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『曖昧、色々、雲散霧消』(創作詩集)


曖昧、色々、雲散霧消



 

 曖昧、色々、雲散霧消
 ハイハイ、イロイロ、ハローハロー

 最近の問題は多様性の暴走
 色々な人々が 色々な価値観を口にする
 それ自体はとても良いことかもしれない
 だけど あまりにも線引きが曖昧過ぎる

 誰かにとっての正義は
 誰かにとっての悲劇
 たとえ自分が正しいと信じても
 それがすべてではないってこと

 多様性を主張するってことは
 それぞれの価値観を認め合うこと
 しかし現状はぶつかりあって
 互いに傷つけ合っている感じ

 人間ってのは想像以上に複雑
 だから分かり合えるなんて幻想
 たとえ同じ世界にいるとしても
 それぞれの住み分けは必要

 わかっちゃいるけど曖昧な関係
 わかった気になって色々な解釈
 そんなもの 全部霧払いしていこう
 曖昧、色々、雲散霧消

 昔はみんな分かり合えるって思っていた
 世界が一つになれるって信じていた
 だけど現実は随分と違っていた
 僕らは互いの個室を持っているべき 

 ハロー個性 バラバラでもいい
 ハロー人生 それぞれの道へ行こう

 わかっちゃいるけど曖昧な社会
 わかったふりする色々な真実
 そんなもの全部霧払いしていこう
 曖昧、色々、雲散霧消

 互いの家で互いに幸せになろう
 一つになる必要なんて毛頭ないから
 曖昧、色々、雲散霧消
 ハイハイ、イロイロ、ハローハロー


あえてね



 どうせ真面目に生きたって
 報われないってことを知ってる
 夢や希望を見据えたところで
 一寸先には闇が広がっている

 それでも突き進む あえてね

 期待したい若者が一人
 この街の片隅で佇んでる
 月の光さえ眩しいって
 目を細めたりしている

 あの外灯は何を照らすの? なんてね

 真新しいドアを蹴破っても
 未来が変わるわけでもない
 それでも前へ走り続けるのは
 立ち止まってる理由がないから

 あえてね 進むんだよ僕は

 かつての友はもういないけど
 僕が残した詩だけは残ってるから
 それでいいんじゃないって
 苦いコーヒーを啜りながら思う

 ピカピカの壁を殴り壊しても
 未来が変わるわけでもない
 それでも先を目指し続けるのは
 過去を振り返る理由がないから

 真新しいドアを蹴破っても
 未来が変わるわけでもない
 それでも前へ走り続けるのは
 立ち止まってる理由がないから

 あえてね 進むんだよ僕は

 進むんだよ僕は あえてね


味のないスパゲッティ


 絡めるはずのソースはなくて
 僕は無の状態で残されている
 どこにいるんだい味の濃い君
 味のない僕はなんともつまらないよ

 素で食べても美味しいが
 虚しくなるんだこの気分
 だから君の人生を注いで
 せめて僕に風味をくれないか?

 僕は味がないスパゲッティ
 素朴なだけで個性がない
 味気ない人生は面白くないよ
 やっぱりスパイスは必要だね

 素で食べても美味しいが
 虚しくなるんだこの気分
 だから君の人生を注いで
 せめて僕に風味をくれないか?

 僕に味をつけてくれないか?

 僕を完成させてくれないか?


雨降らぬ日々


雨降らぬ日々が続く
傘要らぬ日々が続く
しかし照りはない
生きない蛙が乾く

ある街で窓ガラスが割れる
次の瞬間車が爆破する
次々と窓ガラスは割れる
何台も車が炎上する

ただの一度でも見たくない
そんな悲劇が繰り返される
羽を捥ぎ取られた子供たち
羽ばたくことなく消えていく

私は今日も翠に囲まれている
血潮のような赤は見えない
それでも聞こえてくる哀の声 
誰かが最期に遺す言葉が響く

雨降らぬ日々が続く
傘要らぬ日々が続く
しかし何も降らぬわけではない
人為的に何かが降ってくる

雨が欲しい
恵みが欲しい
誰かの失望が潤うほどの
霖雨蒼生を望む

雨降らぬ日々が続く
傘要らぬ日々が続く
また爆弾が降らぬことを祈る
鳥が羽ばたける空を望む


未完成な舞台の幕開け


 

 この舞台は 未完成である
 ゆえに結末がない
 たとえば桃太郎
 あれは鬼を倒して終わる
 しかし この舞台の場合
 鬼を倒すことなく終わる
 あるいはカレーを作るとしても
 ルーを入れずに終わる
 それくらい未完成である
 そんなもの誰が見たいんだ?
 観客は完成を求めている
 完成したものを見て感性を動かし
 心からの歓声を上げるのだから
 しかし この舞台は未完成のまま
 エンドはない 故にモヤモヤが残る
 まるで曇天の日みたいなモヤモヤ
 手に届かない灰色を見て困惑する
 それから無性に腹立たしくなる
 そんな痛みを負って 最後は虚しくなる
 ハッピーでもなければバッドでもない
 だからこそ期待してしまう舞台
 未完成が故に罪深いこの舞台を
 僕は作り上げてしまったのだ
 あれほど完成したいと願ったのに
 未完のままステージが生まれてしまったのだ
 それを見せる大きな好奇心を許してくれ
 いかれた優しさを映させてくれ
 それだけでいい それだけがいい


こたつの中〜忌まわしき紛争〜誰もいない森


 こたつの中って不思議な気持ちになる
 まるで異世界に迷い込んだみたいで
 ほんのわずかなスペースなのに
 広大な宇宙に迷い込んだみたい

 そこで私は眠る
 私のために眠る

 目を開ければ 砂塵が舞い上がる世界
 誰かが叫んでいる 逃げろって叫んでいる
 次の瞬間 近くで爆発が起こった
 救いようのない炎に 誰かが悲鳴を上げた

 私は止めてって天に向かって言葉を放った
 それでも爆弾は構わず降ってくるのだ
 誰かが傘をさして身を守るけど
 容赦なく突き破ってくるのだ

 築き上げた文明が簡単に破壊されていく
 それを良しとする愚か者がいるせいだ
 私は何度もピースと叫び続ける
 それでもわずかな声は響かない

 何が正義か 時々わからなくなる
 もはや資本主義が 馬鹿馬鹿しくなる
 だから私は大切なイヤリングを
 思い切り踏んづけて破壊した

 破壊する 破壊される。
 何が正義? 何が正解?
 生命の息吹 愚かな選択を繰り返す
 いっそ吹き飛ばしてほしい 身勝手な人間を

 気づけば 私は深い森の中にいた
 周りも見ても そこには誰もいなかった
 私以外 誰一人としていないのだった
 ただただ 風で樹木が揺れているだけだった

 なんとも素敵な景色だなって思った
 テーマがはっきりとしているのだ
 ここは、誰にも侵されていない
 自らの命をたなびかせているだけだった

 嗚呼 私はここで詩を書き 歌いたい
 翠と同化して ここで声を出したい
 深く 奥に潜んでいる私のために 
 内側に籠もっている私のためにだけ 

 生きたい 生きたい

 目を覚まし 私はこたつから顔を出した
 そこは少しだけ時が経った日常だった
 私は目を細めて窓の外を見てみた
 今日も樹木が健やかにたなびいている 

 それもまた 生きている 生きているのだ



縛られない幕閉じ



 誰にも伝わらない物語
 エンドのない物語
 語りたいだけ語って
 後はほったらかし

 それでも誰かの心には残る
 そう信じて僕は描き続ける
 蒼に染められた早朝の森のように 
 誰にも縛られない物語を

 描き続ける


中華街葡萄愛す


 とある少年が一人 你好
 しかし彼は日本人だ
 今日は中華街に来ているから
 ちょっと言ってみたかっただけ

 とりあえず肉まんを食べよう
 少年は一人 大きな肉まんを買った
 食べ歩いていると あらびっくり
 とても綺麗なお嬢さんが一人

 少年は見惚れた そして話してみたいと
 その女性に近づいて声をかけた。
 ハローハロー 僕は君を愛すと言った
 女性はクスッとして クリームと言った

 二人は料理屋に入って飯を食べた
 少年は武道に励んでいると言った
 それはまあ美味しそうなこと
 女性はますます微笑んだ

 少年は女性をデートに誘った
 しかし女性は仕事があると言った
 何の仕事? と問えば女性は一言
 それはとても甘い仕事と言った

 仕事とは残念 少年が言うと女性は
 せめてアイスを食べましょうと言った
 いいね 食後のデザートは美味しい
 その後二人で葡萄味のアイスを食べた

 そういえば甘い仕事って何?
 少年が訊くと 女性は内緒と言った
 少年は残念な気持ちになったけど
 秘密が多い女性もまた魅力的だった

 少年は女性と別れて少し歩いた
 すると黒い服を着た男に声をかけられた
 お金を払ってもらいたい
 お金? 少年はなんのことかわからない

 君は彼女のミッションを邪魔した
 ミッション? なんのこと?
 すると少年はお腹を殴られて 
 金が入った財布を取られた
 悶絶しながら少年は思った

 甘い仕事ってつまり?
 数時間後 少年は病院にいた
 警察の話によれば 
 相手は日本の政治家を脅す
 かなりやり手の集団らしい

 そして少年が話しかけた女性は
 ハニートラップの仕掛け人だった
 だから甘い仕事 なるほど合点
 少年は一人ベッドでうなずいた

 しかし少年は疑問を抱いた
 ならどうして僕とデートなんてしたのか
 そんなの無視してしまえばよかったのに
 少年は一人 不思議な気持ちになった 

 女性は一人 
 口に甘酸っぱさを残したまま
 仕事中もずっと 
 あの少年のことを想い続ける
 
 彼はアイスとか葡萄とか言っていた
 きっとそれらが好きなんだろう
 とにかく一緒に食べることができてよかった 
 女性は一人 誰にもバレないように笑った

突き抜けて、風に吹かれて



 横浜の海はなんだか怖い
 おそらく砂浜がないから
 塀のすぐ向こうに深い海
 嗚呼 浅瀬がないわけか
 だから怖いのか なるほどね

 横浜の空は都市の青さを持つ
 そして意外にもビルが多い
 だから澄んだ空を拝むには
 ちょっと残念かもしれない
 だけど美景に変わりはない

 そんな横浜で僕は彼女と一緒に
 ベンチに座りながらビールを飲む
 なんだか怖い海を見ながら
 都市の青さに包まれながら
 もどかしい想いを抱えている

 僕が持っている悩みなんて大したことはない
 この世にはもっと悲惨な出来事があって
 もっと取り上げられるべき話題がある
 無視できない悲劇 しかし目を背けてしまう
 だからこそ僕は悩んでいるのかもしれない

 彼女は言う
 この街は合わないと
 もっと開放感のある場所
 私は知っているよ
 だから一緒に行こうよと

 だけど僕は動けない
 この街に慣れているから
 新しいものが怖い
 まるで深海へ潜るようで
 未知数だから怖い

 彼女は言う
 ここよりは不便
 でも気持ちは明るくなる
 今よりはずっといい
 だから一緒に行こうよ

 僕は便利に慣れてしまった
 眺めるだけの海に
 都市が放つ青さに
 人間たちのざわめきに
 慣れてしまった

 突き抜けてよ
 あなたはもっと
 突き抜けないと
 殻にこもっていないで
 突き抜けないと

 僕には無い感覚
 彼女はいつだって
 僕の持っていないものを
 大事に持っている
 だから好きになった

 この景色から突き抜ける
 当たり前の日常から
 固まりきった価値観から
 もっと風に吹かれるために
 僕はゆっくりと立ち上がる

 突き抜けて 風に吹かれるために


東京とはいえ


 ここは東京 とはいえ流行とか知らね
 東京=トレンドはメディアの洗脳
 そうよ 結局メディアが全部仕込んでる
 大衆はそれに騙されているだけ

 分かっちゃいるけど みんなイエスマン

 ここは東京 とはいえ政治に無関心
 大概は日常に必死だからね
 国会議事堂がこんなにも近いのに
 いつの間にか法律が決まっていたりする

 ダメだろうけど 怖くて抗えないね

 それでも勇敢な若者がデモ活動
 それをSNSに載せて誹謗中傷
 正義とは何かって問うヒーロー
 呆れてモノ言えぬ我らの先祖

 レッツゴー 破滅する未来へ

 ここは東京 とはいえ観光客ばかり
 後はだいたい労働者たち
 散歩だけのために街を練り歩く天才
 ちょっと出会ってみたいけどね

 そんな奴もすぐに淘汰される。

 それでも戦う集団たちを称賛
 あっという間にSNSに拡散
 機動隊に取り押さえられて退散
 また染められていくタウン

 グッドバイ 僕はパソコンの前

 ここは東京 とはいえ僕は家の中
 東京タワーが懐かしいって思うくらい
 どこにも行かず鍵を閉めて引き篭もる
 そしてどんどん心の内側へと向かっていく

 ハロー僕だけの世界
 僕は僕のために生きるのです


越谷ビーチボーイズ



 かつての友人たちが乗った車が
 南越谷から出発する
 そこに俺は乗っていない
 俺はカフェでタバコを吸う

 最近は令和に飽きたから
 ビーチボーイズを聞いてる
 機械的なサウンドよりも
 人間味があっていいんだ

 越谷に海はないのに
 なぜか波の音が聞こえる
 どうしてか寂しくなるよ
 過去が恋しくなるこの頃

 母親はクイーンを懐かしく思う
 だけど俺にとっては新鮮だった
 あの突き抜ける歌声は
 人間味があっていいんだ

 かつての友人たちの見える世界は
 SFチックな近未来だろう
 だけど俺が見えている世界は
 なぜか知るはずもない江戸時代

 越谷に海がないのは
 神様の気まぐれだとして
 どうしても海が好きだから
 俺は真逆に進んでいくしかない

 波の音が響く方へ
 進んでいくしかないんだ
 たとえかつての友人たちを
 スッと忘れることになっても

 過去には戻れないってことくらい
 わかった上で寂しくなるが
 次に心が揺れ動く瞬間を
 俺はずっと期待してしまう

 越谷に海がないことくらい
 言われなくてもわかってる
 それでもビーチボーイズを聞きながら
 自由な大海原を目指すんだ


黄色いユニフォームを着る二人


 トラックを乗り回す青年
 偏狭な道を進んでいく
 曖昧な記憶を辿りながら
 荷物を運ぶために

 黄色いユニフォームを着た少年
 今日こそは勝ってくれと願う
 優勝は遠のいてしまったが
 せめて一部残留はしたい

 トラックを乗り回す青年
 最近はマルーン5を聞いて
 付き合いたての彼女のために
 お金を稼いでいる

 黄色いユニフォームを着た少年
 最近算数のテストで100点を取って
 今度は社会のテストで満点を取るために
 歩きながら勉強している

 トラックを乗り回す青年
 将来の自分について考える
 結婚、育児、一家の主人
 想像するだけで胸が熱くなる

 黄色いユニフォームを着た少年
 将来はパン屋さんになる
 こねて、焼いて、バターの香り
 想像するだけで心が躍る

 トラックを乗り回す青年
 ちょっとよそ見をしていた
 横断歩道に気付けなかった
 目の前には、黄色い何か

 黄色いユニフォームを着た少年
 勉強に夢中だった
 トラックに気付けなかった
 横からは、デカい音が


 トラックの免許を取った青年
 今日から配達の仕事をする
 夢は叶わなかったが
 心は踊り続けている

 黄色いユニフォームを着た男
 今日もチームを鼓舞する
 結婚はできなかったが
 胸は熱くなっている

 黄色いユニフォームを着た男
 ある人物にメールを送る
 お前の分まで応援するから
 お前も頑張って

 トラックの運転手になった青年
 ある人物に返信を送る
 俺も頑張りますから
 俺の分まで応援して


 黄色いユニフォームを着た男たち
 運命的な出会いをした二人は
 今日も一緒にゴール裏に立ち
 一生懸命声を出して応援する


茨の道〜東の海


 最果てにやってきた気分だ
 別に死ぬわけじゃない
 ただ ある程度冒険はした
 あとは自分の身分に合う場所で
 自分のやりたいことをやる
 それだけ それだけ
 困難ばかりってわけじゃないが
 それなりに苦労はした
 そもそも生きるってところから
 俺はずいぶんと不器用だったから
 それでも誰かに支えられたから
 今を生きることができている
 そろそろ居場所を決めた方がいい
 そこでのんびりと生きたいから
 世界が荒れ狂っているのなら
 俺くらいは穏やかさを保っていたい
 けど、そうもいかない世の中で
 惨劇が繰り返されてしまう現状
 争いなんかクソくらえ
 階級なんてくだらない
 人間ってのはもっと豊かな気持ちで
 考えたりできる生き物だろう?
 この先にあるのは 破滅
 見たくもない悲劇が起こるかもしれん
 いったい、俺に何ができるだろうか
 何もできないまま終わるだろうか
 正義感があるわけでもない
 優しさに満ち溢れているわけでもない
 そんな俺が、何をするのだろうか
 まるで俺が見ているこの海のように
 全く見当もつかない未来があるとして
 それもまた茨の道だとすれば
 いい加減うんざりする
 それでも俺は人間として
 人間である意味を問いながら
 結局のところ行動するのだろう

 まったく、人間ってのは難しい

進んでなんぼ



 ミギヘ ヒダリヘ
 マエヘ ウシロヘ
 縦横無尽に進んでなんぼ

 キタヘ ミナミヘ
 ニシヘ ヒガシヘ
 縦横無尽に進んでなんぼ

 カコモ トリコメ
 ハルカ ミライヘ
 縦横無尽に進んでなんぼ

 どこでもいいんだよ
 とにかく動けよ
 考えるより足を使えよ
 やってみるしかないんだよ

 ミギヘ ヒダリヘ
 マエヘ ウシロヘ
 キタヘ ミナミヘ
 ニシヘ ヒガシヘ
 カコモ トリコメ
 ハルカ ミライヘ
 縦横無尽に進んでなんぼ

 明日も冒険
 見知らぬ場所へ
 未知との出会い
 高鳴る鼓動

 ふっ軽で行こう 
 迷いは禁物
 今すぐ目覚めて
 色々レッツゴー

 立ち止まってる理由なんてないから
 進むんだよ あえてね
 ハロー人生 この道を行こう
 自分だけの幸せを探すために


(終)

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