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暗号資産の未来

今からもう10年以上も前に、市場に新しい金融商品が登場した。その名はBTC(ビットコイン)である。大人なら誰しも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。サトシ・ナカモトという謎の人物が、リーマン・ショック後に既存金融システムに対して疑問をいだいたことで作り出したと言われる、電子通貨のことである。
 
 今回のエントリーは暗号資産の仕組みについて長々語るためのnoteではないので、BTCについての説明は簡単に説明するに留める。BTCにはマイニングと呼ばれる仕組みが導入されており、このマイニングとは「ブロックチェーン」と言う「改ざんの難しい電子版の帳簿」に取引記録を刻み込むことで約束事の信憑性を高める仕組みになっている。そのブロックチェーンに新しい取引データを書き込む上で、送られてきたデータに不正などがなかったかを計算して、ブロックチェーンにその旨を書き込む役割をしているのがマイナー(実際計算しているのはGPUを始めとする電子機械)である。ちなみにブロックチェーンに対して同じ答えを返したマイナーが複数いる場合は早いものがちとなる(うろ覚え)。

暗号資産(仮想通貨)は持てるものをもっと太らせる

 このマイニング自供にはGPCなどを大量に集められさえすれば、誰でも参加できるため「民主主義だ」「平等だ」ともてはやされることがある(POW方式)。だがそれはあくまで建前で、実際には資本力のある大手の寡占状態になっており、零細個人が参入したところで儲けが出るどころか、電気代で赤字になるケースも珍しくない。結局ここでも持てるものがより金持ちになっていくような仕組みが存在しているのである。他の仮想通貨も似たりよったりで、詳しく解説はしないが、ある仮想通貨をより多く持っている人間に「利子」のような形でステーキング報酬をしはらう「POS(最近BTCに継ぐ規模をもつ暗号資産ETH(イーサリアム)がこれに移行したとかしないとか)」を始めいくつかの方式があるのだが、正直どれもこれも金儲け至上主義の匂いがプンプンして私はあまり好きに離れない。

マイニングは環境にわるい。

 暗号資産の問題点は強欲な資本主義の延長線上にあるからだけではない。マイニングは環境に悪いのである。というのも上で述べた通り、BTCのマイニングはGPUという部品を大量に使って行われており、これが相当の電力を喰い潰す。たしかマイニングブーム花やかかりしころ、世界の電力の0.数%もの電力を諸費していたという。0.いくつとかくと少ないよう錯覚を覚えるが、これは小国が費やする電力に匹敵する規模である。おそらく二酸化炭素などの地球温暖化ガスなども大量に放出されたに違いない。これは昨今流行りのSDGsに真っ向から歯向かうものであり、実際一部の環境活動家などはマイニングを禁止にするようあちこちの政府に働きかけを行っているようだ。

仮想通貨は送金が遅い

数年前、仮想通貨がテレビや新聞でも頻繁に取り上げられていた頃、既存のキャッシュレス決済に対してBTCを始めとする暗号資産のメリットとして「送受金」が早い、という旨の主張がなされていた。ただこれ、ちょっとでも暗号資産を送受金に使ったことがある人ならわかるとおもうが、こんなのでたらめである。これはBTC,EHE,XRPなど暗号資産の種類によって大きく変わる部分があるので、あくまでBTCに絞って話をしよう。BTCは有名な「便秘通貨」なのである。どういうことかというと、BTCに用意された「送金網」があまりにも貧弱で、混み合う時間にお金を相手に送ろうとすると、そのまま1日2日待ち、なんてのが当たり前のようにあった(念のため申し上げてておくと、このエントリーは数年前の経験をもとに書いているので、いまはもう改善している可能性もある。もしそうならこの項目は無視していただきたい)

手数料がたかい 


 そういう自体を回避したいなら手数料を上乗せして払えば優先して送金してもらえることもあるが、暗号資産もう一つのうりに「手数料が安い」という喧伝もあった。だが手数料を(しかもかなり高額な)を払うのであれば仮想通貨払いのメリット半減である。普通の銀行送金なりちまたのPAYサービスを使って法定通貨でも送ったほうがはるかに利便性も経済性も高いからである。

値動きが激しくて方方に悪影響がある

一般的に通貨には次の3つの役割があると言われている。

1)価値の指標(ほかと比べてこの商品はどの程度の値を持っているのかを数字でわかりやすく提示)
2)交換性(お店にお金を持っていけば、金額分と同じ商品を購入できる安心性)
3)価値の保存(溜め込んでいても、水が揮発するように価値が減ることがない、またはその程度が少ない)

暗号資産の大半は非常に値動きが激しい。秒の単位で何%も動いてしまうことも少なくない。もしこんな値幅の大きな暗号資産を支払いに使ったらどうなるだろう? まず価値の指標であるが、昨日まで10ドルだったお金が次の日には5ドルになっていた。また翌日には15ドルになってきた。これではこの暗号資産と、向こうの日用品のどちらのほうが価値があるのかさっぱりわからない。
 
また毎日のように激しい価格変動があるので、それをお店に持っていったとしても時価をいちいち調べなければならず不便である(あくまでも暗号資産を一度法定通貨に直して会計する場合)。そもそも暗号資産が単なる投機商品の段階から一向に社会へと広まらない大きな要因の一つは、価格の変動が大きすぎて、受け取る側(店)に拒否感があるというもの大きいだろう。ある日のレートが1枚100円だった暗号通貨で売った品物が、大暴落を起こして、価値が半分の50円担ってしまい、実質半額バーゲンセールを行うことになってしまった、なんてことになるのは目に見えているからだ。

そして価値の保存についてだが、数カ月間で価値が数分の一になることも珍しくない。暗号資産が価値の保存に向かないのは火を見るより明らかだろう。

暗号資産は「通貨」としてはいいとこなし。ではこのまま滅びるのか。 


個人的な意見だが、暗号資産は現代迎えつつある80年周期の終着点、搾取的資本主義が崩壊・ないし大転換の時期にぱっと出で生まれただけの時代の徒花に終わると考える。少なくともメインストリームの決済では使われない。そっちは今各国が実験を進めているCBDC(中央銀行デジタル通貨)の役目になるだろう。では暗号資産はどういった道に進むべきなのだろうか?
 私が一つ考えたのが、オンラインゲームと現実世界をつなぐ役割である。
昨今ネットゲームが大流行である。正確に言うと昔から流行っていたのだろうが、日本ではゲーミングPCなどの売れ行きが好調のようであり、プレイ人口も増加傾向にあるという。で、そのようなゲームの中にはゲーム中通貨、という要素を設けている開発元も多い。子供の頃考えなかっただろうか。

「ゲームのお金を現実世界に持ってこれたら大金持ちなのに……」

自分はしょっちゅうこの手の妄想をしていた。だが現代、これはすでに夢物語ではなくなっている。実際ゲーム中で使用されているコインが、現実の暗号資産取引所に上場しており、そこで売却し実際のお金に変えることができるゲームも登場している(ただし、必ずしも流行っているとは限らない)。
もしこの手の動きが今後広まっていけば、暗号資産は通貨のメインストリームになることはできなくても、仮想世界と現実世界との間を結ぶ存在になれるかもしれない。そして暗号資産取引所は異次元と現実世界を結ぶ銀行として存続していくかもしれない。私はこっちのルートのほうが余程現実味があると思う。現実世界で各国政府・中銀が発行している通貨に正面から立ち向かうのは難しい。多くの人は暗号資産に対する偏見や無知・無理解がまだ大きいし、仮に今以上に暗号資産が広まっていってしまった場合、政府も自分たちの既得権益を害されたり財政政策が効きにくくなったりと不都合な状況が生まれてしまうため、成長し切る前にどんな手を使ってでも強い規制を掛けようとするだろう。現に諸外国の政府・議会ではこの手の話は何度も議題に上がっている。政府は動きが遅いので実行に移されるのはもう少し先の話になるかもしれないが、本格的に放逐されるのは時間の問題だと思われる。

 だがゲームのような娯楽世界ならどうだろう?政府としても血眼になってぶっ潰す動機に乏しいと思うし、うまく操れれば新しい娯楽産業が花開いて、そこから税収という形で国家の懐に収入をもたらす金の卵を生む鶏に育てることができるかもしれないからだ。

暗号資産は現実社会とゲーム・娯楽などの仮想世界とで住み分ける

これが本エントリーの結論である。初めにも書いたが、初の暗号資産であるBTCが出て今年(2022年)で13年である。これが去年出てきたばかり、というのならまだ主要な決済手段に成長していく可能性もあっただろうが、えと一回り以上しても、未だに満足な通貨に昇格できないのだから、大人しく世界の共通通貨になるなどという夢はすてて、ゲームなどのニッチ分野に特化していくほうが現実的なのではないかと思う次第である。

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