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真剣にファッションとアニメが交るのかを考える。

仕事でアニメの配給会社とファッションブランドの取り組みを企画することになった。僕自身はアニメ・漫画・ゲームといったサブカルチャーが好きなので、何の先入観もなく楽しく企画している。

しかしいざ、ファッションブランド側に取り組みの相談をもちかけると「いや、アニメっすか...。」「ワンピースとかJOJOとかならねぇ...。」と企画の内容を見ずともネガティブな発言を返される事となる。

国内のアニメ・漫画・ゲーム関連の市場といえば、広義に捉えた場合12兆円を越す一大市場だ。だからこそ、ニーズだけ追っていてもある程度の収益は見込める。実際にいろんなメーカー・ブランドがこぞってコラボグッズも展開している。

ならなぜ、冒頭の様な発言が生まれるのか。ハッキリと一般的にも人気があるのにも関わらず、ファッションブランドに二の足を踏ませてしまうのだろう。

要約するとすれば、アニメとのコラボ自体はいいのだが、特定のアニメや漫画でなければならないという事だ。この状況を経験やファッション業界の現況なども踏まえ考察していこう。

アニメとファッションのアイテムを着用するとどうなる。

まずは僕自身の経験を思い出してみる。多くの人は子供の頃、一度や二度ぐらいキャラクターイラストのプリントされたTシャツやトレーナーなどを着た事もあるだろう。それが一定の年齢になると恥ずかしい事のように感じ初め、日常で着ることが憚られる事になっていったのではないか。

ブランド名は忘れてしまったが、学生時代にとあるストリートブランドでセーラームーンのちびうさちゃんがプリントされたTシャツを購入したことがあった。実際半分はウケ狙いだったが、8,000円ぐらいと学生にはそれほど安くもなかったので、デザイン的にもイケてると思っての購入だ。(ネットで探しても見つからなかったので、誰か知っていれば教えてほしい)

満を持してある日学校に着ていったのだが、学校中の生徒から終始いじり倒された。電車の中でも知らない人にクスクスされていた。近所のおばちゃんに「あんた、○○ちゃん(妹の名前)の服着てるんか?かっこ悪い!」とまで言われる始末だ。

この様なエピソードは2.3回の着用しかしていない中で毎回起こった。

恥じらいという感情など人の半分も持ち合わせていない僕だが、さすがに凹んだ。なんで、このTシャツの良さをわかってくれへんねんと言う怒りを隠すのに顔がひきつり倒していただろう。

結局、その感情とTシャツへの最適解は見つからず、モバオクで500円という屈辱的な値段で売却した過去があった。

この話を聞いていかがだろう?「あたりまえだろ」「なんでちびうさのTシャツなんか着てるんだ、気持ち悪ぃな」と思ったのでは無いか?この様な例をあげるまでもなくとも明らかだが、世間には正直言ってまったく許容されていないと思う。

今とは時代も違う約10年以上前の話とはいえ、まだまだ一般的なコミュニティの中だと、似た様に扱われることがほとんどではないかと思う。

節目は変わっているのだろうか

その一方で、2011年にファッション雑誌「SPUR(シュプール)」の表紙を「GUCCI(グッチ)」と「ジョジョの奇妙な冒険」がコラボして荒木飛呂彦先生のイラストが表紙を飾った。

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その後もジョジョは「BVLGARI(ブルガリ)」「BALENCIAGA(バレンシアガ)」と名だたるラグジュアリーブランドとのコラボを実現していく。

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他にも、2016年には「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」がFINAL FANTASY XIIIで作中の主人公であるライトニングを春夏広告キャンペーン「SERIES 4」のモデルに起用。ちなみにライトニングは2012年、他のキャラクターとともに「PRADA(プラダ)」のプロモーションにも登場している。

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最近だと、「COACH(コーチ)」がマイケル・B・ジョーダンとのコラボに「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のグラフィックを使用して話題になった。

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国内ブランドでも「YOHGI YAMAMOTO(ヨウジヤマモト)」が各レーベルで「ONE PIECE(ワンピース)」「エヴァンゲリオン」「攻殻機動隊」などとコラボしている。

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ユニクロのUTや、その他のブランドでも、アニメ/ゲームなどとのコラボはこれよりも先立って行われていたが、あれ?意外とありじゃね?とプロモーションとして検討される様になったの背景にはこれらの取り組みが行われ始めてからではないだろうか。

その間には僕が散々とバカにされてしまった、ちびうさちゃん有するセーラームーンにしても、「Samantha Thavasa (サマンサタバサ)」とコラボし、伊勢丹新宿店で開催されたPOP UP STOREでは当時の記録的な売上げをあげた。

これらを踏まえると、マクロ的に節目が変わっているのかどうかまでは断定できないが、どうやら着る者、着ている物によっては一つのコンテンツ及びデザインとして許容されているのだろう。一方で懐疑的なものと許容されるものはどう違うのかという問いについては、真摯に考え、回答を用意する必要がある。

プロダクトとマーケティングとしての違い

次はプロダクトとマーケティングについてアプローチしていく。

欧米のラグジュアリーブランドのコラボ企画だと「COACH(コーチ)」のポーチは約60,000円と高額だ。この程度の値段であれば、ファングッズとして受けとめてもらえるかもしれないが、アウターなどは300,000円を超えている。普段ラグジュアリーブランドとは縁遠いマンガやアニメなどジャパンカルチャーが好きな若者たちに、おいそれと手の届くものではないのではないか。

他のラグジュアリーブランドのコラボとて同様だ。限定品など一部高額なグッズが販売されることもあるが、これらのコラボの取り組みにおいてのラインアップやイメージに使われるアイテムを見る限りはプロモーションの側面が強いのではないかと考えられる。

一方の日本では先に挙げた例に加え、アニメ/ゲームとファションのコラボを軸としたアパレルブランドが多々ある。「SUPER GROUPIES(スーパーグルーピーズ)」「R4G(アールフォージー)」「ARMA BIANCA(アルマビアンカ)」軸じゃなくとも「A BATHING APE(アベイシングエイプ)」や「ERTHE MUSIC&ECOLOGY(アースミュージックアンドエコロジー)」の様に定期的にコラボしているブランドもある。

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「YOHGI YAMAMOTO(ヨージヤマモト)」の例もあるので一概には言えないが、日本での取り組みは、僕が購入したちびうさTシャツ(8,000円)をはじめ、ほとんどがそれと同等、もしくはそれよりも格安で販売されており、既存のファンに向け、グッズのデザイン性、プレミア性を向上し、購買を促すコラボと推測される。

そうなるとこれらのコラボは同じアニメ/ゲームのコラボではあるが、マーケティングやプロダクトの観点からは性質が違うものだ。

この違いがファッション業界の人間にとっては二の足を踏んでしまう原因であり、問題の争点を生み出しているのではないかと気づく。ファッション業界の人間にとっては、コラボの対象となるアニメ/ゲームコンテンツが前者となるか後者となるかの判断ができないのだ。

そうなれば安易にファッション業界、一般的な感覚的では〈感度の高いコンテンツ=ラグジュアリーと取り組んでいるコンテンツ〉となるのも致し方ない。業界と消費者間においての情報時差など既に消滅し、ブランドやクリエーター、ファッショニスタなど業界に対する消費者側の'憧れ’は薄れていても、判断基準をそこでしか持てない。

いくら論理的に考え、諭したとしても僕が受けた扱いや冒頭の様な発言が起こるのも納得はできる。だからこそ一概に発言者を断罪することも出来ないかもしれないが、アニメとファッションのコラボは特定のものでしか許容されないという事は無理を通して道理を引っ込めている状態なため、乱暴な意見である事も間違いはない。

結論としては何を言っても無駄だ

ここまでの考察を踏まえての回答としては、デザインがダサいかどうかなど、個人の主観であり、文化的な背景やそのコミュニティを把握していないのであれば、どんなコンテンツもダサいと取られる可能性はあるし、その価値観は容易に変えようもないとなるだろう。

どんなブランドでも着る者の体型や合わせる色によってはダサいブランドになるし、どんなアニメ/ゲームでさえ見る物の価値観や知識によってはダサいともなり得るのだろう。

人の価値観や許容にまで口を出す事などできるだろうか?知識を与えられた程度で、ではやってみようとなるだろうか?人は実際に自分が経験した事でしか価値観が変わる事などないのではないか?そう考えての結論だ。

ここまで読んでいる人は、これを書いているボクになど絶対に言われたくないだろうが、よっぽど暇なのではないかと思う。それか呆れるくらいの忍耐力でもあるのだろう。

こんなにダラダラと書き綴らなくとも、冒頭の様な発言をする疑問への結論が、何を言っても無駄であり、それが解であるならば、約4000字に渡り書く必要などなかっただろう。

僕は実際に書いていて、なんて無駄な時を過ごしてしまったのだ。とスラムダンクのミッチーばりに渾身に気持ちがこみ上げている。

無理やりだが結んでいく

現在、日本のみならず世界の先進諸国は総じて経済が成熟期を迎え、慢性的なデフレ状態となり、消費も落ち込んでいる。「若者の〇〇離れ」など、若年層の消費に対する粗食化・絶食化は日本だけではなく世界的に見てもトレンドである。

企業活動をする上で、いかなる方法を使おうと構わないが、将来の顧客となる可能性がある若年世代に憧れられない状況は大問題だ。放っておけばその道の先には破綻する未来しかない。

マンガやアニメ/ゲームは、今やメインカルチャーと言っても過言ではない。ましてや、我が国においてはクールジャパンと銘打つ、代表的なコンテンツの一つである。少なくともファッションにもグローバル化が叫ばれる中での一つの戦略にはなり得るだろう。

マンガやアニメ・ゲームは、あくまで子供のためのモノと考えられてきた。現在でも一定の年齢より上の世代では「思春期過ぎれば卒業すべき」という考え方も根強い。

欧米のラグジュアリーブランド勢はこれらのコンテンツを取り込むことで、若者のカルチャーに理解のある企業であり、柔軟な施策も率先して行うという姿勢をアピールしているのではないか。

単に「SNSで話題になるため」「変わったことをしてニュースになるため」のマーケティング手法とも考えるれるが、短期的な収益目的ではなく、「未来の顧客に友好を投げかける」ブランディングであるとも考えることができる。

アパレルだけでなく、「Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)」や「YKK(ワイケーケー)」などはアニメでプロモーションビデオを作成し、メッセージを発信し好評を得ている。消費財や食品に関しては随分昔からコラボコンテンツを配信している。

それら各ブランドは、「若者にどう振り向いてもらうか」という事が「企業が何十年先にもまだ生き残っていられるか」の一担を担う事をわかっているのだ。

もはや若者にとってメインカルチャーになりつつあるマンガやアニメとのコラボは、奇抜性や話題性にのみ注目がいきがちだが、背景を考えて改めて施策として考えると有効なのは間違いないといえるだろう。

だからこそ、それを加味し、よしやってみようと、僕にどんどん相談や依頼をくれるといいのになと星に願う事にして結びにかえる。



頂けたら、ダイエットに使います。