短編小説:恩師の老い
担任が老けていた。当たり前だ卒業から20年後の同窓会。皆が楽しい話題しかしない会の終わりに担任が修学旅行の班ごとに後日、先生と順に飲みに行こうと提案してくれた。班は男女3名ずつ。その日の夜、出だしは楽しげだった場の空気も段々変わり、一人ずつ辛いこと苦しかったことを語り出した。親の介護、離婚、子供の反抗期、持病と。先生の狙いはこれだったのだ。当時と大きく変わったのは年老いた担任が僕らに何も教えることなくただただ最後までじっくりと話しを聞いてくれたということ。そして解散の時、僕らはもう一度、今度は大人の修学旅行に出ようと皆で声を合わせた「そうだ!京都に行こう」って。そしてその勢いのまま担任を胴上げ、とまではいかなかったけれど。