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赤紫蘇ジュースとニュータウンのおばちゃん

初めて赤紫蘇ジュースなるもの飲んだのは、30代半ば。週に1回手伝いに行ってた、地域のおばちゃんたちが運営するカフェのようなスペースで貰ってきたのだ。

「あんた、飲んだことないの? 持っていき」と、空きペットボトルに入れてもらった赤紫蘇ジュースは、酸っぱくてちょっと甘くて、暑い日に汗かいて疲れた身体に染み入った。息子を保育所に迎えにいき、帰宅したら2人でまず1杯! が習慣になった。

赤紫蘇ジュース美味しかったとお礼を言うたら、おばちゃんは追加でくれた。翌年は、3人くらいのおばちゃんたちからも貰った。

「あの人にもろたん?」
「あの人はなぁ、クエン酸入れすぎるから酸っぱいねん」
「子どもに飲ますんやったら、●●さんのんと混ぜたらええわ」
「そうそう。あの人は逆にお砂糖多いねん」


まさかの赤紫蘇ジュースマウント会話が始まり、30代の私はドキドキしながら聴いていた。でも、どこのおばちゃんも

「うちのがいちばん美味しい」
「そやから、うちのん持って帰って子どもにも飲ませたげ」

と思ってたのがよくわかった。

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赤紫蘇ジュースをくれたおばちゃんたちは、「団地やからベランダ狭いし、梅干しは仕込めへんねん」と話してた。

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あれから10年以上経って、あのおばちゃんたちの中で「若手」と言われてたおばちゃんと同い年になった。6年前から赤紫蘇ジュースだけでなく、梅干しも仕込んできた。今年は久しぶりに、梅酵素シロップ、初めて梅のピュレ、梅醤油も仕込んだ。

へー!あんた、梅干しつけてんの!
梅はな、毎年仕込まな家廃る言うで。頑張って仕込みや。
梅シロップは甘すぎやな。
赤紫蘇は酸っぱいわ。
混ぜたらちょうどええな。

なんて、好き勝手に言われそうやなと思いながら、混ぜて飲んでいる。


おばちゃんたちが住んでたニュータウンは、すっかりマンションだらけになった。あのカフェがあったエリアは、これから再開発されると知った。

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紫蘇ジュースを飲んだ息子が、

「なんで懐かしい味がするんやろなぁ」

と言ってた。

おかんの味ではなく、ニュータウンのおばちゃんたちの味が刷り込まれていることは、黙っておいた。

美味しいはしあわせ「うまうまごはん研究家」わたなべますみです。毎日食べても食べ飽きないおばんざい、おかんのごはん、季節の野菜をつかったごはん、そしてスパイスを使ったカレーやインド料理を日々作りつつ、さらなるうまうまを目指しております。