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マッサンのブロール構築記 Season 3 ⑩雑食するもの、グロルナク

1.はじめに

益虫(えきちゅう、英: Beneficial insects)とは、何らかの形で人間の生活に役に立つ、昆虫など小動物のことを指していう言葉である。害虫の反対の意味を持つ。

Wikipedia 「益虫」より引用

人に「益」をもたらす「虫」。これを総称して「益虫」と呼ぶ。え?なんか先週も似た話を聞いた?いやいや、先週の話は害を与える虫である「害虫」の話である。冒頭に触れた話とは真逆である。

人と虫の付き合いは長い。特にその付き合い方が一番顕著なのは、農業においてだろう。農業と言って舐めてはいけない。人が文明社会を築くにあたり、その基盤となっているのが農業なのである。人が狩猟から農業にシフトするにあたり、そのノウハウは数千年。その中で、経験則と共に虫の利用法が蓄積されていったのである。

虫に花粉を運んでもらったり、農作物に害をなす虫を食べてもらったり、その使い道は多岐にわたる。特に後者のアンチ害虫としての側面はかなり大きく、農業のみならず、家庭でも大切にされた。幼少期に親に「家の蜘蛛を殺してはいけない」ということを言われた人もいるのではないだろうか。これには様々な理由があるのだが、イエグモが家の中の害虫を撃退してくれるという実益があるためでもある。

今回紹介する生き物も、広い目で見れば「益虫」として分類される生き物である。それではご紹介しよう。

《雑食するもの、グロルナク》

…え?何?「カエルは虫じゃねえだろ!!」って?ごもっともである。しかし、上のWikipedia様からの引用を見てほしい。「昆虫などの小動物」という記載があると思う。カエルは小動物にカテゴライズされるので、ひとまずはこのくくりはクリアできている。

では、実際に益虫としてはどうなのかというと、バリバリの益虫である。カエルが普段暮らすのは水があるところ。そう、水田である。で、奴らが何を主食としているかというと、水田にいる小さな昆虫である。この昆虫の中には、稲の葉をかじってしまう害虫も含まれており、それの駆除に役立っているというわけだ。

ちなみにこのカエル、現地イニストラードでは神様として崇め奉られているようである。つまり人間に対して益をもたらす存在であるに違いない。今日はそんなイニストラードの豊穣神と共にブロールに実りをもたらそう。え?口から何か出てる?し、知らない…

2.こいつで何ができるのか

それではさっそく、我らがグロルナク神の能力を確認していこう。

《雑食するもの、グロルナク》
2UG
伝説のクリーチャー ― - カエル
3 / 3
あなたがコントロールしているカエル1体が攻撃するたび、カード3枚を切削する。
あなたのライブラリーからパーマネント・カード1枚があなたの墓地に置かれるたび、それを蛙声・カウンター1個が置かれた状態で追放する。
あなたは、あなたがオーナーであり追放領域にあり蛙声・カウンターが置かれているカードの中から、望む数の土地をプレイしたり望む数の呪文を唱えたりしてもよい。

4マナ3/3。お前なんか神を名乗る割には貧弱なサイズしてないかあ?あぁん?

…まあ、現実のカエルも小型なものがほとんどである。いかに神として崇められようが所詮カエルはカエル。大切なのはちゃんと実りをもたらしてくれるかどうか、そこである。

まず、このカエルが相手を殴りつけると、自分のライブラリーから3枚カードを切削する。これだけだとただただ自分のライブラリーをやせさせているだけなのだが、そこは豊穣神、ちゃんとこの行為をアドバンテージに変換できる能力を内包している。

このカエルがいると、ライブラリーからパーマネントが墓地に落ちるたび、蛙声カウンターが置かれた状態で追放される。で、なんとこのカエルがいる限り、この追放されたカードを追放領域からプレイすることが可能となるのだ。

つまりこの能力、言い換えれば3ドローを連打しているといってもいい。流石は豊穣神である。早速、この能力を活かすデッキを考えていこうではないか。

3.こいつでどうやって勝つのか

さて、グロルナクの能力をまとめると以下のようになる。

・カエルが殴ると切削
・パーマネントか土地がライブラリーから墓地に落ちると追放。グロルナクがいる限り追放したカードを使うことが出来る

要はグロルナクがいる限り、バカみたいにアドバンテージを稼ぐことが可能となると書いてある。つまり、基本的な方針は「グロルナクを維持しながらライブラリーを切削し、雑にアドバンテージを稼いで圧倒させる」となる。

ただ、この能力、万能に見えていくつも落とし穴がある。

まず1つ、切削したカードの中に非パーマネント呪文が含まれている場合、それは問答無用で追放となる。何が言いたいかというと、強力なカードが切削されたとしても、それがソーサリーやインスタントの場合、再利用不可となるのである。グロルナクの能力を十全に使うためには、デッキ構築の時点で一工夫必要となるだろう。

そしてもう1つ、グロルナクの疑似ドローを使うためには、ライブラリーからカードを墓地に落とす手段、つまり切削手段が必要となる。普段はこの能力をグロルナクが殴ることで誘発できるのだが、相手のクリーチャーに阻害されたりして殴りに行けない場合などは、別途切削する手段が必要となるだろう。

というわけで、これら2つを意識しながら、デッキを構築していくこととしよう。

4.どうやってデッキを組むか

それでは実際に、どういったカードを採用するかを考えていこう。

①ライブラリーからカードを墓地に送る手段

まず考えるのはこれだろう。グロルナク単体でも切削手段はあるとはいえ、別途切削手段を考えておいた方がいざというときの保険となるし、追加のアドバンテージ源となりえる。

まずは分かりやすい切削呪文から見ていこう。

《知識の根》
1G
ソーサリー
カード3枚を切削する。その後、あなたの墓地から、土地・カード1枚かエルフ・カード1枚をあなたの手札に戻す。そうできないなら、カード1枚を引く。(カードを切削するとは、あなたのライブラリーの一番上からカードをあなたの墓地に置くことである。)

例えばこの呪文、普通に扱うと単にカードを3枚切削し、うち土地を1枚戻すカードである。だが、グロルナクがいるとあら不思議、実質3ドローしているに等しいアドバンテージを得られることが出来るのだ。

「あれ?それだと切削したカードが追放されちゃって土地が帰ってこないよ?」と思う方もいらっしゃるかもしれないがご安心を。この呪文、何故か土地を墓地から戻せない場合に限り1ドローがついてくる。つまりこのカード、グロルナク下では2マナ4ドローと同義になるのである。

また、こういうカードも悪くはないだろう。

《這い回る寄生》
2G
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたはカード2枚を切削してもよい。(あなたのライブラリーの一番上からカード2枚をあなたの墓地に置いてもよい。)
あなたのターン中に1枚以上のクリーチャー ・カードがいずこかからあなたの墓地に置かれるたび、緑の1/1の昆虫・クリーチャー・トークン1体を生成する。この能力は、毎ターン1回しか誘発しない。

ゴチャゴチャ書いているが、要は継続して切削ができるエンチャントである。ブロールは同名カードが1枚しか使えない以上、「1枚のカードで継続して何かができる」というカードは極めて有用なのだ。

また、切削して「よい」と書いてあるので、切削したくない場合は切削を蹴ることも出来る。グロルナクが盤面にいない場合は切削をしない選択肢もできるだろう。かなり有用なカードである。

なお、テキストの下の方になんかゴチャゴチャ書いてあるが、グロルナク下では切削されたカードはすべて追放される。一応盤面や手札からクリーチャーが墓地に行っても誘発はするのだが、能動的にそういったことをするようなデッキでもない。誘発したらラッキー、くらいに考えていいだろう。

そして、厳密には切削ではないものの、こういった呪文も必要となってくるに違いない。

《考慮》
U
インスタント
あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を見る。あなたはそのカードをあなたの墓地に置いてもよい。
カード1枚を引く。

《巧みな軍略》
1U
ソーサリー
あなたのライブラリーの一番上からカード3枚を見る。そのうち1枚をあなたの手札に、残りをあなたの墓地に置く。

上で挙げたカード群、要は「ライブラリーから捨てるカードを選ぶことが出来る」カード達である。

いかにパーマネント主体でデッキを組むことになるとはいえ、ある程度はソーサリーやインスタントなどの非パーマネント呪文も必要となる。無差別にライブラリーから切削していくと、いざというときに必要な呪文を使えないという可能性も出てくるのだ。

オマケに再三言っているが、グロルナクは墓地から落とした呪文は問答無用で追放するという徹底ぶりなので、墓地から再利用するフラッシュバックなどが全くといっていいほど機能しない。グロルナクの正の側面だけ利用するためにも、こういう呪文は必須となるだろう。

②大集合!スタンダードで使えるカエルたち!

…とまあ、デッキにこれらの切削手段とパーマネントを入れるだけでデッキにはなるのだが、それだけだとあまりに味気がない。何かグロルナクを使う上での面白要素はないだろうか?

今一度、グロルナクの能力に注目してみよう。よく見ると「カエルが殴るたびにライブラリーを切削」と書かれている。そう、実はライブラリーを削るためにグロルナク自身が攻撃する必要はない。他のカエルが殴ってしまっても能力が誘発するのである。

となると、考えることはひとつである。ズバリ、グロルナク以上に殴りやすいカエルはいるのか?ということである。

…とはいえ、人間やゴブリン、エルフなどのメジャー部族と異なり、カエルはマイナーな部類の部族にカテゴライズされる。そうそう使い勝手のいいものなんかいるはずが…

《フロギーモス》
3GG
クリーチャー ― - カエル・ホラー
4 / 4
トランプル、速攻
フロギーモスがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、そのプレイヤーの墓地にある、その点数を最大とする枚数のカードを対象とする。それらを追放する。フロギーモスの上に、これにより追放されたクリーチャー・カードの枚数に等しい数の+1/+1カウンターを置く。あなたはこれにより追放されたクリーチャーでないカードの枚数に等しい点数のライフを得る。

うわあ、なんかすごいのがいる…

性能を見てみると、5マナ4/4速攻トランプルとかなりよろしい。正直グロルナク以上の性能である。そして更に、相手を殴りつけるたびに、与えた戦闘ダメージに等しい枚数の墓地のカードを追放できる。で、追放したカードの種類に応じてデカくなったり回復したりする。グロルナクは横に立たせておいて、メインで殴って行くのはこちらのフロギーモスでもいいのかもしれない。

…とまあ調べたところ、悲しいかな、碌に使えるカエルはコイツ1体のみである。一応「カルドハイム」に収録されていた「多相」を使うという手もあるが、多相を持つ生き物は基本的に部族間のシナジーの恩恵を受けて初めて輝くものがほとんどのため、単体の突破力はそこまでないのである。

じゃあどうするか。全部カエルにしてしまえばいいのである。

《仮面林の結節点》
4
アーティファクト
あなたがコントロールしているすべてのクリーチャーはすべてのクリーチャー・タイプである。あなたがコントロールしているすべてのクリーチャー・呪文と、あなたがオーナーであり戦場にないすべてのクリーチャー・カードについても同様である。
3, T:多相を持つ青の2/2の多相の戦士・クリーチャー・トークン1体を生成する。(それはすべてのクリーチャー・タイプである。)

「カルドハイム」に収録されたこちらのアーティファクトだが、なんとこのアーティファクト、自軍クリーチャーが全てのクリーチャータイプを持つようになるのである。つまり、全てのクリーチャーがカエルになると考えてもOKである。

オマケにこのアーティファクト、3マナ払ってタップすることで、2/2のカエル(多相)を生成することが出来る。このカエルは無限に供給できるので、最悪鉄砲玉よろしく相手の盤面に突っ込ませてもOKだろう。極めて便利なアーティファクトである。ぜひ採用したい。

…しかし、行きついた結論が「崇拝していた神様と同じ存在になろう」というのはどうなのだろうか。なんかこう、ディープワンというか、結構背徳的な匂いがするのだが、それでいいのだろうか。

5.サンプルデッキ

というわけでコチラ、グロルナクをヒエラルキーの頂点に置いたカエル大収穫祭りデッキである。ぜひ皆様にもグロルナクからもたらされる実りを実感していただきたいので、以下にMTGアリーナで使えるデッキリストを用意させていただいた。ダウンロードして使っていただきたい。

色々考えたが、パーマネント主体のデッキを組むということで、マナをできるだけ確保し、デカブツを早期に叩きつけてすべてを終わらせるというランプデッキを構築した。アドバンテージを稼ぎやすいランプデッキほど脅威的なものはないだろう。相手に理不尽を強いていってやろう。

マナを増やす手段はいくつかあるものの、今回はマナクリーチャーや土地から出せるマナを増やすことが出来るオーラ呪文を積極的に採用している。この理由は単純で、グロルナクがいると、土地を増やすソーサリーやインスタントはライブラリーから墓地に落ちた際に再利用ができないという問題があるためである。

お試しで入れてみた《壮麗な日の出》だが、クリーチャーの展開、追加のドロー、回復による延命と出来ることが非常に多く、相手に無理難題を強いていく今回のデッキには相性が良い。常に自分が得をする選択肢を選び、盤面を絶対的なものにしていこう。

6.終わりに

いかがだっただろうか。今回はグロルナクをエンジンにしたランプデッキを組んでみたが、上のデッキだとグロルナクを守る手段がないため、グロルナクを対処され続けてうまいゲーム運びができないかもしれない。

そういう場合は、グロルナクを外敵から守る手段をきちんと採用してやろう。筆者は単に「こういうデッキで後ろ向きなカードを入れるのは女々にごつ」という脳筋設計に基づきデッキを組んでいるため、そこは個人の好みだろう。

統率者の特徴を活かした構築を取ってやっても、細部まで同じデッキはひとつとして存在しない。ブロールの難しい所であり、非常に面白い所でもある。ぜひ皆様も、思い思いのデッキを作っていただきたい。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。