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【SF妄想ばなし_02】水星の開発

金星に続いて水星。内惑星シリーズ。

太陽系第1惑星の水星。

木星の衛星ガニメデや、土星の衛星タイタンよりも小さい、太陽系最小の惑星。輪も衛星もなく、大気はほんのーり、うっすら、ちょびっとある。

重力は火星と同じくらいで地球の3分の1程度。月よりは大きい

この惑星のいいところは、何と言ってもその豊富すぎる太陽エネルギー
日に照らされている部分は地球の6〜10倍ものエネルギーが降り注ぐ。
(公転軌道が楕円だから、値は常に変化する)

でもその長所が短所でもある。

温度が極端すぎるのだ。
日向では最高で500℃近くにもなり(鉛ならとけちゃう)、日陰ではマイナス100℃くらいまで下がる。

地球の月が地球に同じ面だけを向けているように(自転周期と公転周期が一致している)、水星も太陽に同じ面だけを向けているならばまだやりようはあるけれど、自転周期と公転周期は一致していないので、非常にゆっくりではあるものの、全ての面を太陽に向ける。だから、500℃に熱せられたところがマイナス100℃に下がることもある。こんな温度変化、たいていの材料はすぐにボロボロになってしまう。

豊富過ぎる太陽エネルギーは、物理的に攻撃力を持っていて、高温と強過ぎる紫外線、それから大量の荷電粒子で、素材の耐久性がガタ落ちしてしまう。

また、太陽に近く、水星自身は小さいせいで、実は水星に行くのはなかなか技術的にハードルが高いらしい。ちょっと間違ったら水星で止まれずに太陽に突っ込み、フライになるどころか蒸発してしまう。

だからここは人間が居住する大地としてではなく、エネルギー基地、工業のための基地として開発するのがいいと思う。

水星は金属や岩石でできた地球型惑星で、鉱物資源はそこそこある。鉄の存在比が非常に高いのが特徴だけど、地下深くの惑星核にほとんどがあるため、実際に使うのは難しい。

そして太陽由来のヘリウムの同位体、ヘリウム3が相当量あると考えられており、これは現在研究中の核融合の燃料として利用できる。

ま、そこら辺を未来の技術でなんとかしましてですねw

最初に作るのはロボットの製造工場
水星の極近くには、永久に影になっていて日の当たらない場所があり、そこに相当量の水があることが確実と見られているので、その近辺にまず基地を作る。地球から最初の生産設備と作業用ロボットを送り込み、永久影の近くの日照地帯にソーラーパネルを広げてまずエネルギーを確保し、まずは建設用ロボットと、多機能作業ロボットを生産する。ロボットは地下に空間を作り、そこにロボットの生産工場と、ソーラーパネルの生産工場を拡張する岩盤は熱と太陽の電磁波を遮蔽する材料としてはかなり優秀なので、地下に工場を作ると生産設備の維持の面で非常に楽になる。基本は自律・自動化したロボットの世界になるが、人間が居られるスペースも必要ではあるから、そのスペースも地下に作る。そうやって作ったパネルを敷設してエネルギーを更に生産し、工場や発電所を更に拡張する。発電は太陽光発電だけじゃなくて、温度差を利用した発電もできるだろう。日照部分でお湯を沸かし(水は永久影の氷を使う)、その蒸気でタービンを回し、影の部分に回せばそれを自然に冷却できる。更に核融合発電も可能だし。

宇宙文明の話が出ると必ず登場する話題がダイソン球。これは恒星(太陽)をすっぽり覆う球を作り、その内側で活動すれば、恒星が発するエネルギーを余すところなく利用できる、というもの。

野尻抱介さんのSF小説に「太陽の簒奪者」(ハヤカワ文庫JA)という作品がある。太陽系外の知的文明がやってきて、地球に生命がいることに気が付かずに水星の開発を始めてダイソン球を作り始めるが、太陽系の主要な天体は大体同じ平面上を回っているため、地球に届く太陽光の量が減り、地球に危機が訪れる、というお話。

水星はダイソン球を作るのにうってつけの基地。「太陽の簒奪者」でも水星の表面にロボットを多数配置して採掘した材料を宇宙空間に放り出して行く。

太陽は巨大な天体だけれど、ロボットがロボットを生産しつつ、ダイソン球の建設を進めれば、比較的短期間で作れる(数年とか)らしい。もちろん、地球の軌道平面上に作ると日照量が減少して地球の環境が悪化するので、球ではなく、リング状にして、地球の軌道平面と直交する垂直方向に作り、地球の公転周期に合わせて回転させておく。地球の位置からは90度ずらしておく。

森岡浩之さんのSF小説で「星界の紋章」(ハヤカワ文庫JA)という作品があり、それは遠未来の、人類が銀河中に生活領域を拡大した時代の話だけれど、主人公達の属する「アーヴによる人類帝国」では、新たな恒星を発見すると、恒星の周囲にダイソン球(球というよりリングかな)を作り、内側にソーラーパネルを張り巡らして発電し、リングの中に恒星を一周する加速器を設置して、そこで反物質燃料を生産して販売し、利益を得る、という設定が登場する。実際に反物質が作れるかわからないけど、実際にやればエネルギーの生産量は飛躍的に上がる。

作ったロボットは水星表面の発電施設や工場のメンテナンスに転用する。何せ過酷な環境なので、常にメンテナンスが必要。ロボットも施設も老朽化したらリサイクルすれば良い。

更に水星の資源で前回話題に出した金星の光合成ステーションや地球近傍のスペースコロニー、火星のテラフォーミングの資材に転用できる。特に岩盤を掘った土は放射線の遮蔽材に使えるので、スパースコロニーの外壁に充填することで居住環境を安全にできる。

電力をしこたま作ったとしても、それをどうやって輸送するかはちょっと難しい問題。地球の衛星軌道上だとマイクロウェーブで送電することが可能だけれど、惑星間の距離というのは想像以上に遠く、どれだけ収束したビームに変換しても、相当量が拡散されてしまうだろう。もしかするとロスの方が多いことに。

やっぱり未来の技術でなんとかするしかない(笑)。

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