生まれて初めてガチの野良猫を保護した話⑬
はじめまして、しっぽです
心配8割、好奇心2割くらいの気持ちで、私は、柵をつけた状態で、我が家の猫たちとしっぽを会わせてみました。その反応は、それぞれまったく違ったものでした。
最初は、我が家で一番おっとりのんびり、ムードメーカーの男の子あっくん。
会わせた瞬間、まったく予想外のことが起こりました。なんとしっぽは、あっくんを見るや、自分から2段ケージを出て、るるる、と優しい声で呼びかけながら、まっすぐ近づいて行ったのです。
「猫って、お友達ができると元気になるものなの」とえつこさんが教えてくれたけど、本当に、見たことがないほど生き生きした動き。
驚いたのは、あっくんです。モフモフのお姉さんがいきなり近寄ってきたものだから、柵越しとはいえ目をまあるくして、小さく唸り出しました。でも、その動画をえつこさんに送ったところ、
「敵意はないからだいじょうぶ。唸ったあと、あっくんは背中を向けて行っちゃったでしょ? 猫は、敵だと思った相手には絶対背中は向けないの。しっぽはあっくんが大好きなのね」
とのこと。よかった。
次に会わせたのは、いたずらっこの男の子、ちょび。なんとなく、まずは異性からがいいのかしら、と思ってこの順番です。
あっくんほどの興味はないにせよ、しっぽはちょびにも友好的。落ち着いた様子で、まばたきします。猫のまばたきは、つまり挨拶なのだとか。ちょびも、興味津々、かつどこか優しげな態度。なあんだ、だいじょぶそう。
続いて、一番若くておてんばな、おもち。天真爛漫で、ちょっぴり傍若無人なところもある女の子です。
おもちは、しばらくしっぽを見つめていたかと思うと、うーっと唸り始めました。度胸がある子だし、しっぽにも果敢に向かっていっちゃうかも…! ところが、ハラハラする私の前で、しっぽはいたって穏やか。唸られても、すっと目をそらし、静かにしています。まるでおもちを包み込むような、大人な態度。
結局、数日後には、しっぽのケージの天井でおもち、2階でしっぽが昼寝するようにくらい、おもちはしっぽを受け入れたのでした。
最後に会わせたのは、聡明で慎重な女の子、シマ。
シマは、騒々しい猫がちょっと苦手なのですが、なにせしっぽはシニア猫。とにかく静かで、落ち着いた雰囲気をかもし出しています。最初は驚いた顔で観察していたシマも、やがて納得したのか、背中を向けて、とことこお気に入りの場所に歩いていき、くつろぎはじめたのでした。
かくして、私が心配していたようなことは何も起こらず、数日後、柵のストッパーを外して、出入り自由な時間を作っても、みんな穏やかに、ただパトロールを楽しむだけでした。まだ完全に心を許したわけではありませんが、4匹とも「ああ、あのこね」という表情で、しっぽがいても思い思いにすごしています。
弱点と美点
ああよかった、とホッとしつつも、私はここでも誤解をしていたんだなあと思いました。
一緒に暮らしながら観察してみれば、しっぽは、賢く、とっても甘えんぼで、ちょっと臆病で、穏やかで、他の猫にも優しい、そんな性格の子でした。
触れるようになってからは、何があっても絶対に爪を立てないし、じゃれて甘噛みはするけれど、ちゃんと力加減し、噛んだあとを必ずぺろぺろと舐めてくれます。撫でようとして手を伸ばすと、頭を何度もこすりつけ、ごろごろ喉を鳴らして私の手を抱き寄せます。我が家の猫たちに唸られても、穏やかな態度を崩さず、受け入れられるのをじっと待ちます。
長毛種であること、他の猫と争うような性格ではないことは、外の世界で生きるにはきっと「弱点」になってしまうのでしょう。でも、こうして敵のいない環境に身を置いている今は、しっぽが持っているものはどれも素晴らしい「美点」として、キラキラ光って思えるのでした。
よかった。しっぽを保護できてよかった。こんなに仲良くなれて、知らなかった一面を沢山見ることができて、本当によかった。
私にとって今やしっぽは、愛しくて大切な、かけがえのない存在です。だからこそ、思いました。
私、しっぽの新しい家族を探さなきゃ。
我が家の猫たちとのエピソードはこちらに。
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