【エッセイ】どたばたインスタライブ
季節はもう秋が半分くらい過ぎようとしているのに、日差しの下を歩いているとまぶたをまともにあけられないくらいに太陽が眩しい。マスマスに到着して冷房のスイッチを入れる。
僕たちスタッフは基本的に10時少し前に出勤をしている。マスマスの入居者さんは24時間出入りできるけど、ドロップイン(1日利用)の方がコワーキングスペースを利用できる時間が10時からなので早めに着いて掃除をしたり受付の準備をする。
この時間から既に仕事を始めている方はそんなに多くはなく、そして常に大体同じメンバーだ。いつも通りに静かで良い集中に包まれている朝の空間は僕にとって程よい緊張感と安心感を与えてくれる。
しかしその日は5~6人のメンバーが何やら少しざわついていた。マスマスの中でチームで活動されている 認定NPO法人横浜子どもホスピスプロジェクト さんだ。病気の子どもたちが家庭や地域の中で豊かな時間を過ごせるようにするための環境づくりやそのための人材育成、啓蒙活動を行っている。
話を聞いてみると、どうやら代表理事の田川さんがインスタライブで対談のゲストとして参加をするそうだ。そしてライブ本番前というのは大抵トラブルだったり不測のものが発覚し何かとワタワタしがちだが、まさにそのような状況だった。
「あ、青いシャツ着ても大丈夫かな?顔に青色反射したりしない?」
「どこでやろう、会議室だと地味だしね...」
「延長コードがない!!」
「スマホスタンド買ったけど、うまくはまらないしちゃんと立たない!」
「音はスピーカー?イヤホンなら無線と有線どっちがいいの!?」
怒涛の質問が僕に降りかかってくる。僕はマスマスで仕事をする傍ら配信の仕事をすることがあるのでこの手の話は得意分野だし好きなのだが、一方で「どんだけ決まってないねん!」というツッコミは心の奥底にしまっておいた。
配信というのは映像も音もノイズなく届き、配信者がトークに集中できる運用ができていればまずはそれでOKなものだ。だから突貫で設営をすると配信会場はどうしてもつぎはぎのような雑多な感じになる。これは配信あるあるだ。
田川さんはコワーキングスペースでお昼ご飯をとったり休憩をしたりでよく使われるソファに座り、高さ調節のために椅子の上にスマホ三脚を乗せて配信をしていた。
zoomにはバーチャル背景があるけれど、インスタにはないのでその代わりに置くのは本物の絵。(これはこどもホスピスさんが長い間準備してきてついにこの秋開設予定のホスピス「うみとそらのおうち」だ。)傍から見るとこの手作り感がなんとも微笑ましい。
たかがインスタライブ、されどインスタライブ。
ゲスト参加するのにチーム総出で分からないことがあっても少しでも良い配信にしようとわちゃわちゃとチャレンジする姿が愛おしいのだ。
騒がしい朝もたまには悪くない。
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