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生きるためのぶつかり合い。『レ・ミゼラブル』とタロット『ソード 5』(ネタバレあり)

ぼくは吉本興業で芸人として活動しながら、占いもやっています。
占いの種類は西洋占星術とタロット占いです。
タロットカードの意味はなかなかに奥深く、時に難解でもあるので、ぼくはよくカードの意味を映画に例えてお客様に説明します。
タロットカードは全部で78枚あるのですが、当然ポジティブな明るいカードばかりではありません。中でも『ソード 5』というカードはなかなかシリアスです。

タロットにおいて『ソード』は知性の象徴で、自分の考えや主張を表します。『ソード 5』は「自分の主張を相手に強く打ち出した結果争いになったり人が離れていく」という結果を意味します。
うーん、ちょっと暗い(笑)
このカードが出たときにお客様にどう伝えるか、悩みのタネでした。しかし、先日観に行ったフランスの話題作『レ・ミゼラブル』の中にそのヒントが隠されていました。

ビクトル・ユゴーの名作『レ・ミゼラブル』の舞台となったパリ郊外の街モンフェルメイユは、移民が多く住むスラム街となっています。様々な文化が混在するこの街では、日々住民たちの衝突が繰り返されています。
なんとなく、ニューヨークとかロサンゼルスって映画やドラマの影響もあり、治安が悪かったりギャングがいたりするイメージがあります。そしてフランスのパリはというと、『パリジェンヌ』みたいな言葉から、オシャレで綺麗なイメージを持っているのはぼくだけではないと思います。でも、この映画で描かれているパリはそのイメージをぶっ壊してくれます。
まず、めちゃくちゃ黒人が多い。それこそニューヨークでネットもないもはや枠だけになったリングでバスケやってるストリートぐらい黒人だらけです。さらにその中でも、文化や宗教が混じり合っています。

日本も決して単一民族ではなく、様々な文化を持つ人たちと共存している訳ですが、それでもこの作品には正直圧倒されました。ここまでの混ざり合いとぶつかり合いは、日本ではなかなか実感できないと思います。なにしろ先輩警官が新人に「あの店員はこの間まで中東で首斬りをやっていた」とか普通に言います(笑)
善とか悪ではなく、そこに紛れもなく存在している文化のぶつかり合いをこの映画はリアルに描いています。

同じことが警察官にも言えます。この作品の警官は不良少年を殴ったり、「怪しそう」というだけで令状もなく黒人の家に踏み込んだりする、とんでもない奴らなのですが、彼らは別に甘い汁を吸おうとしたり、人種差別的な思想を持っている訳ではありません。そうしないと彼らの職務が果たせないのです。この街ではちょっとでも弱いところを見せると子供からも一瞬で舐められて、主張を通せなくなる。そうなると治安が守れない。そうならないために彼らは、実弾じゃないとは思えないくらいの爆音のゴム弾を撃ったりするのです。

この映画を観て、『ソード 5』のカードへの考え方が変わりました。
相手とぶつかったとしても生きるために主張を通すしかない瞬間が存在するということです。
全編を通してほとんどいい奴が出てこないのですが、悪いやつもいません。ただ、主張が違うだけ。
今後『ソード 5』のカードは「自己主張しすぎて他人とぶつからないように気をつけて」ではなく「他人とぶつかってでも自分の考えを通すときもあるよ」と読むことにしました。
そう思うとカードの中の剣を持つ青年の顔が、ラストで警官たちに向けて火炎瓶を持つ少年の顔に見えてきました
(笑)

https://youtu.be/Qr4zSibfDhM

#レミゼラブル #ラジリ #フランス #占い #タロット #運勢 #開運 #映画

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