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明日 ②

僕のペット、犬のテアも感染してしまった。

テアとはもう長い付き合いになる。
全くかわいらしくて賢くて最強で最高のパートナーだ。

だが、感染してしまった。

感染動物は殺さなければならない。
これもまた、誰が言い始めたかわからないが絶対的なルールだった。
理由としては、感染している以上拡大の恐れがあるからだ。
空気感染が主な感染なのかすらわかっていない状況で出来たできたルールを
妄信的に世界は信じ込んでいた。

テアを殺さなければならない。
わかってはいたがひどくつらいことだった。
3日以上泣いていた。

処分せずに数日たったころあることに気がついた。

まず、このZウイルスは感染した瞬間に感染対象を同種のみに限定させる。
例えば犬に感染した場合はその犬が他の犬への感染は瞬時に広がるが
その犬が人や猫のような他の種族に感染させることはなかった。

だから僕はテアによって感染することがなかった。

また、同種のみが捕食対象であるため他種を襲うことは滅多になかった。
もちろん動物としての防衛本能があるから、襲われた際の攻撃はある。
しかし、むやみやたらに、食事以外での攻撃や他種への攻撃は、
テアには全く見られなかった。

そして、日々の習慣を繰り返す習性も、
人間だけではなく、すべての種で行われる習性だった。

だから、僕とテアの関係が壊れてしまうことはなかった。

この崩れ去った世界でも変わらず、テアと僕は相棒でいた。
毎日散歩して一緒に遊んで寝た。
困るのは食事くらいだった。
ほぼ変わらない生活だった。
それでもテアは感染生物。
捕食対象は同じ犬のみになってしまう。

同種を食らうテアを見るのは少し気が引けた。
しかし、相棒であるならば仕方がない。
僕は、テアの狩りを手伝い、食事をする彼を見守っていた。
そうすれば、テアが同種を食らう罪をともに分け合えると思ったからだ。

こんな生活が続いて何日経ったかわからない。
何年経ったかわからない。
ただ感染者たちの動きである程度の曜日
(この世界じゃ曜日の概念が何になるかわからない)がわかるだけだ。

毎日、テアの起きる時間に起きる。
日課の散歩コースを回りながら少しでも非感染者がいないかを確認する。
当然いるはずもなく孤独を実感させられる。
テアが遊びたそうにしてるのを見て(昼頃なのかな)なんて思いながら
かまってあげる。
夕方になれば、コンビニやスーパーを物色しながらテアの食料も狩る。
とは言え僕は缶詰しか食べるものがない。
果物や煮魚、シーチキンなんかが食べれるから味気ないとは思はない。
それでも缶詰を毎日食べる生活には飽き飽きするしもし何とかなるならば
コメとかを食べたい。
日が暮れたら、好きな家で寝る。
何の変りもない。
ただただ、命を使っている。死ぬまでこうやって生きていくんだろう。

いつの間にか毎日を繰り返している。
世界は変わってしまったが僕の生活は変わらない。
ルーティンのように毎日同じように生活を繰り返す。
感染者なんじゃないかと思うほど。
それでも、これまで通りの食欲が、性欲が、睡眠欲が、
僕を人間たらしめている。

なのに、明日は一向に来ない。
来るのは今日の延長だ。

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