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制服を着ていた。




あの頃はみんな制服を着ていた。もちろん、僕だって。
青春という名の魔法にかけられていた。
学生にしか見えない輝きがあった。
子供であることが、何よりも特権だった。
大人になって思う。
もちろん、子供は子供で大変だが、
制服を着ていた僕は、何もわかっていなかったのだと。
淡い期待ばかり抱えていた。
青空がずっと広がっていると信じていた。
でも、大人になって気づけた。
世の中、そんな甘いものじゃない。
生温い環境ではないことを。
人間は簡単に孤独になれる。
子供の頃には、知らなかった現実。
僕は今、それに陥る可能性が高い。
いや、ほとんど孤独みたいなものだ。
そして、それを望んでいる自分がいる。
学生の頃に築いたはずののつながりは、
時間と共に錆びていき、朽ちた。
制服を着ていた僕は、そんな未来を描くほど
哀れではなかったと思う。
でも、今の自分はほとんど独りであり、
独りであることを楽しんでしまっている。
本当に、哀れであるし、愚かである。

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