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父の人生を変えた『一日』その55 ~時間と縁~

その55 ~時間と縁~
 人生は何が起こるか分からない。『人生はあざなえる縄のごとし』と言った人がいる。
禍福(かふく)つまり幸福も苦労も縄のように順次起こってくるものである。新入社員で外人と国際結婚したクーガー堤君は今や世界一の木材会社ウエアーハウザー社の日本向けセールスマネージャー販売部長になっている。数年前にシアトルに行ったときも会ったが全く元気で頑張っていた。
長岡新聞に寄稿した『ライオンが吠える』にでてくる下條さんは昭和49年に70万円のお金を払えなかった人。今やポケットに現金100万円は何時も持っている人で億万長者に成っている。人間何処でどうなるかは分からない。
ヒンショウ本田の社長もアメリカンドリームを達成した人である。色々な人との邂逅(かいこう)一出会いは人間の幅を大きくしとんでもない事が起こるのである。
 私は商売が大好きです。商売するために生まれてきたと今でも思っている。会社の大小に関係なく商売の根本は同じであると思っている。単位が小さくなっても商売は商売である。出会った人たちが素晴らし人生を作っていくことに無類の喜びを感じる。


~倅の解釈~
 人には唯一平等に与えられているものが時間である。親父はこの『時間』に対するこだわりがものすごかった。携帯電話に応答しないと、さんざん周りに居そうな方々に電話をしまくり、更には居そうな場所にまで電話をして、相手をつかまえる。まだ、水澤電機に戻り営業駆け出しの次長のころ、この携帯呼び出しにいつも困惑していた。大したことでもないのに、レスポンスが悪いといつも激怒されていた。
 今になって振り返れば、自分の寿命が67年で幕を閉じることを分かっていたかのように急いで人生を駆け抜けていた。周りの人間を悪い意味でも『素晴らしい意味でも』巻き込んで。私は随時巻き込まれていた。幸せなことである。商人の帝王学を学ばせてもらった。
 時間と同じぐらい大事にしていたことが人との『縁』である。出会った人々の人生ドラマを聞き出し、頭とハートの中に叩き込んだ。様々な方々とこの感動を共有した。時に共有しすぎでクレームとなる場合もあったが、関係なく、情熱をもって『ご縁』を心から愛した。一秒一秒、過去から現在、そして、現在から未来へと駆け巡る。このスパイラルに人という縁を親父はスパイスのごとく振りかけて自分の人生を彩っていた。
 『一人』でいることを大変嫌った寂しがり屋。そう思っていたが、これも自分自身の信念を貫き通すことの実践であったのだ。誰かに人を紹介するとき親父は非常にうれしそうだ。自分自身が世のため人のためになっていることの実感に幸福感を体現していたに違いない。
 『時間と縁』。私も大事にしていきたい。

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