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父の人生を変えた『一日』その36 ~助け合い~

その36 ~助け合い~
 シアトルに駐在している日本航空の八島支店長さん一家と子供が同級生で友達になった。家族付き合いする仲になった。ある時、旦那さんから子供が食事しないで困っていると相談があった。色々と聞いてみた。急に子供が清潔になり手を洗うようになったという。そして、食事をしなくなったという。私の荒治療をすることになった。その子供さんを1週間私の家で預かった。夕食になった。健太君、やはり食べない。私は言った。
「食べなくてもいいよ。食べたくなったら食べなさい」と。
夜になって空腹になった健太君は私に話しかけてきた。色々なばい菌がいっぱいあるという。だから怖くて食べられないと私に真剣に言う。話を聞いていて原因が分かった。両親が外出時にテレビを見たらしい。その時まわりには沢山のばい菌があり危険であるという番組だったようである。そして手を洗い食事が怖くて食べられなくなったという。
 健太君、ばい菌は確かに沢山ある。人間の身体にはばい菌をやっつける力もあるのだよ。だから、栄養のあるもの食べて身体を強くすればばい菌なんかやっつけるのだ。と私が説明した。健太君は納得しそれからちゃんと食事するようになって完全に拒食症は治った。アメリカにいても色々な事があると思った。


~倅の解釈~
 八島健太。懐かしい。同級生であり、少し厳しめで教育ママのお母さんと背が高くカッコいい親父さん。一人っ子だったせいか、すごく内気なやつ。泊まりに来ていたことも何となく覚えている。
 アメリカでは当時まだ日本人が少ないので、日本人会で出会ったご縁を大事にして、お互いを助け合っていた。特に困ったときはアメリカ滞在が長い先輩がお手伝いすることが当たり前。文化、宗教、教育制度と生活に直結する様々なマターがまったく違うアメリカ。特に奥様、お母さまが戸惑う。駐在で言った当の本人は仕事に忙しく毎日を楽しんでいるのだが、やはり家で待ち家族を支える奥様、お母さんは大変である。
 健太に話は戻るが、ある時両家でバーベキューをクーガーヒルズというベルビューの山岳地で楽しんでいた。私はとにかく良く動く派だったので、山へ健太と一緒に探検に。ここはアメリカの山。完全に自然の山だけにトレールのような山道もなく、子どもにとっては最高の探検の場。我を忘れて二人で探検していたら少し暗くなり始めて帰ろうと試みたが完全に迷子。リュックには幸い飲み物とお菓子が入っていたので泣く健太を励ましながら山中をウロウロと。真っ暗になりさすがに私も怖かったが、クーガーヒルというぐらいの山、ヒョウが出る。小学3年生ぐらいだったがとにかく道路を見つけて助けてもらわないとと必死だった。
 幸い、真夜中前ぐらいに道路に出ることができ、とりあえず山を下る方向へ二人で歩いた。途中、健太は歩けないとギブアップ。空手で鍛えた足腰。私が健太をおんぶしてひたすら歩いた。途中、警察の車に発見され無事確保された。
 両親が待っているキャンプサイトへ到着。健太は泣きながら両親のもとへ。ご両親も泣きながら謙太を抱きしめていた。私も両親のもとへ行く。親父の凄まじい鉄拳を食らう。お袋からはビンタ。まあ、これが水澤家の愛情表現だとその時も納得いった。しょっちゅう殴られていたのでが、その時は、少し両親の鉄拳とビンタには手加減があった。そこに、「見つかってよかった」というやさしさがあったんだと思う。

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