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ドライブスルー 『ららら』



歪なアスファルト 朽ち果てた古書店

そびえ立つタワマン ピカピカに光る大理石

今日もたんまりと稼いだお金でドライブスルー

最高の品を手に入れるためエンジンを蒸す


いつしかこの世は金が全てになった

金が無ければ価値がないとみなされるから

金に執着するやつがわんさかと現れた

なんなら 金さえあれば恋さえ買えた


だが世の中には革命児がいたりする

いつもは変なこと考えてる変わり者

もしくはバイ菌とさえ揶揄されちゃう

嫌われているが恐ろしい餓鬼がいた


ある日 そいつが興味深いことを言った

金なんて無価値 もはやいらないだろうと

だから 金に対するあらゆる概念が消えて

金に縛られることのない世界を作ると言った


そいつに賛同する人間が増えるたび

金持ちが悪へと変化していった

そのうち金があることが罪であると教え込まれ

たくさんの金を所持すると辱めを受けるようになった


そのうち金が支配する世の中が変わっていき

いつしかあらゆるものが金で縛られなくなった

金持ちが偉い構図は見事に駆逐されてしまい

金で揉めることも殺すことも無くなった


そいつは気持ち良いほど笑っていた

嗚呼 金は人を不幸にするものだった

見てみろ 金に惑わされない民を

みんな 幸せそうだろう?


お前はどうだ 金が支配しない世界は幸せか?

そいつはポケットに手を入れて僕に尋ねてきた

どうだろう 僕はひとしきり考えるけど

一輪の花を見ていたらどうでもよくなった


平らなアスファルト 歴史ある古書店

誰もいないタワマン 埃が集る代理石

今日も配られたお金でドライブスルー

些細な幸せを手に入れるためエンジンを蒸す


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