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土壁の美はランダム、アバウト、ノープロブレムな出来事の中にある

土壁の仕上げは千利休が草庵を作ったところから始まる。利休以前の土壁は、縄文時代の竪穴式住居の土間、荒壁、泥小屋、版築、土塀、竈門・・・それらは土地に住むものの用としてただ存在していた。利休は初めて土壁の中に美を見出した。それは内面化された美として侘び寂びの世界の鑑賞の対象ともなった。

土壁の美はランダム、アバウト、ノープロブレムな出来事の中にあることを小林澄夫さんから聞いた。
ランダムとは土壁を形成する自然素材にはバラツキがあること。
アバウトとは土壁は水仕事で風によって固まるものゆえ、その素材も過程も自然のあり雪でできるものであるから大雑把でおおらかであること。
ノープロブレムとは土地壁が下地、中塗り、仕上げとゆっくりとしたプロセスを経ていくため、その過程で自由に変化しうること。土壁は職人にも自然にも開かれているのだ。

リフォームの現場で木ずり土壁中塗り仕上げを採用した。土は左官職人さんの指導を受けながら、スタッフの久保くんとクライアント、そして学生の手によって塗られた。木ずりの上に調湿作用が豊富な約12ミリの土が塗られているから、とても心地よい空間が出来上がっている。土は淡路島の半田、砂は名古屋の城陽砂を採用した。あとは藁しか混ざっていない。この部屋は寝室である。本来最も環境を良くしたい部屋を土壁にすることができて本当に良かったと思う。

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