帰り道（夏のまにまに）

　花火か。
　帰り道、俺は缶ビール片手に夜空を見上げる。
　久々に見たな。花火。
　そういや、ここ最近はコロナの影響もあったから、花火大会自体中止だったんだっけ？
　満開、UFO、シャララララって音がしそうな花火。
　赤、青、ピンク、翠、金。カラフルな花火。
　普段は真っ暗なのに、花火が上がるだけで夜に色が加わる。
　俺は缶ビールを飲んで、花火を見つめる。
　昔は家族で花火大会を楽しんでいたっけ。
　枝豆やらポテトやら焼き鳥やら買って。
　オレンジジュースを酒代わりにして。
　家族で乾杯！　なんてやっていたっけ。
　今は、一人だ。誰も乾杯する相手がいない。
　近くで若い家族が綺麗だねってはしゃいでいる。
　お父さんもお母さんも息子たちもご機嫌だ。
　俺はビールを飲みながら、しみじみ思う。
　本当に綺麗なのは、あなたたちだよと。
　花火か。
　俺は缶ビール片手に夜空を見上げる。
　華。来年は、もっと華のある人生を送ろう。
　そう思った瞬間、どでかい花火が上がった。