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おうちでレガシー開催レポート② ~黒船襲来 アンフェアの嵐~

自宅で遊べるリモート式のレガシーイベント「おうちでレガシー」。筆者がこのイベントを主催し始めて、今週で14回目の開催である。前回レポートしたときから比べ、さらに変化を見せてきているので、今回もどういう感じで運営されていったのか、そしてどのようなデッキがあったのか、少し紹介させていただこうと思う。

1.参加者の推移

第8回から第13回までの参加者数をまとめると、以下のようになる。

第8回 6人
第9回 4人(主催の筆者含む)
第10回 4人
第11回 4人
第12回 7人
第13回 4人

安定して4名開催となっているのは相変わらずだが、所々8名に手が届くくらいの人数で開催できている。また、筆者の参加もこの2ヶ月で1回だけであり、皆様に楽しんで頂けているようでありがたい限りである。

ただ、今回取り上げるべきはそれではなく、新規に参入したプレイヤー層の話だろう。実はこのおうちでレガシー、第10回からとんでもない展開を見せているのである。

まず第10回。元モダン神プレイヤーが参戦。

続く第11回。海の向こうからカナダ人プレイヤーが参戦。

そして翌第12回。レガシー東海王が参戦。

このおうちでレガシーだが、元は筆者が身内のコミュニティに向けて「おいレガシーやろうぜ!」と声をかけたのが始まりである。従ってこの現象、なんの前触れなく1週間ごとに黒船が乗り付けてきたようなものである。ペリー来航の報を受けた徳川家慶の気持ちはこんな感じだったのだろう。

というかこのイベント、思い返せば第3回あたりで元ヴィンテージ神も参加している。一体彼らはどこでどうこの情報を知ったのだろうか。彼らを惹き付ける何かがおうちにあるのだろうか。なんにせよありがたい限りである。

2.メタの変遷

で、肝心なメタゲームの変遷はどうなっているのだろうか。確認していこう。

第8回 スニークショー/Doomsday/GWデプス/カーンエコー/黒単リアニ/スゥルタイ死の影
第9回 Doomsday/UB忍者/黒単リアニ/URデルバー(筆者)
第10回 ダイスファクトリー/ブルーマーベリック/スニークショー/バント石鍛冶
第11回 UWオムニテル/スニークショー/ブルーマーベリック/バント石鍛冶
第12回 ワーウルフストンピィ/ティムールミッドレンジ/Doomsday/スニークショー/グリクシスラガバン/ブルーマーベリック/UWオムニテル
第13回 青単ペインター/青単親和/Doomsday/スニークショー
フェアデッキとアンフェアデッキが良い感じに織り交ざったメタゲームが形成され、現在に至る。(前回レポートより引用)

こんなことを書いた矢先に開催された第8回目、まずこの時点で雲行きが怪しい。持ち込まれたデッキの実に5/6がいわゆる「アンフェアデッキ」と呼ばれるコンボデッキの類である。

更に、残る1/6もフェアデッキと言いはしているものの、結局は普通の勝ち筋ではないため、アンフェアデッキと分類できる。つまり、また第0回みたいなメタゲームに戻ってしまったのだ。

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ちなみにこの日の3-0対決はDoomsdayとスニークショー。アンフェアデッキがひしめき合う中これらのデッキが勝ち抜いてきたのは、ひとえにこのデッキが《意志の力》《目くらまし》といったアンフェアに強い妨害手段を持っていたからであろう。

そこからしばらくはフェアデッキとアンフェアデッキが半々ほど。これはこれで非常によろしいのだが、先週開催されたものを見てみると、実にデッキの全てがアンフェアデッキ。定期的に襲来する台風みたいなものである。

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もう少し詳しく見てみると、いわゆる「フェアデッキ」に分類されるものは主に《石鍛冶の神秘家》を使用するものが多い。「モダンホライゾン2」で獲得した《カルドラの完成体》が強力であり、他のフェアデッキに比べ、アンフェアデッキ相手にさっさと試合を終わらせられるという理由があるのだろう。

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また、「アンフェアデッキ」に分類されるデッキはそれこそ大量に存在するのだが、最も多いものが「スニークショー」「オムニテル」など、いわゆる《実物提示教育》を用いるデッキである。Doomsdayに比べ比較的取り回しが容易であるということ、そして他のアンフェアデッキに対する干渉手段が豊富であるという理由だろうか。

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話題の中心となっている《敏捷なこそ泥、ラガバン》だが、相変わらず使うデッキはほぼ見当たらない。2ヶ月開催して、メインでラガバンを使うデッキは3つ(URデルバー/グリクシスラガバン/ティムールミッドレンジ)のみ。後はスニークショーがサイドボードから使うことがあるくらいだ。

大規模大会とごく小規模なイベントでのメタゲームは必ずしも一致しないということを示す大きな物証だろう。個人的にはもうちょっとラガバンを見てみたいが。

3.イベントで使用されたデッキ紹介

せっかくなので、ここではおうちでレガシーで使われたデッキの中でも「これは面白い!」と思われるデッキを紹介していこうと思う。

3-1.ブルーマーベリック

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突然だが皆さま、「マーベリック」というデッキをご存じだろうか?緑を基調としたミッドレンジデッキで、様々なバリエーションがあるのだが、共通していることは、優秀なクリーチャーサーチ呪文《緑の太陽の頂点》をフル採用しているという点である。

これを活用し、状況に応じて最適なクリーチャーを持ってくるのがマーベリックの基本戦術である。そのため、デッキには状況に応じて持ってくるクリーチャーが1枚ずつ入れられており、それらを活用することから「一匹狼(Marverik)」と名付けられた…という説が有力である。

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このデッキも様々な緑のクリーチャーが1枚ずつ投入されている。墓地対策としての《漁る軟泥》《忍耐》や、《濁浪の執政》を止められる《スクリブのレインジャー》、強力なフィニッシャー手段としての《最後のトロール、スラーン》等々、その選択肢は多岐にわたる。これらを状況に応じて使い分け、盤面を傾けて勝つ。というのが基本的なマーベリックの戦術だ。

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基本的な骨子はこれだけなので、色々な要素を足していき、どんな状況でも戦えるようにするのがマーベリック流。先ほど様々なバリエーションがあるといった理由がまさにこれである。上のマーベリックは《石鍛冶の神秘家》パッケージを採用することで、持ち味のビートダウン性能をさらに向上させている。

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更に今回紹介しているマーベリックは青を足しており、メインから《渦まく知識》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を運用できるようにしている。しかし、元々が緑と白の主張が激しいため、《意志の力》などの打ち消しはメインから採用されておらず、アンフェアデッキ相手には少し立ち回り辛いようにも見える。

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その代わりにフル投入されているのがこの《イーオスのレインジャー長》。こいつを生贄に捧げることで《沈黙》と同様の能力が得られるため、コンボのきな臭い動きに対してけん制することが出来るのだ。

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更に、レインジャー長は場に出た際に1マナのクリーチャーをサーチできる。1マナというので限定はされるものの、探せば強力なクリーチャーがいるもので、今回のデッキでは後半になると膠着した盤面を一気に終わらせられる《呪詛呑み》や、自分のクリーチャーを守るための《森を護る者》が該当する。

つまりこのレインジャー長、相手へのけん制と5枚目以降の《緑の太陽の頂点》として機能してくれるのだ。新たなサーチ手段を獲得したこのデッキは、まさに次世代マーベリックと言ってもいいだろう。

3-2.ティムールミッドレンジ

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今のレガシーの王道デッキは何だろうか?という質問をされた場合、答えは一つであろう。そう、「URラガバン」である。《敏捷なこそ泥、ラガバン》、《ドラゴン怒りの媒介者》といった軽量クロックを《意志の力》《目くらまし》といった打ち消しで守り、《不毛の大地》でマナを縛り、相手の身動きが取れない間に勝つ。いわゆるクロックパーミッションだが、とにかく打点が早く、並のデッキでは太刀打ちすることが難しい。

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また、お互いに息切れしたゲーム後半に出てくる《濁浪の執政》も性能が吹っ飛んでおり、2マナ8/8飛行クロックとかいう訳の分からないマナ効率でゲームを終わらせに来る。まさに序盤、中盤、終盤、全くスキのないデッキであり、現代レガシーでは、まずこのデッキの速度についていくことが出来るかどうかが環境を生き残るカギとなる。

何故こんな話をしたかというと、実はここで紹介しているデッキ、徹底的にURラガバンに優位を取ることを意識した構成をしているのである。まさに「Ragavan Killer」と言ってもいいこのデッキ、何がどうラガバンデッキに対して強いのか、順に見ていくとしよう。

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まず、マナを余分に供給するために《貴族の教主》を採用。《稲妻》に弱いという側面はあるものの、相手の《不毛の大地》や《目くらまし》に対して抜群の強さを発揮する。

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また、相手のクリーチャーへの干渉手段としては、《稲妻》のほかに、《採骨の巨人》も採用されている。基本的にURラガバンのクリーチャーはタフネスが2以下で構成されているため、《踏みつけ》で事足りる場合が多い。更に、本体の3マナ4/3というサイズもバカにできず、上の《貴族の教主》と組み合わされば相手をドカドカ殴って行くことが出来る。

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上記の除去で対応できない《濁浪の執政》に対しては《厚かましい借り手》で対応可能だ。たった2マナで相手の土地以外のパーマネントをバウンスでき、その後3点の飛行クロックで相手に圧力をかけていくことが出来る。「エルドレインの王権」というセットのカードパワーの高さが垣間見える1枚である。

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極めつけはしれっと1枚だけ搭載された《仕組まれた爆薬》。要は相手の低マナ域のカードを残さず消し飛ばす爆弾なのだが、基本的に1マナのクリーチャーで構成されるURラガバンに対しては致命傷となりえる。また、相手が《ウルザの物語》を併用していた場合であっても、出てきたトークンを後腐れなくきれいに消し飛ばすことも可能だ。

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言わずと知れたURラガバンキラーの《忍耐》も当然のように4枚搭載されている。3マナ3/4到達というサイズは《稲妻》も耐え抜き、昂揚を達成した《ドラゴンの怒りの媒介者》も受け止めることが可能となる。また、場に出たときに相手の墓地をきれいさっぱりライブラリーに突っ込むため、後続の《濁浪の執政》を出しづらくしたり、《ドラゴンの怒りの媒介者》の昂揚をチャラにすることも出来る。

…なおこのデッキ、よく見ると自分も《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《濁浪の執政》を使っており、基本的な骨子はURラガバンに近いものがある。敵対視している相手と同じルーツを持つ。いわゆる一種の仮面ライダー的な悲しみを背負ったデッキなのかもしれない。

3-3.ワーウルフストンピィ

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1ターン目、《古えの墳墓》から《虚空の杯》X=1。レガシーをプレイしたことがある人ならば一度は経験したことがある動きかもしれない。この「1ターン目に相手の行動を阻害し、相手が鈍っている間に盤面のマウントを取る」ということに特化したデッキ。それがこの「赤単プリズン」と呼ばれるデッキである。

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まず、2マナ出る土地や《猿人の指導霊》《金属モックス》を駆使して1ターン目にマナをひねり出し、いきなり《虚空の杯》や《三なる宝球》、《血染めの月》を設置して相手の盤面をロックする。デュアルランドや1マナの呪文が多数使われるレガシーでは、この手のカードがクリティカルに刺さってしまうことが多い。

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その後、相手がもがいている間にマウントを取って行くのだが、この枠によく用いられるカードは《ゴブリンの熟練扇動者》のようにクロックが即肥大するクリーチャーや、《反逆の先導者、チャンドラ》のように安定して高いクロックを維持できるプレインズウォーカーが該当する。

だが、このデッキは違う。このデッキの主役はゴブリンでもチャンドラでもない。狼男である。

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狼男と言えば変身させることで強力になるクリーチャーが多いのだが、肝心の変身条件が「誰かが呪文を唱えたかった場合、その次のターンに変身する」「変身後、2度呪文を唱えると表面に戻る」というものが多く、基本的に性能の低い表面での運用となることが多い。

しかし、今回のデッキでは事情が異なる。相手の行動を徹底的に阻害しているため、比較的容易に出した次のターンには変身することが可能なのだ。

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今回採用されている狼男は直近のセット「イニストラード:真夜中の狩り」の狼男である。1枚目は《無謀な嵐探し》。好きなクリーチャーに速攻を付与することが可能なので、後続で出てくる《ゴブリンの熟練扇動者》に速攻をつけて殴りに行くことも可能だ。本人も速攻を付与して3/3で殴りに行くことが出来る。

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変身した後は、速攻に加えてトランプルも付与できる。盤面の膠着を一気に打破できる、魅力的な狼男と言えるだろう。

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そしてもう一枚採用されているのがこの《牙刃の盗賊》。表面はマナを払うとパワー強化、および先制攻撃が付与できる人間である。

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だが、コイツの真価は変身した後の能力にある。変身後は5マナ払うことで、全てのクリーチャーのパワーを2上げることが出来るのだ。この能力を使えば、《ゴブリンの熟練扇動者》から出てきた大量の1/1トークンで一気に勝負をかけることが出来る。そうでなくても、4マナ4/5というサイズはバカにできない。

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ちなみにこのデッキ、フレーバー的にもきれいであり、「《血染めの月》が昇る(=場に出る)ことで狼男が変身する」という、まさに狼男にピッタリのゲーム展開をすることが可能なのだ。

更に来月発売の「イニストラード:真紅の契り」でも強力な狼男が収録されるかもしれない。今1番ホットなレガシーデッキではないだろうか?

4.終わりに

というわけで、2ヶ月分のイベントの概要をまとめたが、いかがだっただろうか。

おうちでレガシーは毎週土曜日22時から定期的に開催している。つまり今日も開催予定である。コチラのMTG Meleeで参加受付をしているので、興味があれば参加して頂きたい。


また、当日の模様は筆者のTwitchでフィーチャーマッチの配信も行っている。コチラも見ていただけられれば幸いだ。

是非、レガシーを愛してやまない皆さまのご参加をお待ちしている。

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