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コンビニ人間を読んで「自分らしさ」について考えた

あれだけ楽しく感じていた仕事も、最近は苦しい時間が多くなってしまった。
気分転換に図書館で小説を借りてみたところ、今の悩みにグサリとささる内容だったのでnoteに残しておきます。
1つの捉え方としてお読みいただければ幸いです。


全体の感想として、主人公の狂気に嫌悪感を感じる人もいるみたいですが、私はどこか共感してしまいました。
確かに狂気を感じる場面もありますが、自分と社会との不一致に悩む姿は多くの人と同じなのではないでしょうか。

自分が感じること、考えることが否定されない世の中になればいいなあ。


あらすじ

Wikipediaより。

ヒロイン古倉恵子は三十半ばだが、正規の就職をせずに大学時代に始めたコンビニのアルバイトを続けており、恋愛経験も皆無であった。
子供の頃から普通ではないと思われていた古倉は、周囲の人たちの真似をしたり妹の助言に従ったりすることによって常人を何とか演じ続けてきたが、加齢によりそのような生き方も限界に達しつつあった。
そんなとき、就労動機を婚活だと言った後に解雇された元バイト仲間の白羽という男と再会し、彼と奇妙な同居生活を始める。それを「同棲」と解釈して色めきたった周囲の人たちの反応に若干は戸惑いつつも冷静に彼らを観察して、白羽との関係を便利なものと判断する。


今の自分の悩みと重ねてみると、自分らしさについてあれこれ考えさせられました。

家族、友人の前で自分らしさを発揮できない苦しみ

主人公は友人の前だけでなく、家族にも精神病のように扱われています。
周りに心配をかけたくない、喜んで欲しいという想いで、周りに同調して喋り方を真似するようになりました。

「冷静で合理的」だから自分らしさを隠しているというよりも、これは優しさなのかなあと感じています。
主人公も苦しんだ時期があったのではないでしょうか。


コンビニバイトが自分らしさを作り、居場所になった

周りに心配をかけないためにも、と始めたコンビニのアルバイトを18年間も続け、そこでの仕事、人間関係が主人公の自分らしさの一部となりました。

これは継続という努力で自分の居場所、自分らしさを掴み取ったとも考えられます。
社会のどこかに1つでも居場所があって必要とされれば、歯車であることを感じられれば、それは幸せなことなのかもしれません。


自分らしさを権利と考えるどんどん苦しくなっていく

コンビニ人間には、主人公のヒモになろうとするダメ男、白羽も登場します。
自分らしくいられないことを社会のせいにして、自分で何もできなくなってしまった人です。

白羽と反対に、主人公はコンビニという居場所を見つけ、自分らしさを自分で掴み取っているのが対比できます。
始めた当初は適当に選んだものでしたでしょうが、最後のシーンでは白羽の反対を押し切り、自らコンビニ人間として生きることを宣言しています。

自分らしさは周囲が担保してくれるものでなく、自ら考え、育てていく責任があります。


「成果主義vsらしさを育てる」 マネジメントはどちらであるべきか

私はマネジメントはらしさを育てるものであってほしいと思います。

コンビニ人間でも、白羽は主人公をヒモとして稼がせるために、コンビニを辞めさせ他の仕事の面接に行かせました。
恐らく、主人公のらしさはおざなりにして、給与など自分に都合の良い条件で仕事を探したのかと思います。
その結果、主人公はやっぱりコンビニで働きたい、となりました。

給与という成果を先に出そうとすると、短期的に成功しても、長期的な成功、大きな成功とはならないように思います。
まず自分らしさを育てて行った結果、成果につながるというのが理想ですね。


おわりに

自分らしさを強く持って、上手く立ち回ってどこでも自分らしさを発揮できる人もいますが、そうでない人もいる。
自分らしさってどう育てていけばいいんでしょうね、、

あれこれ悩んで移住して、転職して、前に進んだ気になっていたけれど、また同じ悩みに返ってきてしまいました。


2021/1/24追記
村田 沙耶香さんの他の作品も読んでいるところですが、「いびつに思える自分らしさを如何に表現していくか」という一貫性があるように思ています。
「しろいろの街の、その骨の体温の」おもしろかったです。


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