年越し

先ほどの話が終わった後も、タカシくんは神社で明日の準備や掃除を手伝ってくれた。

「ありがとうね、3人とも」
ぼくたちが一休みしていると、女神様がお茶を出してくれた。
「温かくて美味しい」
「久しぶりにちゃんとしたお茶を飲んだよ」
一人暮らしだとペットボトルで済ますからね、とタカシくんは言った。
境内も綺麗になったし、明日というか、今夜というか、まぁ、準備もできた。
「ちょっと早いけど、蕎麦でも茹でるか」
ぼくは言った。
「常識的な量で頼むぞ」
護が言った。
「蕎麦なんてカップばっかりだから楽しみだね」
タカシくんも言った。

お湯を沸かし、蕎麦を茹でる。
茹で時間は5分。
護は丼を準備し、タカシくんはお茶を淹れる。
美子がテーブルを拭く。
出来上がったら最終確認をしている女神様を呼ぶ。
忙しい中、唯一のゆっくりとした時間。
「すごく落ち着くね」
女神様が言った。
みんなでひとしきり談笑し、そろそろ出ようか、ということになったとき…
「コマ兄、とんでもない量の蕎麦が残ってるぞ」
「参拝客の皆様に出すんだよ」
ぼくは小さめの使い捨てのボウル型紙皿を見せる。
「成程…全部なくなるかなぁ…」
護は心配そうに言う。
「余ったらぼくたちの明日の朝ごはんだ」
「成程…ん…?ぼく『たち』?」
するとタカシくんも言った。
「じゃあ、僕も手伝うよ」
それから、ぼくたちは境内に出た。
新年のお客様を迎えるために。


今年1年ありがとうございました。
来年もまたよろしくお願いします。

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