雨(『回顧する蚕』)
自宅に向かうバスの中で
僕は窓の外を見る
灰色に包まれた街
そこに降る雨
カッパを着た男が自転車で走る
水しぶきが上がる
僕は懸命に走るその男を見て
哀れに思う
憂鬱さを誘うこの天気が僕は嫌いだった
長靴を履く猫だってきっと雨を望まない
バスのライトが照らす冷たい世界を
一体誰が望むのだろうかと僕は心で嘆く
だけど僕の隣の子供は楽しそうにはしゃぐ
それはきっとその子供が持っている傘のおかげだろう
お母さんと降りてゆくその子供は小銭を入れて
傘をさしてスキップをしていた
僕は家に着いて タオルで頭を拭いた
今日も一日疲れた 雨なんて懲り懲りだ
そう思っていたが 次の日になってベランダに出ると
枯れていたはずの花が少しだけ上を向いていた
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