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歩き遍路の話27 大好きな文楽の世界へ

11月12日

遍路再開5日目。約26km。

高松市内のホテル~84番・屋島寺~85番・八栗寺~86番・志度寺~宿。

このあたりの日記には、本当にシンプルなことしか書いてない。
精神的につらいことがあまりなかったんだろうな。それか、書くのがめんどくさくなってきてたか。
まぁ、両方だろうけど。

屋島寺と八栗寺は連続していて、それぞれ小さな半島の山の頂上に登るような感じ。屋島寺に登って下りて、すぐ八栗寺に登る。

これが地味にきつかった。

歩き遍路も半分以上を終え、この頃の私は平坦な道なら時間がある限りいつまでも歩けるような感じになっていた。むしろ止まって座ったり何か作業をしようとすると、そっちのほうが痛い。完全に歩き続ける脚になっていた。

でも坂道・山道は相変わらず大の苦手で、ほんの少しの登りでもゼェハァ息切れする。

だからこの二つの札所は、そんなに標高は高くないけど、結構きつかった。標高の高い横峰寺と雲辺寺を経験していても、きついものはきつい。


イチョウの葉っぱの絨毯が迎えてくれた屋島寺


屋島寺の参拝を終え、山を下りようとしたときの、この景色!この光!
絶句して、しばらく見惚れていた


八栗寺の手前にある接待所で

屋島寺の山を下りて、八栗寺の山を登り、ハァハァ言いながら、あと1kmのところに接待所があった。

んーどうしようかなぁ、あと1kmだしなぁ。と思って悩みつつ素通りしようとすると、奥から女性が出てきて声をかけてくれたので、ご厚意に甘えて休憩させてもらうことにした。

そしたら次から次へとお接待が出てくる。この写真の後にも確か何か出てきた。

有り難いけど、私はあまりたくさん食べられないので少し困る。たしか昼食の直後だった気がする。少し食べてお腹いっぱいになり、残りはポケットに入れて道中のおやつにさせてもらった。

お接待の量にこだわらず、一人で黙々と歩いていると、こうして「お接待」だと言っていろんな人が声をかけてくれることに癒される。

単純に道端で「がんばって」と言われるだけでも、そのとき自分が精神的にも体力的にも参っているときなら、その有難みは倍増。

いろんな人と会い、いろんな人と話すので、それで疲れるときも、泣きたくなるときも、泣いたことも、心が荒むこともある。それでもまた人との会話によって、励まされる。

こうやって気軽に声をかけてくれることで救われたことも多い。出会えた人も多い。

だから私も、気になる人に声をかけるのをためらうのを止めた。この人に興味がある!と思ったらどんどん声をかけるようになったのは、多分遍路を終えてからのほうが、以前よりも多い。もちろん緊張することもあるし、相手が嫌そうだなと思ったらやめるけど。(同じようなこと以前も書いた気がするけどまぁいいか)

八栗寺の山門


志度の町
86番・志度寺
志度寺の山門

さて。86番札所・志度寺。
ここは私が全部の札所の中で、一番楽しみにしていたお寺だ。

町に入ったときから、胸が高鳴る。
お寺の前でも、わくわく。どきどき。
ついに来た…!という感じ。何がそんなに楽しみだったかって。

愛媛県内子町の内子座のときにも書いたが、私は人形浄瑠璃・文楽が大好き。大阪に住んでいたとき、国立文楽劇場で行われる全文楽公演に毎回足を運んでいた。(とはいえ、めちゃくちゃ詳しいわけではないし、すごくたくさんの演目を見たことがあるわけではない)

文楽の演目に『花上野誉碑 志渡寺の段』(はなのうえのほまれのいしぶみ しどうじの段)という演目がある。漢字は少し違うが、志度寺を舞台とした演目だ。(ちなみに私はまだこれを見たことがない泣)

あるとき、有吉佐和子の小説『一の糸』を読んで、そこに出てくる三味線弾きにものすごくときめいた。私の中で推しの三味線弾きのイメージで読み進めた。

その三味線弾きが『志渡寺』を弾くシーンが物語の後半にある。その描写が美しくてかっこよすぎて痺れて、読了後しばらく余韻に浸っていた。

(以下、物語のネタバレ:志渡寺の段の三味線はめちゃくちゃ体力を要する「難曲」と言われ、登場人物の私が好きな三味線弾きは、舞台の千秋楽で曲を弾き終えた後に死んでしまった)
実際、明治時代に舞台でこれを弾きながら亡くなったという巨匠もいるらしい。(逸話?)

そんなわけで、私の歩き遍路は別にそれが目的ではないにしろ、ついにその志度寺に来たんだ!という気持ちでいっぱいだった。


本堂に西陽が神々しく差していた
境内は広く迷路のようで、緑がいっぱい

たちまち88の札所の中で、志度寺が一番好きなお寺になった。


さて、参拝を終え、コンビニに寄って宿にチェックインをする。

コンビニで晩ごはんを買ったとき、くじでコーヒーが当たった。

コーヒーは大好きなのだが、この時期、寒くて朝と昼間にコーヒーなんて飲んでいたら、ただでさえ道中トイレを見つけるのに必死で半泣きなのに、余計トイレに行きたくなる。ので、ずっと我慢していた。

でもこのときはちょうど宿に入る直前!タイミングばっちり!くじ運もばっちり!で、超嬉しかった。(今は豆から挽くのが当たり前になったので、缶コーヒーは全然美味しいと思えんが…)

そんな最高の一日の締めくくり。

宿の部屋で

あ、そういえばこの日だったかな?テレビでシンゴジラをやってて、原発どーのを考えながらしっかり観た気がする。



今回はめちゃくちゃ長く書いてしまいました。

今回も読んでくれてありがとうございました~。

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