続・虫の声

「なぁ、コマ兄」
護が帰って来て言った。
「オレは確かにコオロギを7〜8匹捕まえて持って帰って来たんだ」
そう言うと100円で買えそうな虫かごをぼくに見せた。
「しかし家にたどり着いたら半分になっていた」
護は睨むように虫かごを覗き込む。
「美子ちゃんが喜ぶかなぁとか、夜中に虫の声がしたら女神様が喜ぶかなぁとか、みんな用のお土産なら帰りに近所のスーパーでコマ兄用の安いお菓子を買わなくて済むかなぁとか思って捕まえて来たのにだ!」
「いや、お菓子は買って来いよ…というか共食いだねぇ…」
ぼくは言った。
護は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして言った。
「へ?共食いするの?」
「するらしいよ」
「…マジで?」
「マジです」
…何か気の毒なくらい落ち込んでしまった…
「まぁ…3.5〜4匹でも女神様も美子も喜ぶと思うよ」
護は、あぁ、そうだなと気のない返事をするのだった。

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