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28年でたどり着いた私のおせち(レシピあり)

「お母さん亡くなった後で喪中やけど、正月のごはんくらい、いつも通り食べようや」

28年前、母が亡くなって初めて迎えたお正月が、私が初めてひとりでおせち料理を作った年だった。ひとりで、と書いたが、当時25歳の私がひとりで作ったのは筑前煮と紅白なますくらい。母方のおばちゃんたちが年末に黒豆や田作り、ハムなどを持ってきてくれたのだ。父もデパ地下でちょっといいおせちを予約していて、兄夫婦が来た日には豪華な食卓となった。その年から、年末になるとおせち料理を作る。

品数は増えたり減ったりした。作り方も、『3時間で5品』『4時間でできる黒豆』など時短おせちを作った年も続いたが、この5年ほどは、定番のものだけを2日半ほどかけてゆっくり作るようになった。そうして作ったお煮しめや黒豆は、年老いた父、夫の両親に喜んでもらえた。

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昨年2月に義父(夫の父)が亡くなったので喪中ではあるが、「黒豆炊いて、にしめだけでも作ろか」と思い、少しずつ材料を買い揃え、(荷物持ち要員)息子を連れて買い出しに行ってきた。そう。おせち料理は、買い出しや材料揃えるところから始まるのだ。

前ふり長くなりそうなんで、そろそろ本題。今年のおせち料理を作り方リンク先とともにご紹介。まずは、黒豆から。

黒豆 「黒豆三日」土井先生の作り方

「お正月用に煮るなら、こっちの黒豆がいいです」

12月最初の日曜日、イベントで訪れた糀家川口さんで川口さんにお勧めしてもらった黒豆。

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黒豆を毎年炊く友人と半分こした。それでも600円。安すぎるよね。川口さん、いつもすんません。

おせちで最初に仕込む黒豆。1日目の夜、まず洗って煮汁につけるところから。

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きれい〜! 黒豆、きれい!! 毎年同じことを言うてしまう。

土井先生の作り方通り、お水と調味料沸騰させた中に洗った黒豆を入れて、一晩おく。

2日目。朝から煮始める。アクを丁寧に取る。今回はいつもより丁寧めに取った。あとは弱火でコトコト。私は5時間で一度味見して硬さを確認する。今年はいつもより長めに炊くことにして7時間弱で火を止めた。

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豆の味がしっかりとする。3日目は寝かせる時間。ここでさらに味が深くなる。

テレビで、人気のないおせち料理1位黒豆 というテロップを観た息子が、

え? みんなおかしいんちゃう? 黒豆めっちゃ旨いやん。

と言っていた。私が煮る黒豆をずーっと食べ続けているので、この味が当たり前になっているんやろうなあ。当たり前が続くと思いなや、とそろそろ言うておこうと思う。

くわいを食べて芽を出そう

「こっちでは見ないわねえ」
「あんまり食べないからねえ」

横浜に越して来て最初の年末、くわいを求めて自然食品店へ行くと、店長さんとお客さんにそう言われた。そうか、くわいは関東ではあんまり食べんのか。

そう思っていたが、2年目以降、少しだけ見かけるようになった。そして今年、横浜産のくわいが買えた。

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子どもの頃から、兄も私も好きなくわい。あんだけ食べたけど、果たして二人とも芽が出るのはいつなのか。まあそんなことはええとして、早速下ごしらえ。

皮をむいて、一晩水につけてアクを抜く。

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一晩水につけるのは、アプリ『土井善晴の和食の』で土井先生が言うてはった。実は一晩つけたのは、今年が初めて。翌日、お出汁と酒、味醂、薄口醤油で炊いた。

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これもまた、煮汁と一緒に置いておく。一つ味見してみたら、いつもより独特の苦味が薄れて食べやすくなっていた。

栗きんとんは20分で

さて、「おせち料理、こんなに丁寧に作らはるのね」と思われる方もいるかもしれないが、全ては無理。これと並行して、いつもの晩ごはん作りもあるのだ。なので、手を抜けるものは手を抜く。そのひとつが、栗きんとん。毎年20分くらいでさっと作る。

まずは、さつまいもの皮をむいて、鍋に少量の水を入れて蒸し煮にする。

柔らかくなったら水を捨てて、粉吹きっぽくする。

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その鍋に、栗の甘露煮のシロップを少量入れて、ハンドブレンダーなどでペーストにする。好みの柔らかさと甘さになったら栗を混ぜて完成。

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甘さは欲しいがこれ以上シロップは入れてたくない時は、お砂糖を足している。
子どもの頃、裏漉し器で毎年裏漉ししていた。あの苦労はなんやったん? と思うくらい簡単。次も簡単な定番おせち。

平野レミさんより手を抜く マーマレード田作り

初めて作った時、夫がえらい気に入った。以来、毎年作っているこの田作り。

それまでは、みりんと醤油で味つけしていたが、柑橘の香りが爽やかで食べやすい。以来、マーマレードで作っている。今年はみかんを買った時のおまけでもらったみかんジャムがあったので、そちらを使ってみた。

レシピ通りに、電子レンジでごまめとくるみをチンする。ここまではレシピ通り。

私はここからさらに手を抜く。レミさんレシピをさらに簡単にする。洗いものを増やしたくないので、フライパンにクッキングシートを敷いて、そこにみかんジャムと醤油を入れて、ふつふついわしてとろみが出るように優しく混ぜておく。とろっとしてきたら、くるみとごまめを入れる。よく絡めたら完成。クッキングシートごとフライパンからおろして、ざっと広げて冷ます。

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晩ごはん終えて、お風呂に入る前にささっと作った。栗きんとんと田作り2品は簡単に作ることで、かなり楽になれる。そして最後のおにしめへ。

辰巳芳子さんのお煮しめ

5年ほど前から、お煮しめはこちらの本に掲載されている作り方を倣っている。

初めて作った時、その作り方に驚いた。

煮汁を繰り回すので無駄がない。
鍋とフライパン3つくらいあればできる。
順番に炊いていけば、コンロの口が2つあれば十分。

我が家の狭い台所にぴったりだった。

それまでお煮しめは一気に一つの鍋で炊き上げる「筑前煮」方式だった。母もその作り方だったが、一つずつ炊くお煮しめを作る年末もあった。父、兄と私はそちらの方が好きで、母の料理については厳し目だった祖母(母の母)も、「上手に炊けてるやん」と気に入って食べていた。料理がプロ並みにうまかった祖母は、筑前煮方式ではなく、一品ずつ別々に煮る『お煮しめ』を作っていた。

毎年残るが、お煮しめにすると残らない。「美味しいのわかるけどな、お鍋ぎょうさん使うから大変やねん」と、母はあまりやりたがらなかったが。母がこの作り方を知っていたら、もっと楽やったやろうなあと思う。

そんなお煮しめ。辰巳芳子さんのレシピとともにご紹介。私の場合、忠実ではなく、かなり自分に都合よく変えているが(こっそり)。

お煮しめ第一群 椎茸→鶏団子→ごぼう→こんにゃく

まずは椎茸を水で戻して炊く。その間に鶏団子の用意をしておく。

なんだか前の週から肉団子ばっかり作っている気がするが、とにかく作る。首骨はないので省略。粉もかたくり粉を使った。

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私はおっきなフライパンを使って炊く。炊き上がったら、この日は終了。フライパンに入れたまま味を染み込ませておく。

翌朝はごぼうからスタート。

鶏団子を引き揚げて、脂などをきれいに取った煮汁を使う。そこに新たに調味料を少し足してごぼうを煮る。

レシピではごぼうを煮るまで2回下茹でがあるが、私は1回だけ。昆布と梅干しを入れたお水で下茹でして、そのあと鶏団子の煮汁と調味料を合わせてた煮汁で炊いていく。

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ごぼうがやわらかく、いつもよりちょっとよそいきの味になる。最後はこの煮汁でこんにゃくを煮る。

こんにゃくを手綱にするのは、子どもの頃からずっとやってきた。手が覚えている作業は考えなくても手が動く。

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ごぼうの煮汁と調味料で炊いたら完成。さあ次は第二群。

お煮しめ第二群 さといも、れんこん にんじん

辰巳芳子さんレシピでは、ごまめを炒った後のお鍋で焼き豆腐を炊き、そのあとさといもを炊く。私は焼き豆腐はお煮しめに入れる習慣ない為、さといもから始めている。

次回は焼き豆腐からやってみようかな。さといもが炊けたら、次はれんこん。

れんこんも丁寧な下準備がある。酢水にとって、素揚げ。これはちゃんとやった。

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素揚げしたら油を切って炊き始める。

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一度、素揚げなしで炊いたら、明らかに味が違っていた。以来、この下準備だけは省略しないようにしている。さあ、最後のにんじん。

これは煮汁の使い回しはなし。昆布だし、梅干し、お砂糖、塩、薄口醤油で炊く。ほんのり梅干しの酸味があり、食べやすい味になる。こうして、おせち完成。

今年のおせち

喪中でもあるので、お重ではなく、ふだん使いの皿に盛り付けた。

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夫は鶏団子がいちばん好き。味があっさりめなので、食べ飽きずに食べられた。

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にんじんの赤が綺麗に仕上がった。れんこん、さといもも、いつもの煮物とは違うちょっとよそいきの味。それだけでも、特別感がある。

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しいたけは息子が嫌いなので毎年少なめ。くわいはシャクっと歯応えあり、一晩水に浸けた効果でクセがいつもより抑え目になって、美味しくいただけた。田作りは例年通り。ほぼ味は安定。

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黒豆も綺麗に仕上がった。噛んだ時、ねっとりする黒豆に仕上がっていた。デザートなどにアレンジしてもいけるかも。余った分は冷凍しておいて少しずつ使おう。例年通り、息子がいちばんよく食べていた。

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栗きんとん。出しても、出しても、私は栗が食べられない。なぜだ。夫が栗きんとん好きと今年初めて知る。知らなんだ。来年はもちょっと多めに作ろうかね。

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夜はいただきものの美味しい日本酒と一緒におせちを頂いた。そうか。おせちって、白ごはんにあうおかず、ではなくて、お酒のアテなんやなあ。美味しい日本酒と作ったおせちがよう合うた。夫と私、それぞれおちょこ2杯ずつ飲んでおしまい。良い元旦の1日が終わった。

おまけ お出汁の取り方

お煮しめを作る前にやるのが、お出汁を取ること。いろんな取り方があり、辰巳芳子さんのレシピもあるのだが、私は元エコマルシェの深野さんご夫婦に教えていただいたやり方で昆布だしをとった。

昆布だし

1リットルのお水に5センチ角の昆布1枚を使っているが、昆布にもよるのでその辺はお好みで。お鍋に水を入れたら火にかけ65度まで上げる。そこで昆布を入れて約20分。味見してちょうどよかったら昆布を引き上げる。

1番だし(出汁パック使用)

本来なら鰹節を使うのだが、今回は「昆布と鰹節」だけを使った美味しい出汁パックを使ってみた。昆布だし半分を沸かして出汁パックを入れ、中火で15分ほど。いつもの1番だしとかなり近いものができた。使う出汁パックによっては鰹の種類や昆布と鰹節の配合も違うんやろうなあ。

このお出汁はお煮しめに使ったり、元旦のお雑煮、茶碗蒸しに使った。

今年は普段から、もちょっとちゃんと、お出汁取ろうかなと毎回反省するのがおせち料理を食べた時である。今年はいかそう、その反省。

美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。