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味の素冷凍餃子の"顧客のリアル"に向き合い続ける姿勢に感動した話

「顧客視点」という意味で面白い話があるので、書いてみる。

先日こんなニュースが流れてきた。詳しく読むと冷凍餃子がフライパンに貼り付いてしまうというSNS投稿を発端に、味の素が3520個のフライパンを回収し、分析すると言う狂気のような企画らしい。

その時のストーリーはこちら。

【勝村】事の発端は2023年5月11日に、生活者の方が「生姜好きのためのギョーザ」を焼いたらフライパンに張り付いたと、SNSに投稿していただいたことでした。今までも同様の投稿を目にすることはありましたが、その方は「味の素」「ギョーザ」としっかり書かれていたのと、ギョーザがフライパンに張り付いた写真も載せていただいていたので、何か返そうと担当者と話していました。
【勝村】ただ、あまりにも見事に張り付いていたので「どういうフライパンを使っているのだろう」と素朴に感じました。今はほとんどのフライパンにフッ素加工が施されていて、すごく調理がしやすくなっていますし、我々はそれをベースにきれいに焼けるよう製品開発をしています。そこで、その投稿の翌日にフライパンを提供してもらえないかとアクションしたところ、メーカーからそんなメッセージが出たということで、多くの反響をいただきました。

味の素冷凍食品のギョーザ、3520個の“使い込まれたフライパン”をどう活用?ひとりでも多く「きれいに焼ける」感動を

そして、フライパンの提供を呼びかけた結果、3000個超えるフライパンが集まったという。

【勝村】フライパンのご提供を呼びかけたのは金曜の夕方で、当初は2週間ほどの募集期間を予定していました。でも休み明けの月曜に出社したら、宅配業者さんから「1000箱ぐらいあるけど、どうしますか」と電話があり、それで慌てて「フライパンの募集を締め切らせてください」という案内を出しました。

【勝村】フライパンを送っていただくなら、代わりのフライパンがないと困りますよね。それに梱包するのにも手間がかかります。100個集まればありがたい、2週間あれば1000個くらいになるかも。それくらい集まったらすごいかな、と思っていましたが、まさか3日でそんなに届くとは思いませんでした。

味の素冷凍食品のギョーザ、3520個の“使い込まれたフライパン”をどう活用?ひとりでも多く「きれいに焼ける」感動を

届けるお客さんもすごい。確かに冷凍餃子は美味しい。日本中の情熱がここに集結したかと思い、感動したのであった。

その後の結果はnoteで報告されており、段ボールの箱の写真はインパクト大であった。このnoteも一つ一つ面白いので、ぜひ読んでいただきたい。

ということで、すでに味の素面白い、大手企業がこんなに顧客と一緒に事業を作っているのかと思い、感動したわけである。


なぜこの話を取り上げようかと思ったかというと、味の素の顧客目線は今に始まったわけではなく、昔からずっとだったということを伝えたかったのである。

すごく美味しく何度も食べたくなる冷凍餃子、今では「油」も「水」もなくて焼けるわけだが、油も水もなくて焼けるのだろうかと思ったことはないだろうか。そこにはそれなりの理由があったのである。

冷凍餃子が発売したのは1972年。それ以降、“永久改良”を掲げて、味覚やパッケージデザインをリニューアルしながら販売を続けてきたのが味の素の冷凍餃子である。

1997年にまず「油なし」で焼けるという、冷凍餃子革命が起きる。
そして2012年にはとうとう「水なし」に。このときのストーリーが面白い。

顧客のリアルを知るため、実態を把握しようと考えた味の素。まずリアルを見ようとする姿勢が素晴らしい。

改良に際して、味の素冷凍食品は原点に回帰した。「97年当時ですでに、『ギョーザ』に対するお客さま満足度は高かった。今後どのようにリニューアルを進めていくべきか議論した結果、思い込みは捨てて、調理方法についての実態を把握してみようということになった」。開発を担当したマーケティング本部家庭用事業部商品開発グループの川口篤氏は開発の端緒についてこう語った。

「ギョーザ」ハッとした瞬間、驚き与える商品が生まれた

そして、フライパンを持参し、目の前で焼いてもらうと、パッケージの説明が伝わってないことに気づく。確かに水の量は難しいだろう。

消費者調査では、実際に家庭で使っているフライパンを持参してもらい、「ギョーザ」を目の前で調理してもらった。観察すると、思いもよらない事が分かった。「水を目分量でフライパンに注いでいた」(川口氏)という。水を入れ過ぎると、ふやけた食感になってしまい、パリッとおいしい「ギョーザ」にはならない。従来の商品では「ギョーザ」を入れたトレイで必要な水の量が計れることができ、使い方はパッケージ裏面に書かれていた。しかし、そのことに気づくことなく調理されていた実態が浮き彫りになった
調査を通じて「お客さまに届けたいと思っていたパリッとした食感が、実際には届けられていないのではないか」(川口氏)ということに気づいた。
目の当たりにした消費者の調理方法に衝撃を覚えた川口氏などの商品開発グループは、群馬県にある研究所や関係部署と議論を重ねた。その結果、「最初から水を計らなくてもよい商品設計にすればいいのはないか」(同)との結論にたどり着いた。驚きの調査結果に加え、冷凍餃子の購入率は28%なのに対して、チルド(冷蔵)餃子は39%と、11ポイントの開きがある。まだまだ伸びしろがある」(同)とのマーケット調査が開発を後押しした。

「ギョーザ」ハッとした瞬間、驚き与える商品が生まれた

そのために、水を計らなくても良い商品設計を考え始めたわけである。2010年から開発しているので、販売まで2年かかっている。

2010年から油と水を使わずに焼ける「ギョーザ」の開発はスタートした。

誰でも失敗せずに、パリッとした食感を出すために編み出されたのが、「ギョーザ」の底面につけられた「羽根の素」だ。油や水分などの成分を含ませたもので、加熱すると同成分が溶け出し適度な水分で蒸し上げることができる。

「ギョーザ」ハッとした瞬間、驚き与える商品が生まれた

1日100個食べたり、調理したり命がけである。

求める食感と味わいを突き詰めるため、素材の配合比率などの微調整を続けた。「一日100個以上の餃子を食べたことがあった」(同)という。また、今回のリニューアルは家庭で最適な状態に調理できるようにすることが目的。そのため「食べるだけでなく、一日に100回以上調理することもあった。文字通り、“餃子漬け”の日々が半年程度続いた」(同)と苦笑いを浮かべた。

「ギョーザ」ハッとした瞬間、驚き与える商品が生まれた

その結果、2012年に「水」なしの冷凍餃子が発売されたというわけである。


こんなに顧客の現場に寄り添って一緒に事業を作られているのが素晴らしく、今回は紹介させていただいた。

ぜひみなさまも関連する記事を読んでいただきたい。

1年に1回ぐらいは改良しているようで、これまで通算50回以上改良されているらしい。二月発売の新商品ぜひ食べてみよう。

まだまだ完璧ではありませんが、数か月間、張りつきやすいフライパンでもキレイにギョーザが焼けるように検証を重ねてきました。

2月中旬頃より順次店頭切り替えを行いますので、皆さんぜひお試しください。

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