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一度別れる、大切な人。

3年間と少し、交際していた恋人とお別れすることになった。

もう一度、一緒に過ごせる日を願って、私は待つことにした。


晩秋に彼の勤務先が変わった。異動があったことで、これまでの働く時間や休みの日が変わり、仕事内容もより一層忙しくなった。

1か月に2回会えていたのが、1回でも会えればマシと思えるくらいになった。ときどきの電話はしなくなった、仕事の話をLINEで話すと怒られた。彼の心の余裕が全くない状態だと、はっきりわかった。

会ったときは、疲れているけれど、お互いを大切にしていることはわかる。くだらないことを話して、おそろいのものを買って、お出かけをして、一緒に昼までごろごろしていた。手をつないで歩いた。

ただ、新卒社会人・遠距離恋愛1年目の場合、弱っているときに会えないことは何よりつらかった。いくらでも仕事がある私よりも、シフト制でしっかり休みが取れる彼の方が、そんな気持ちになることが多かったのだろう。「会えないのがつらいから別れよう」とLINEをするようになった。

友達といるほうが楽で、楽しい。
頑張りたかったけど、遠距離恋愛は無理だった。
会えないから、好きかわからなくなってしまった。

こんなことを言われ、傷ついた。そして、彼の別れたい理由は私の努力で克服できるものではなかった。

そもそも勤務地が設定できるのに、東京にしなかったのは彼ではないか。会えないと言ったって、回数を減らしているのは彼ではないか。毎回そちらに私が行けばいいと伝えても、だめだった。

このようなやり取りが間隔をあけて3回ほど起きた。

ますますコミュニケーションをとることが不安になり、返信が時折しか戻ってこなくなり、彼が何をしているのかがわからなくなっていった。会える日を聞くことも、別れ話を切り出されるのではと怖くなって、簡単にはできなくなった。

そして、別れようとLINEが来た。

電話は嫌だとメッセージにあった、でも電話をかけた。出てくれるかはわからないけれど、直接話さない限りは何もわからないと思ったからだった。突き放して去ろうとする奥に何かあるなら、きちんとはっきりしておきたい。

夜の20時から1時過ぎまで、5時間ほど電話をした。
私が「別れたくない」と言い、言葉を探して何も発しなくなるたびに、「明日仕事があるから切っていいか」とため息をつかれた。多すぎて、何度されたのか覚えていない。でも、電話を切らずにいてくれた。

もし、考えたくなかったけれど、さよならをする時が来たら、全てのつながりを切って二度と会わないようにしようと決めていた。連絡先も、SNSも、贈られたものも、さよならしようと思っていた。

別れたいから、と、いろいろ言われた。もう思い出したくないけれど、私自身を侮辱するような言葉はなかった(はずだ)。苦しくなってきて、受け入れることにした。泣きすぎて頭がぼーっとしている。もらったものは彼の元にすべて送って処分してもらうことをお願いした。実家の住所を教えてもらった。

そして、転職したとしても東京に二度と来ないでほしいことをお願いして、連絡は一切取らないことを伝えた。この2つは、どうやら納得いかなかったようだ。友達になれるとでも思ったのだろうか、そんな馬鹿な話があるか。

私が必要ないから別れを切り出したんじゃないのか?怒りを堪えられないまま問いただすと、そこには初めて知る事情があった。

人間関係が少々厄介なことになっているようだった。誰にでも優しくて、それゆえに誤解も受ける人ではあるが、それがまさに発揮されてしまったようだった。加えて、仕事の過酷さは増していた。バイトも社員も出入りの多い職場では、覚えることが永遠に増えていく。一定のルーティンで勤務ができないこともつらそうだった。

一度、私と別れて、誰とも付き合わずにいたい。でも、連絡は取りたい。
彼が心の底からの気持ちを話すときの、弱弱しい声だった。

自分のことを一番に考えて支えてくれたのは私だった、と彼は話し始めた。できれば、ずっと一緒にいたいと思っている。転職して東京に行きたいと思っている。

でも、好きという気持ちがすり減ってしまっているとき、私からの愛を受けるのが申し訳ない。同じ大きさの「好き」を持つことができなくてつらい。そして、心に余裕がなくて、会うことができないのはつらい。

これまでやってしまったみたいに、私に当たって傷つけることになる。仕事も人間関係もがんじがらめで終わりが見えない中、同じことを繰り返しそうで苦しいと言っていた。

私は、一度彼と別れて、東京に来るのを待つことに決めた。

連絡は取り続け、お互いに精神的に支え合うことにした。「ずっと待ってるよ」と伝えると、彼は泣きながら、東京に来たときには一緒に暮らそうと言ってくれた。

恋人ではなくなってしまった。会うことができない。彼にどんな素敵な人ができても、私は何も言えない。何をしたって、知ることはできないし、そんな資格はない。

不安と悲しさと、いっぱいになっている。


1度お別れをしたことを友人たちに伝えていった。私が片想いを引きずっているときから、長くお世話になった人たちがたくさんいる。

心配してくれて、話を聞いてくれて、励ましてくれる存在のありがたさを感じる。本当にありがとう。

どうか、一緒になれますように。まだ涙がぽろぽろ落ちるけれど、前向きに進めますように。

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