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梟さえも驚く『月に帰ろうか』


梟さえも驚く。今宵も満月であることに。

おや、どうしてあの月は欠けないのか。
欠けることを嫌がっているのか。
それとも、欠けないことで我々を混乱させたいのか。
いずれにせよ、月は欠けるべきだ。
永遠に満ちることなど、許されぬ。
満ちては欠け、それを繰り返すから、
情緒ある宇宙の星と呼ばれるのだ。
それでも、どうしても欠けたくないなら、
私が齧ってみせましょう。

その梟は飛び、月が浮かぶ空を目指した。
しかし、梟の野望はあっけなく潰えた。
人間が生み出した飛行機に追突して、
梟は跡形もなくなった。

「明日も欠けぬよ、あの月は」
僕の祖母は窓辺から夜空を見上げる。
永遠に、満月であるよ。あの月にはその覚悟が伺える。
僕は聞いた。
「それは、何を意味するのだ?」
祖母は僕にわかりやすく説明するためにしばし悩み、それから答えを出した。
「我々人間の価値を破壊するためだ。それから、創生が始まる。あの月が望む、新時代の在り方に沿って」

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