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私と息子がみつけた、子育てのこたえ


息子が生まれたとき。初めての「夫婦で」子育てが始まった。

元夫と離婚したとき。今度は初めての「ひとり親」子育てが始まった。

初めてのことには、不安がついてくる。自分以外の命を預かる「子育て」は、その不安は大きい。

そこに「ひとり親」というのも加わった。

不安はさらにふくらんだ。

息子が大人になるまで、私はどうやって育てたらええんやろ。

両親のいる家庭で育った私は、「ひとり親家庭」を経験していない。子どもの頃も、そして15年前離婚した頃も、身近に離婚経験者もいなかった。離婚をカミングアウトしている人も、私の周りにはいなかった。

参考になるものは、なにも持っていなかった。


「離婚後の子育て」「子どもと離婚」といった本もそ図書館で借りてきて読んだが、「起こるであろう問題」が延々と続き、気分が暗く重くなったので全部読まずに返却した。


息子を育てるのに、大事なことは何なんやろ?


探して、見つけて、やってみて、やめて。そんな日々のなかで、私の子育てで大事なことをみつけた。それは息子が18歳になった今でも、大事にしていることだ。

自分のことは自分で決める。


本でも、誰かの言葉でもなく、
私は毎日一緒に暮らしてきた、7歳の息子に教えてもらった。それは、初めて行ったユニバでのことだった。

●長い長い、ひとり親子育ての始まりの頃


離婚直後、毎晩泣いて、週末パパんちから帰るとまた泣いて。私の中の息子は、そこから成長していなかった。

離婚で傷ついた息子の心を、私はどうやったら癒せるんやろう?
小学生、中学生になって、悩みがでてきたとき、それが親の離婚が原因で、親に話せないことやったら、誰に言うたらええんやろ?

今ならわかる。

2年経っても、小学生になっても、先生によう怒られるやんちゃな子になっても、私の中には小さい息子がわんわん泣く姿と声がずっと残っていたのだ。

そして、起こってもいないことを悩み、不安になっていたのだ。

うちと同様ひとり親家庭で生活している「ともだち」がいたほうがええやろか。これから大きくなって、同じ境遇で育った仲間どうしやから、相談できることもあるかもしれん。

離婚後、息子と二人の生活が落ち着いた頃、住んでいた行政主催の「ひとり親家庭」対象のイベントに参加したり、当時の私にとって唯一の「ネットコミュニティ」であったmixiのひとり親家庭グループに入った。

息子に同じ境遇で育った「なかま」を探そうと思ったのだ。

行政主催のイベントは、ものすごく参加者が少なく、親子で簡単なお菓子を作って食べておしまい。

という感じだった。

おいら、もう行かへん!

週末の1日が潰れて、息子はかなり機嫌悪かった。

団体割引で安く入場できるので、親子でユニバ(USJ)に行きませんか。


そんな呼びかけをそのmixiのグループで見つけたのは、離婚してから2年経った頃。息子、小1の2月だった。

息子を誘うと「ユニバ?やった!行ってみたい!」というので、初めて「オフ会」的なイベントに親子で参加した。

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この子ら「みんな」頑張ってるんです。と言われた息子は「おいら、そんながんばってへんで」と言うた。


息子も私も初めてのユニバ。ゲートのでっかい地球が待ち合わせ場所。息子と私はワクワクやった。


同じグループの親子も集まってきた。話を聞くと、団体割引が使えるので、こうしてたびたび、ユニバに遊びに来ているらしい。なるほど。グループの強みやな。時間になって、代表の方たちが来られ、出席確認をした。全員揃ったのを確かめた代表さんから話があった。

事前にお知らせできておらず申し訳ないが、今回テレビの取材が入った。シングルマザー、シングルファザーの会についてインタビューを受けること、そしてありがたいことに、USJが今日訪れたメンバーを「招待」してくれることになった。
子どもさんにテレビがインタビューしたりするかもしれん。了承してもらえたらありがたいが、無理な人は言うてほしい。


息子に「どうする?」と聞くと、「おれ、全然大丈夫やで」というので他のメンバーたちと一緒にパークに入った。


2時間の自由行動後、指定の場所に来ること。そこで、テレビの撮影と簡単なインタビューが入る。


と聞き、息子と目当のアトラクションへ走っていった。

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↑当時はなかった、ホグワーツ城

お昼前になり、集合場所に息子とむかった。グループのメンバーと、テレビのおっちゃんら、ユニバの担当者さん数名がおられた。


「親御さんらは、ここで待っててください」といわれ、私は撮影の様子を見ていた。


動きのある画が欲しいのか、テレビのおっちゃんらに言われて、おにごっこが始まった。人見知りの息子は、全く楽しくなさそうだった。そこへ、スヌーピーがやってきた。おにごっこより断然盛り上がった。


取材の最後に、子ども全員で集合写真を撮りたいとリクエストがあった。


撮られたくない子はこの場にいなくてもいい。どうするか、お母さん、お父さん達に聞いてきてください、とグループの代表さんに言われ、息子が私のところにやってきた。


息子がきいてきたのは、写真に映る映らんではないことやった。


あーちゃん、おいら、「かわいそうで頑張ってる子」か?

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へ?なんで?

斜めからきた確認にちょっと驚いた。

「あのおっちゃん(代表のことだった)がな、テレビのおっちゃんに話しててん。」


息子から聞いたのは、たぶんこんな内容だった。

この子らはみんな、お父さんかお母さん、どっちかしかおらへんので、さみしいのがまんして、かわいそうなんです。でも、そんな境遇やけど頑張ってる子らなんです。

なるほど。

わかりやすいコメントだ。
やさしいお父さんなんやろうな。


息子は「みんな」って言われたから、自分もそうなんか?とひっかかったようだ。


そんで、あんたは自分のこと、どう思ってんの?
がまんして、がんばってる子か?

「うーん。欲しいもんはパパさんかおじいちゃんに買うてもらえてるし(あーちゃん(私)は含まず)。がまんしてへんし、そんながんばってへんなあ。」

そうか。そんで、自分のこと、かわいそうと思うか?

「思わへん!」

息子は大きな声で言うた。

離婚した当初から、息子は「かわいそう」と言われると猛反発した。


「おいらは、かわいそう違うで」

「かわいそう言うオトナは、おいらに言うてへん。自分に言うてんねん。」


と、きっぱり言っていた。小さい息子の「意地とプライド」やった。

そうか。そしたらな。
写真撮るときだけ「頑張ってる子」いう体でおろか。
終わったら、やめてええで。


「よっしゃ。わかった。おっちゃんらと、ユニバのひとらのおかげで、タダで入れたしな」

と、非常に納得のいく理由を言うて、息子は記念撮影の列に加わった。


たくましくなったよなあ。いろんな面で。

息子の姿を探しながら、しみじみ思った。


撮影が終わった後、ユニバの方からサプライズがあった。

「ひと家族に1個ずつですが」といって、子供たちにプレゼントが手渡された。

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子どもの手に持てる、小さなスヌーピー。「この大きさのスヌーピーのぬいぐるみ、めっちゃ珍しいんよ!」と、隣のお母さんがテンション上がってた。


チョコレート。あのユニバのおっちゃんにあげよっか。


この日はバレンタインデー。お礼を兼ねて代表さんにチョコレートをあげようと用意していたが、息子と相談して、ユニバのおっちゃんに渡すことにした。


「おっちゃん、ありがとう。」


息子がユニバのおっちゃんにチョコをあげると、想像以上に喜んでいただいた。

「ありがとう。うわー、これ、今年のバレンタインにもらう唯一のチョコレートやわ。」


「よかったですね!ゼロじゃなかったですね。」

と、横にいたスタッフさんたちも笑顔で話していた。

「スタッフさんたち、上司にはチョコ渡さへんねんな」

声に出さず、ちらりと思った。


午後からの時間は、グループを離れて親子二人で過ごすことにした。


息子と私は、「よっしゃ!今日は遊ぶでーー!」と、目当てのアトラクションへと向かった。


●友だちは自分でつくるで



冷えた体を温め、空っぽになったおなかを満たすため、パークのレストランでちょっと遅いおひるごはんを食べていた。

「あーちゃん、あんな」

と、息子は話し始めた。

お父さんとお母さんが離婚した子どもやから、友だちになるんとちゃうで。


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友だちってな、毎日学校で一緒に遊んで、笑って、けんかしたりしながらなるんや。

おいらは、友だちは自分でつくる。

そやから、もう、こういう集まりは、行かへんでええで。


そうかわかった。でも、ユニバはまた来ような。


「うん。おいら次、スパイダーマンがいい。あと、ジュラパ(ジュラシックパーク)も絶対乗る!」

パークはかなり混んでいて、その2つは数時間待ちだったが、「タダ」とおじいちゃんからもらったお小遣いのおかげで「順番抜かしができるパス(ファストパス)」が買えて、息子の行きたいアトラクションはすべて乗れた。

吹きっさらしのユニバ。日が暮れると冷たい海風が吹いてきた。
息子と私は大満足で、家に帰った。

子育てでわからんことは、息子に聞く。それでもわからんかったら、誰かに教えてもらおう。


この日から、私のひとり親子育ては、めちゃめちゃ楽になった。


息子のことでわからんことは、息子にきいた。

息子のことで決めなあかんことは、息子と決めた。

私が息子とのことで勝手に決めるのは、その日の晩ごはんと、年に1、2度の旅行先とその日程。とは言いながら、それらも息子のリクエストをきくこともあった。

「小さいころから、なんでもかんでも自分で決めさせるのはよくないよ」と他人さんに言われたこともあったが、

息子が自分で決めたら、まず間違いない。

と、確信を持っていたので、気持ちよく聞き流していた。


こうして。


「あんたはどうしたいの」

「あんたはどう思うの」

と、聞かれて答えて、決め続けてきた息子は、高校3年生。

「高校卒業したら大学いかんと、チャリで日本1周する」



「おれは、東大生になる!」



「やっぱり私立文系目指します」

と、高校卒業後の進路についても、(ブレまくりながら)自分で決めて、(めちゃめちゃマイペースに)未来に向かって頑張っている。

↓ぶれぶれ進路のこと、書いてます。

あの頃の自分に、このこたえを伝えたい。


と思ったが、やっぱりやめた。

長い時間をかけて、こたえを作る。
子育てをしていて、それが楽しいんやから。

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「正解」探しの受験生。


もうすぐ私の子育ても終わりだ。


美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。