散文詩:秋ピアノ
秋が流すは赤い涙
満開の紅葉が散る中
ライトアップを背景に
野外演奏会が開かれる
防音設備整うワンルーム
とはいえ時は真夜中
情熱的なラカンパネラから
始まり亡き王女のための
パヴァーヌという美しい
旋律が冷たい哀愁を謳い
次第にそのピアノは鎮まる
深夜の2時頃から突然
弾かれたソロピアノを
近隣者達は静かに聴いた
彼が師の訃報を受けた
その夜だったからだ
若き音楽仲間達が
師への弔いとピアニストの
恩愛を鎮魂する為
存分に奏でた晩秋の月下で
深紅の涙が舞っては落ちた
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