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アツギと炎上と業績動向
と書いてみて『ギターと孤独と蒼い惑星』もいいけど『あのバンド』も『フラッシュバッカー』も好きだなあ、などと思うなどしています。みなさまは結束バンドはどの曲がお好きでしょうか。
さて、先日のEDINETのリニューアルに伴い、法定縦覧期間(四半期報告書3年、有価証券報告書5年)満了したものも含めて結構な期間を遡ってCSVが取得できるようになりました。
で、本来であればEDINET API叩いてXBRLを自動で直接取得してExcelに放り込む努力をすればいいのですけど、Bloomberg/FactSet/日経NEEDS等があると勉強しなくてもデータ取れちゃうし……というのもありますし、会社ではセキュリティポリシー的にPythonの実行環境組めなかったり、ネット上にそういうサービスが転がってたりするので、今までその努力はしてこず、でも流石に自分用にもう少しなんとかできるようにしないとな、ということでまずは財務分析・業績予想モデリングをするにあたりCSVがどういう構造になっていてどのようにExcelにデータを引っ張ってこればよいのか(タクソノミ長いので汎用的に使えるようするにはどうしたらいいか)を眺めていて、テストケースでどこか分析しようかなということで、ちょうど下方修正が出たのを見掛けて、そういえば炎上したアツギって業績どうなったっけ?時価総額小さいし誰も分析しないでしょきっと、ということでアツギでやってみました。
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まず有報やBloomberg等でざっくりした業績見るとコロナで売上が凹んで赤字になり、そこから十分に回復していない感じがわかります。どこまで遡るか迷いますが、まあ2016~2018年まで遡っとけばとりあえず間に合う感じはあるのでその辺から引っ張ってくるとこんな感じです。
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っていうかコロナ前から赤字なんすか……ひょっとして損益分岐売上高が高くて景気変動に弱いんですかとか思ったりもしますし、それは今回の話題ではないので、炎上の影響を見るためにさらに繊維セグメントの内訳でレッグウェアの方の売上がどうなったか見てみます。すると2021年3月期から2022年3月期にかけてインナーウェアの伸びが自然な成長とは思えない感じで目立ちますね。
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これはレナウンインクスの取得に伴うもので、レナウンインクスについては取得日が2020年10月1日で、2021年3月期は2四半期分入ってそうですけど、レナウンインクスは12月決算で、今どき珍しく(←会計システム古そう)3ヶ月遅れで連結しているので、2021年3月期は第4四半期のみ連結、2022年3月期から通期貢献している感じです。
2022年3月期に連結されているレナウンインクスの売上高は66.82億円なので、連結消去がそんなにあるわけではないとすれば、レナウンインクス除きの22年3月期の売上高は150億円前後ということになりますし、実際、単独ベースでは188億円(2020年3月期)→127億円(2021年3月期)→137億円(2022年3月期)と底は打ったものの元に戻ってはいないし、2023年3月期も連結で14%減収へ下方修正されたわけで、レナウンインクス除きを見てしまうとコロナ以外の影響を想定したくもなりますね。
ともあれ、年度見ていても仕方がないので、四半期の推移を見てみることにします。SNS炎上した2020年10-12月期はレナウンインクス連結前で炎上の影響が見えるはずです。そうすると炎上のあった四半期はコロナも小康状態でGoToトラベルやってた時期でもあり、多少経済活動が戻ってきてた時期でもあったかと思いますが、どうも回復しきってない感じがしますね。比較のためにワコールの四半期推移も並べたものも以下掲示します。
従前からのトレンドでワコールよりもアツギが弱めに推移してますが、その辺は商材のミックスとか流行とか色々あると思いますので、そういうもんだろうと思って流しますが(会社での仕事として分析するならそこらへんも深掘りしますけど)、しかしそれにしても2020年10-12月期のギャップは目立ちますね。これを以ってSNS炎上が影響していたと言えるもんでもないような気もしますけど、まあ少なくともこの四半期にはこういう差が出ましたという事実はあったということになります。
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出所:四半期報告書・有価証券報告書から筆者作成
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出所:四半期報告書・有価証券報告書から筆者作成
損益を見るとむしろコロナの影響が大きかったはずの最初の緊急事態宣言のあった2020年4-6月期よりも2021年1-3月期の方が赤字を掘っていて、レナウンインクスの連結に伴う営業費用増などはあるにしても、レナウンインクス自体は上記にリンクしたリリース見る限り黒字ではありますし、なんか他の要因かな?という印象を持ちます。
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で、結論からいえば、2021年3月期4Qの悪化は、ある程度想定されていたという話で、実は炎上したラブタイツキャンペーンを開始した直前に2021年3月期の業績予想を出していて、そこでもう23億円の通期の営業赤字のガイダンスが出ていました。着地は25.9億の営業赤字なのでさらに赤字が拡大していますが、いずれにしても炎上前から2021年3月期の下期に費用を積む計画ではあったわけです。この計画と実績のギャップがひょっとするとSNS炎上の影響なのかもしれませんが、どうなんでしょうね。
あと、2019年3月期の悪化は下方修正リリース見るとわかるように、繁忙期の秋冬に商品売れなくて棚卸資産の評価損出してる感じなのですが、このへんもその翌年・翌々年に営業・マーケティング活動の一環として色々企画して例の炎上のもととなったキャンペーンも出てきた遠因のひとつだろうなという感じがいたします。
炎上による想定外の悪化かどうかみたいなところを考えるにもう少し中身を見てみるとして、ここ数年流行っているROICツリー分析で眺めてみると、2021年3月期4Qは原価の悪化がストレートに効いてる感じがしますね。販管費も3Qの14億強から4Qは19億に増えてますけど、売上比では上がってないしその後も安定しているので、販管費はつまりレナウンインクス連結の影響なんだろうけどちゃんとマネージされている感がありますね。
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ROICツリー出したんでそれなら仮にSNS炎上で不買運動起こって業績悪化したと考えるなら、在庫が積み上がってる数字になるはずだよなとなるわけで、そこで上の表でもいいんですけど、運転資本回転日数をグラフにしてみると、繁忙期である10-12月期末な割に結構在庫水準高い?みたいな印象が出てきます。
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で、他の期を眺める限り、棚卸資産はなんとなく100-150日に収まるようなオペレーションやってるように見えるけども、長い感じもするので(アパレルとか担当したことないんで感触ないんですけど普通の長さってどのくらいですか?)、実際、商品と仕掛と原材料の内訳を同様に回転日数で作ってやるとこんな感じになります。
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そうすると、2021年3月期3Qの商品在庫水準が高いのがわかりますね。2Q末よりも在庫が積み上がってます。これがコロナの影響(3Q末はGoToが終わって2回目の緊急事態宣言の直前)なのか、会社側の需要見通しのミスなのか、不買運動の影響なのか、なんとも言えませんけども、このような高水準ではあったわけではあります。
コロナ前から赤字転落しているし、過去2年ほど借入金もしているので、キャッシュ大丈夫なのかと思ってキャッシュポジションも見てみると、フリーキャッシュフローの2~3年分といった残高なので、少し心配になってくる水準です。ただ、元々、有形固定資産では土地が目立つ会社ですし、投資有価証券も大きいので、退職給付負債差し引いても資産的にはまだ余裕がありそうな感じには見えますね、売れるような資産(←買い手が付く付かないではなく会社としてこれを売ったらお終いだという資産かどうか)なのかはさておき。
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ということでCSV→Excelの試行錯誤のついでにアツギのSNS炎上の影響が経営数値上出てきたように見えるかどうかの考察でした。
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(2023/1/29追記)下記、説明が足らないと思ったので書き加えています。
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