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読まれなかった本たちの遺場所



19世紀の名作も、僕の退屈な拙作も
君は読むことがないから
どんどん積まれていくんだ
そしていつの日か、燃やされちゃうんだ

力強く描かれた大航海だって
世紀の大発見だって
僕のどうしようもない人生だって
君の目には届くことがない

だって、君は本を読まないから

もちろん読んでほしいって思うけど
強制することは嫌いなんだよ
君が自発的に読んでくれることを祈るけど
誇るべき本だって埃が溜まっていくばかり

活字がかったるいんだろう?
映像の方が面白いんだろう?
そんなこと知っているよ
とうの昔から僕は気づいているよ

だけど小説を書くことしか
僕にはできなかったんだ
小説を書くことでしか
呼吸することもできなかったんだ

生きるって、難しいんだよ

さて、読まれなかった本たちよ
お前たちは無価値なのかい?
僕はそうは思いたくないけどさ
君の前では、ただの紙切れなんだ

そりゃ、YouTubeには勝てませんよ
TikTokにも、インスタグラムにも
テレビにもラジオにも勝てないだろうね
Netflixなんてもはや見向きもしてくれない

それでも、本だって生命が宿っている
偉人だって僕だって一生懸命書いたから
少しくらい貪欲になっていいのなら
僕たちの本を読んでください

でも、君は今日もスマホに夢中で
積み重ねられた本たちを指差して
「もうすぐ資源ゴミの日だよ」と言った
どんな本たちも、君の前ではゴミである

読まれなかった本たちの遺場所は、路上
読まれない本たちの気持ちは、無情
僕の描いたストーリーは、所詮夢想
だから僕は君とサヨナラして、

本を読んでくれる人が集う世界へ浮上する

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