLevel3を英語で挑戦中の、ワイン大好き夫婦です!
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