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~俺が見た東京の夜~第一夜


大学の単位が足りずに大学4年の3月で休学。
6月までは学生時代からずるずると続けていたビル清掃のアルバイトを辞めて正社員になった。
2009年4月から5月まで足立区の北千住にあるハローワークに通った。正直、なりたい職業なんてなかったけど、営業という自分の里親がしていた職業が身近だったのかもしれない。営業職に行こうと漠然と色んな求人を見ていた。ただ求人情報の見方もよくわからなかったし、福利厚生の意味も知らなかった。
広告代理店というのがかっこいい感じがして、仕事内容は全然予想がつかなかったが、受けてみることにした。

面接に行ったのは御徒町からほど近い小さなビルの2階、内観はきれいだが、年期の入ったビルだった。
扉を開け入るとパーテーションの前にベルがあり奥に左右に細長く席が配置されていた。
ベルを鳴らすと背の小さい大阪弁の女の人に奥の会議室に案内された。
少しの間特に緊張もせず待っていると、スーツを着たごっついおじさんと、さらに大きいTシャツを着たおじさんが来た。俺が思っていた広告代理店の営業マンではなかった。ハローワークが履歴書を送っていたが、手書きで持参した履歴書を渡し、話が始まった。目の前のごっついおじさんは軽く会社の説明をした後に、商材の説明に入った。○○(地名) (スペース)風俗と検索してGoogleの一番上に来るサイトが自社が専売で扱っているポータルサイトだと説明していた。もちろん営業をかける先も風俗店だという。私は風俗には行ったことがない旨を伝えた。だが、別に偏見もなかった。見た目や素行の悪い方が風俗を経営しているイメージがあると伝えると、確かにそういう人もいるが皆商売でやっていて、儲けを出そうとしていると至極当たり前なことを言われた。妙にその当たり前なことが若いこの前まで学生だった俺には響いたのかもしれない。
結果は追って自宅に連絡するという事だったので、あまり期待せず、色んな会社を受けた。おもちゃの営業、電話回線の営業、等々。資格がなくても何処も面接には呼んでくれた。超就職氷河期等とか巷では言われていたが、実際にそんな感じはしなかった。

一週間ほど経ち家の電話がなった。採用の通知だったので、バイト先に今月いっぱいで辞めると言ってから、2009年6月1日から晴れて正社員という事になった。ただ、やったことのないことをこの先やる不安はとても大きかった。清掃のバイトはなんだかんだで3年ほどやっていたので、かなりの戦力になっていた。退社を残念がられたのが少しうれしかった。

初出社の日、会社に黙って当時乗っていたバイクで会社の近くまで行き近所のパーキングに止めた。
出社すると、席に案内され、これからの業務の事を説明すると言われ3時間ほどざっくりとした業務の説明を受けた。
営業方法は2つテレアポ、飛び込みだという。インターネットなどで新規店舗を見つけて電話してアポを取り、交渉に行く。パンフレットを大量に持ち配っていきながら隙あらば交渉する。とっかかりはこんな感じだった。基本はテレアポといった感じだった。
電話のかけ方の前にサラリーマンとしての常識が皆無だった私はまずは名刺の渡し方から教わった。


最初の数週間は新入社員研修的なものをやりながら少しづつ業務をしていった。午前中はインターネットを見ながら情報収集や会議、ロールプレイングなどをしていった。午後は実際にテレアポをかけアポが取れたら交渉といった流れになるはずだった。
しかし入社2カ月電話をかけまくったが1件しかアポが取れなくて、電話が嫌いになった。

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