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反緊縮カルトと「日本スゴイ」

主にtittrerでの話なのだが、あそこにはいわゆる「反緊縮カルト」と呼ばれる魑魅魍魎が蠢いている。彼らはいくら日本が財政支出(国債の増発など)を行っても絶対に日本が財政破綻することはない、という珍妙な説を唱えている人たちである。私は経済・財政のプロフェッショナルではない。なので彼らの主張の何が間違っているのかは一般論以上の批判はできない。もしかしたら、反緊縮カルトたちの言ってることにも理がある部分があるのかもしれない。今回のエントリーは「いかに反緊縮カルトがおかしなことを言っているか」を批判するのではなく(ちょっとはする)、反緊縮カルトと別の属性の持ち主たちに共通点があるのではないか、という考察である。

反緊縮カルトと日本スゴイ派(ネトウヨ)がは相性がいい

twitterなどを見ていると思うのがだが、どうも反緊縮を唱えている連中といわゆるネット右翼(ネトウヨ、つまり「日本スゴイ」的なことを連呼している人たち)との相性が良さそうに見える。いろいろ理由を考えてみたが思い当たる点は3つ。1つめは「自国の国力に対する過信」である。日本スゴイ派(ネトウヨ)は、日本のことを世界有数の大国であり本気を出せばこんなものではないぞ、みたいな考え方を持っている人が多い(ように見える)。確かに日本は経済的には世界第三位の大国だし、以外に知られていないが、武力的にもそれなりの大きさの実力機関(自衛隊)を備えた軍事大国である。科学や教育などの水準もそれなりだし、現状地球全体と比べた場合、上位にいる国家であることは間違いない。ただし過去のエントリーでも書いているように、この国はいま「財」の80年周期の絶頂期を滑り落ちているさなかにあり、もうすぐに底の泥水の中に着水することになる。かつてのような(バブル期のような)勢いは失ってすでに久しく「日本はすんごいだぞ! 大国なんだぞ!」みたいに威張り散らせるような感じの国ではすでに無い。だが日本スゴイ派は往年のブイブイ言わせていた時代のことが忘れられないのか、いまだに昔の金満国家的なイメージで日本のことを捕らえているような節がある。だからいくら国が支出をしても破産しないとホンキで思っているのではないか。

もう一点は「不安感を打ち消すため」ということである。人間は本当に自信に満ち溢れている時はそれをわざわざ口に出して言うようなことはしない。自信に陰りが見えてきたときに、自分自身や周りの他人に弱気に成っていることを悟らせないように虚勢を張るのである。日本スゴイ派にも日本の国力が相対的に落ちていることは薄々わかっており、なんとかしなくてはならないと思っている人間もそれなりにいるのだろう。なので生じた不安を打ち消すために「日本が絶対財政破綻するはずがない! 絶対にだ!」みたいな、やたらめったら財政破綻論を主張している人たちに対してナーバスになっているような部分があるのではないか。

3つめが「誇りの源泉が国家にしか存在しない」ということだ。普通の人なら家族友人やら趣味やら仕事やらの分野に誇りや安心感の源泉を持っていることが多い。振り返って、多くのネット右翼はどういう連中だろうか? 正直言って全体的に冴えないイメージがある。あくまでもイメージであって実体は違うのかもしれないが、あくまでもそのイメージ通り、つまり財産も地位も学歴もないような底辺層の真正ネット右翼(商売でネトウヨ的な言動をしているわけではなく、本心から「神国日本バンザイ」みたいな思想をしている連中のこと)にとって、誇りと安心感の源はどこにあるのだろうか? 

それは「(まがりなりにも)大国である日本に生まれたこと」だけなのである。誇りという精神的な支えがないと生きていけないのが人間である。普通の人が持っている学歴や家庭や趣味の分野で彼らは誇りを培うことが出来なかった。安心感を提供してくれる家族や友人・恋人もいない。彼らの誇りと安心感の源泉として機能しているのが「日本」という国家であり、その国家への忠誠心みたいなものが彼らただひとつの誇りであり、「日本という大国」に包まれていることでしか安心感を感じることが出来ないのである。なので万が一にでも日本の国が崩壊してもらったら困る。それは自分たち唯一の誇りの源泉をも同時に灰燼に帰すことにほかならないからだ。なので「財政破綻論」にも過剰反応する。「財政破綻=大国日本の崩壊=日本スゴイ派の誇りと心の拠り所の崩壊」だからである。なので彼らはどんな詭弁を弄すしようと、日本の財政が危機的な状態にあり、近い将来ハイパーインフレだか預金封鎖だがの強行的な処置が取られる可能性があることを絶対に認めようとしないのだ。

別に日本ヒドイ派(リベサヨ)の反緊縮カルトがいないわけではない

これまで反緊縮カルトはウヨクにしかいないかのような書き方をしてきたが、サヨクにも反緊縮カルトはいる。ただ上で長々書いてきたようにウヨクと財政破綻しない論は相性が良いので、相対的にサヨクの反緊縮主義者が目立たないだけなのだろう。

左派の反緊縮カルトといえば、有名どころだと「れいわ新選組」などが上げあげられる。あの政党は全体的には左派的な主張を掲げている政党だが、同時に反緊縮派の政党でもある。具体的に政策を調べたわけではないのでうろ覚えで書くことになるが、たしか国民全員に毎月何十万くばります、みたいな常識的に考えて「そんなカネどこにあるんだ?」と思ってしまうことも言っていた記憶がある。また個人をあげるなら「と学会」で有名?な物理学者(経済学じゃなくて)の菊○誠などもそうである。彼は左派だがハンキン主義者でもある。このように左方面にも反緊縮カルトはいるので右派の専売特許というわけではないのだが、上記の通り相性問題により相対的に少数派になってる面は否めない。

また同じ反緊縮、といっても右派と左派では主張の根本理由が異なるように見える。右派は国家の対面や自分の誇り(がなくなるのを認めることになる財政破綻論は絶対認めない)みたいな事柄が根底にあるものが多いのに対して、左派は福祉などの観点から「もっと国家は弱い立場の人へ財政出動を行うべきだ」と言っている論者が多いように見える(あくまでも私見であり、詳しく確かめたわけではない)。

ただどういった理由にせよ、私は反緊縮カルトの言い分に賛成はできない。以前のエントリーでも書いているので同じことを書くことはしないが、金利の急騰などがおこって国債の利子の払いすら出来ない事態にでも成ったらどうするつもりなのか。今は日銀が必死に利子を抑え込んでいるが、その力もいずれ限界が来る。そうなったら積み上がった有利子負債には莫大な額の利子がつくことになるわけでそれをどうせよというのか。普通に考えて何らかのクラッシュがやってくる、と考えるのが自然ではないのか。

このエントリーは反緊縮カルトへの反論ではなくあくまでも、彼らを観察するためのエントリーである。あまり熱くなると主題とは別の方向に進んでいってしまいそうなので、今日は短いがこのあたりで失礼させていただく。

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