創作小説「現世旅行への俥夫の案内」
「お客さん、今度こそ。これが最後の別れになるといいっすね。」
腹掛に股引き法被を着た、いかにも体力があり自信に満ちあふれた俥夫(しゃふ)はしみじみとそう言った。
「そうですね。今度は行けるといいなあ。」
最初は珍しくて興味を惹かれた川も行交う人々も、川を渡る前にくつろぐ憩いの宿も全てが新鮮で興味深かった。
この俥夫が曳く人力車に乗りながら眺めるこの景色も、そりゃあちらでも良い思い出になるだろう。
しかしこう何度も見ると辛くなってしまう。
本来この景色を見るのは、一