生まれて初めてガチの野良猫を保護した話⑫
ちゃんと分かってる
口の痛みが和らいだしっぽは、我が家の猫たちの中でも一番、というくらい甘えんぼな子になりました。朝、カーテンを開けにしっぽの部屋にいくと、小さな声で、くうん、くうん、と鳴きます。まるで、寂しかったよ、会いたかったよ、と言うように。
えつこさんには、LINEで毎日何本もしっぽの動画を送っているのですが、あるときこんなメッセージが。
「さっき送ってもらった動画で、しっぽ、お返事してるよ! ますみちゃんが名前を呼んだら、小さな声で『にゃあ』って」
見返すと、ホントだ、私が名前を呼んだあとに、ほんのわずかに口を開けて『にゃあ』って鳴いてる。偶然? いや、これは確実にお返事だと、えつこさんはわざわざもう一度、LINEに書いてくれました。試しに、しっぽ、と呼びかけてみると、なあ、と口を開けるしぐさ。
それは私にとって、胸がきゅっとなる出来事でした。公園で会ったときからずっと、何度も名前を呼び、たくさん話しかけてきました。「伝わらないだろうけど…」と思ってたのに、自己満足のような気がしてたのに、ちゃんと聞いてくれてたんだ。緊張の連続の中でも、『しっぽ』という自分の新しい呼び名を覚えるくらいに。
どうか、猫を捨てないで。
そのとき、改めて思いました。以前、獣医さんに言われて印象深かった言葉があります。それは『猫は、飼い主の3倍、飼い主を見ています』というもの。私たちが猫を見ていないときでも、猫の方は、3倍長い時間、私たちを見ているという統計があるそうです。ただでさえ、人間の1日が猫にとっては4日に当たるのに、さらに3倍! どれほどたくさんの時間でしょう。
たぶん、飼い主をじっと見つめながら、しっぽはちゃんと分かってる。捨てられてしまったことも、愛されなかったことも。そしてもちろん、大事にされたらそのことも。だから、猫を捨てないでほしい。猫なんだから野良になって生きるでしょなんて、安易に思わないでほしい。
小さくお返事するしっぽを撫でながら、そんなことを思ったのでした。
(ちなみにこれは、初めてブラッシングに挑戦した直後のしっぽ。写真だと伝わりづらいですが、顔まわりがほわっほわに。ブラッシング、お気に入りになりました)
お友達になれる?
さて、しっぽは我が家にだいぶ慣れました。それなら、いつまでも小さな部屋の中に入れておかなくてもいいのでは。うーん、でもなあ。
我が家には、4匹猫がいます。全員元野良猫で、譲渡会などを通じてやってきました。それぞれ性格はちがうけど、気のいい子たちではある、と思います。ただ、しっぽは外で暮らしていたころ、地域の猫に馴染めず、植え込みに隠れっぱなしだった経緯があります。きっと、「猫が嫌いな猫」なんだろうなあ。
「猫同士を会わせるときは、いきなりじゃなく、最初は扉越しに、気配だけ感じさせるの。ただ、しっぽの場合は、すでに2ヶ月家にいて、気配だけはたっぷり感じたと思うから、柵をつけてみましょう」
えつこさんのアドバイス。部屋の入口の扉を開けて、そこに柵を取りつけ、触れはしないけどお互いの姿は確認しあえる、という状態にするのだとか。大丈夫かなあ、怯えないかしら。心配しつつも、購入してみました。
こんな感じ。真ん中で観音開きできるようになっていて、奥がしっぽ部屋、柵のこちら側は、我が家のリビングです。
さて、いよいよ我が家の猫たちと対面です。双方どんな反応をするんだろう。友達になれるのかな…?
我が家の猫たちとのエピソードはこちらに。
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