夏夜の火種
灯していた電灯をパチンと消して
どれだけ暗闇になるのかと試してみたが
此処より外にも電気が蔓延していて
真っ暗闇にはならないのだが
そのことに安堵している自分も居て
苛つく。
珠洲の珪藻土を切り出した七輪に
熾した火が炭を育てて熾火になり
その炭が小さな呼吸を繰り返しながら
赤赤と燃えている。
人の心臓の奥の奥にも
こんなふうに燃える思いがあったり
なかったり。
陽と火の熱さの違いを比べながら
ふつ、ふつ、ふつと
湧き上がるものの正体を探っている。
いっそ消えてしまえば
いっそ消してしまえばと
囁く声が聞こえるけれど
耳を貸したりしない。
手を下したりしない。
少し先に燃え上がるはずの火種を
失くしたりしない。
決して。
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