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肩パッティズムよ愛してる❤

僕の名前は増太郎(ますたろう)。資本主義後期を生きている24歳。うだうだ先延ばしにしてきた正社員の面接の為ついに肩パッド屋の前にいる。
ガラス張りの外観のため中が見える。通りすがることはあるけど入るのは初めてだ。気が重い。

「いらっしゃいませ〜!」

いらっしゃりたくはなかった。店はコンビニサイズで専門店なだけに品揃えがすごい。外から見た時にだいたいの僕が向かう棚は分かっていた。
[祝㊗️成人][初めての肩パッドならコチラ❗️]コーナーに足早に向かった。店員さんは1人いるだけみたいだな。何か作業をしてる。

今日も寒かったな。肩パッドショップで働いてもうすぐ1年経つ。今日は平日だからお客様も少ないかもな。昨日入荷した春物の検品でもしよう。
朝早く来たお客様が初めてコーナーの前で固まっているな、何かアドバイスした方がいいかな?
初めてじゃ肩パッドサイズが分かんないからな。

「お客様。お手伝いしましょうか?」

「あっはい、」
選び方の説明が書いてあったけど。正直言ってふいにかけられた声に少し安心した。
「面接が明日あって持ってなくてきたんです。そういう時に付けるような肩パッド、僕のサイズだとこのあたりのですか?」
「そうですね!こちらだとだいたいのフォーマルな場所で使えるタイプです。色は面接でしたら濃紺がおすすめですね。サイズはMでいけると思います。肩はあまりサイズ変化しないので長く使えると思いますよ!」

「あっはい、じゃあこの肩パッドにします、、」
「ありがとうございます!ではこちらへ!」
「あっはい、」
思わず大きなため息が出た。良かった店員さんには聞こえなかったみたいだそのままレジの方に向かっている。レジの上あたりにテレビが映っていた。朝の情報番組か。アナウンサーは最近流行りのスーツの上から肩パッド、相撲の優勝シーンに切り替わった。取り組み前の豪快な肩パッド撒きの力士が映っている。呆然とした。今や肩パッドなしで生きるにはかなり厳しい世の中だ。
親も肩パッドなシンガーの道を諦めた僕に賛成してくれた。どれくらいぼうっとしてたのか、店員さんがこっちを見ていた。声をかけられて気づいた。

「どうしました?」
しばらく立ち止まってテレビを見ていた彼の表情に思わず声をかけた。面接が明日だから髪はきれいに刈りあがっているがよれたTシャツにはボブマーリーが笑っている。この寒い時期にサンダルだ。手に持っている肩パッドが今にも落ちそうだった。
「あの、店員さんに聞くのもあれなんですけど。肩パッド、肩パッドなしで生きるのはダメですか?人として認めてもらえないんですか?」
彼は言った。
突然の問いかけの真剣さに店員であることは忘れて答えた。
「自由だと思うよ。付けたければ付ければいいし、付けたくなきゃ付けなくていい。選択はいつだって自由に君が決められる。まぁ面接に行くなら付けなきゃまずいだろうけど。」

「・・・。そうですよね、」
彼はこちらに歩き出しレジの上に肩パッドを置いた。
「これ、すいません。せっかく選んでもらって。何かとても大切な気持ちに気づいたんです。だから、すいません!すいません!!あのっ!ありがとうございました!!」

そう言うと彼は店を勢いよく出て行った。忘れ物を思い出して取りにいくように。

店に1人になった。ナイロンで包んであるクシャクシャの肩パッドがあった。ふいになぜかシャツ越しに自分の右肩パッドに手をやった。左はしていない。
彼と同じような葛藤が過去にあった。それ以来半肩パッドで生きる決意をした。そうだ選択はいつだって自由だ。本部に電話をしていた。
「部長、あの今任されているこの店舗。半肩パッド専門店にしてもらえないでしょうか?いや色んな選択肢があっていいと思うんです。無理ですか。それならせめて半肩パッド売りを検討してもらえないでしょうか!お願いします!はい!頑張ります!ありがとうございます!失礼致します!」
いつもの店内に気持ちのいい光が溢れた。

後述。
肩パッティズム挿入歌 尾崎豊「卒業。」
肩パッティズムエンディング曲
ライムスター「B-BOYズム」
スペシャルサンクス
岡田斗司夫 著者「あなたを天才にするスマートノート」

どう生きるか。が問われる時代において選択することの重要さが際立つ。私としては大好きな物や人で人生を埋め尽くしたいと思っている。
愛はひとつであり、全てはひとつだから。
ここまでお読み頂いた方に盛大な感謝を!
ありがとうございました。ONE LOVE!




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